いまじゃまず見ない、初代サバンナRX-7インテリア装備のあれやこれ【初代サバンナRX-7・SA22C型・1978(昭和53)年・後編の後編】

室内各部を見ていくぞ!
初代サバンナRX-7解説、予定外の第3弾。
前回の続きとして、今回も初代サバンナRX-7の内装を見ていく。
TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:中野幸次/モーターファン・アーカイブ

ぐるぐるハンドル、ガラスのハッチ、機械式ラジオにシガライター・・・

初代サバンナRX-7解説、内装の話が思いのほか長くなりそうだったので、今回は前回の延長戦としてまた内装の話をお届けする。

この種のメディアでは前代未聞、いきなりドア内張りの話から入る。

★マーク付きは、当時の資料などでの名称です。

室内各部を見ていくぞ!

初代サバンナRX-7のインテリアの画像はこちら

ドア内張り

ドア内張り。

1.★インナー・ハンドル

インナ・ハンドル。

いまでも残存する、クラウンコンフォートなどのタクシーで見かける形をしている。形がヘンに凝っているより、このようなもののほうが使いやすい。

2.★レギュレーター・ハンドル

レギュレーター・ハンドル。

黒電話にあるれんこんの輪切りみたいなダイヤルでどう番号発信するのか、このハンドルをどう操作してガラス上げ下げするのか、いまの人たちはわからないのだそうな。
同じものを大事に使う人か、よほどのめずらしもの好きが家族にいないかぎり、ダイヤル黒電話もレギュレーターハンドルもめったに見ないからね。いまは携帯電話、スマートホン、パワーウインドウがあたり前。無理もねえや。

これはガラスの昇降ハンドル。着座位置から向こう回しでガラス下降、手前回しで上昇する。

夏場、車庫にあるクルマの中が熱気むんむんにならないよう、5mm10mmちょっと窓を開けておきたいとき、ちょっとこのハンドルを操作するだけでいいのが便利・・・というよりも、それがあたり前だった。これが便利だったのだと気づいたのは、それだけのためにもいちいちキーONにしなければならないパワーウインドウ時代になってからだ。

3.★アーム・レスト

アーム・レスト。

しっかりした造りになっていたことに感心、感心。前方のスラントした部分はドアを閉めるときにつかむグリップだが、ドアの前方にあるのでドア回転中心(=ヒンジ)に近く、閉じるときの操作力は重い。力点は支点から遠いほうが軽く操作できるという理科で習った法則からすると、グリップはヒンジから遠いほうが望ましい。このへんを豪快に無視し、グリップを前方に配してドア閉じに重い操作力を要求するクルマがいまだにある。

4.★ロック・ノブ

ロック・ノブ。

下に押して施錠、上に上げて解錠。一括操作できる電気ロックもないから、助手席側の施錠解錠は運転席から左腕を伸ばさなければならない。懐かしいという人、多いんじゃないかな。
いまならインナハンドル付近に併設するだろうが、そうなると後席からの操作がしづらくなるので、後ろからの乗降を考えるとこの位置が正解。ただ、助手席が空席で後席に人が乗るというシチュエーションも皆無に近いだろう。それにこの位置だと外からの施錠状態がまるわかりになる問題がある。だからこそいまは盗難対策でドアハンドルに併設されているわけだ。

ところでいまは見なくなった、写真左の「OK」マークのシールがいいねえ。

空調

ヒータ・ベンチレータとセンター吹出口(写真はクーラー装着車)。

★ヒーター・ベンチレーター

撮影車にはオプションのエアコンがついている。本来はヒーターのみ。

一見、選択モードは現代のものに近いが、外気導入・内気循環の選択とクーラーON・OFFは独立で選べず、上の★モード・レバーでの吹出口選択がそのまま内外気切り替え、クーラーON・OFFを決めてしまう。MAX、VENT(換気)、BI-LEVEL(頭寒足熱)でクーラー作動、HEAT、DEFで温風・・・燃費を気にして、クーラーなしでの送風換気はできない道理だ。

温度調整は下のファン風量は3段階。調整は右のダイヤルノブ(★ファン・スイッチ)で行なう。

コントロールパネル。

ここからは、それぞれのモードの使用法を取扱説明書イラストでお見せしよう。

通常の暖房。
頭寒足熱。
デフロスター(くもり止め)。
強制換気。
冷房のみ(室内循環)。
外気導入による冷房。
除湿暖房。
使用しないとき。

★サイドデフロスター

サイドデフロスター。フロントピラーに設置される。

フロントピラーに設置されている。通常は計器盤右端、ドア側ならトリム上辺に設置されるのだが、フロントピラーはめずらしい。珍しいのだが、この位置へのレイアウトに例がないわけではなく、いまでも現行のスカイラインなどに例がある。

★リヤー・デフォガ

書き間違いじゃなく、取扱説明書には「リヤー・デフォガ」とある。いまなら「リヤウインドウデフォッガー」と書くところだ。呼び名は変わっていても機能はいまと同じで、スイッチを入れるとガラスの電熱線の熱でガラス面のくもりを除去するしかけ。大衆車では中級以上のクルマについていたが、サバンナRX-7は全機種標準装備だ。

リヤー・デフォガ。
リヤー・デフォガのスイッチ(中央)。その左は本来ダミースペースだが、同じスイッチがついている。たぶんオーナーがリヤー・デフォガスイッチをもうひとつ入手し、後付けした何かの電装品用のスイッチとして充てているのだろう。

オーディオ

★AM/FMマルチレシーバー(とスピーカー)

この時代にはごく一般的な形の機械式ラジオが備わっている。
写真の「AM/FMマルチレシーバー」は本来、カセットステレオや4スピーカーとのセットで最上級リミテッドに標準で、その他はAMラジオと1スピーカーのみ。撮影車のGTはオプションでつけたものと思われる。
左つまみで選局、外側リングつまみで左右バランス、右つまみは押してON・OFF、まわして音量調整、外側リングつまみで音質を調整する。周波数表示窓右の「ST(ステレオ)」ボタンは、FMステレオ放送受信時、雑音が多いときに押すとモノラル受信となり、雑音が軽減される。

AM/FMマルチレシーバー。

メモリー選局は、機械的に覚え込ませた5つボタンで。そのセット方法は、前回のハイエース記事のときに「局セットは、セットしたいボタンを引き出しておき、左ノブで選局したらボタンを押して完了・・・いまのひとには写真だけじゃあ、わっかんねえだろうなあ。」と述べたが、今回はこのサバンナRX-7の説明書イラストでお見せしよう。メーカーは異なるが、どこのものでもおんなじ。
こういうことなのです。

むかしのクルマの機械式ラジオの5プリセットボタンへのメモリー操作方法。

スピーカーは助手席正面にある。

スピーカーは助手席正面に。

★ウィンド・シールド・アンテナ

合わせガラス同様、マツダはガラスアンテナの搭載も早かったと記憶する。初代サバンナRX-7もガラスアンテナで、取扱説明書では「ウィンド・シールド・アンテナ」と記載されている。全機種に与えられる。

ラジオ受信にしろ、いまのデジタルテレビのアンテナにしろ、たったこれだけの線でよくもまあアンテナの役を果たすもんだと感心するが、運転視界のじゃまになることを懸念する運輸省(いまの国土交通省)の認可を得るのに、当時はずいぶん苦労したらしい。

ウインド・シールド・アンテナ(運転席側から)。
ウインド・シールド・アンテナ(助手席側から)。

トランク/収容スペース

・トランクルーム

ナンバープレート上から開くわ、フロア面が高いわ、いまのクルマのトランクを見慣れた目には、積載性がよろしくないように見えるだろうが、私はそうは思わない。ハッチを開けた瞬間、荷物がこちらに落ちることがない、床が高いぶん、荷の載せ下ろしがしやすいといったメリットがあると思っているからだ。
なお、荷室容量は、4名乗車状態で130L、後席背もたれを倒すと390Lに拡大される。
上級2機種にはストラップも装備。

4名乗車時。
2名乗車時。

★グラス・ハッチ・バック

見てのとおり、ガラスハッチ。メーカーでは「グラス・ハッチ・バック」と呼んでいる。
ガラスだけが開閉するクルマもすっかり見かけなくなったが、むかしのミニカやレックス、バネットラルゴにもあったっけ。

グラス・ハッチ・バック。

このサバンナRX-7のグラスハッチは3分割になっており、中央だけが開閉するが、ほんとうはサイド分も一体にした1枚ガラス案もあった。技術的には可能なのだが、その際にはリヤピラーをなくさねばならず、強度や雨に対するシーリングの問題もあり、分割式に落ち着いたという話がある。

グラス・ハッチ・バック(オープン)。
グラス・ハッチ・バック(クローズ)。

★グラス・ハッチ・バック・オープナー

運転席右ひざあたりにあるスイッチを押すとガラスハッチが開く。キー有無と無関係に作動する電磁式だ。押すと聞こえる「ヒューン・・・ダンッ!」の作動音がなかなか未来的でかっこよかった。

グラス・ハッチ・バック・オープナー

★カーゴ・ルーム・ランプ

スイッチをONにしておくと、ハッチの開閉に応じて点消灯する。

カーゴ・ルーム・ランプ。ランプ上に見えるのがスイッチ。

★グローブボックス

キー付のグローブボックスは、つまみを左に回して開くとその向こうにボックスがある。大型のケミカル缶を入れてもまだ余裕があるくらいの容量を持っている。
開いたふたは水平に保持され、天面はくぼみが設けられていて、飲料缶が置けるようになっているが、どうみても停車時に使うべきだし、ましてや穴径は当時主流だった250cc缶用となっているので、いま売られている350ccや500ccの缶やペットボトルを置くのには向いていない。

グローブボックス。
グローブボックス(空状態)。
グローブボックス(クローズ)。

・小銭入れ

MTシフトレバー後ろにある。これがATとなるとシフトまわりのパーツ造形が変わり、小銭入れがなくなってしまうので、小銭入れはMT車だけの特権だ。

小銭入れ。

★アッシュ・トレイ

この灰皿がおもしろい。コンソールボックスの前方にある。
ふたはスライド式で、手前にスライドさせてオープン。
おもしろいのはここから先で、この灰皿、実はその後1989年の初代ロードスター、1995年のボンゴ・フレンディにも使われる。フレンディは知らず、ロードスター用は灰皿照明用の窓があるので部品(品番)としては別ものだが、形状は同じなのだそうな。なかなか長寿の灰皿だったのだ。

なお、シガライターは、さきのリヤー・デフォガスイッチの右にある。

アッシュ・トレイ(使用時)。
アッシュ・トレイ(オープン)。
アッシュ・トレイ(クローズ)。
1989年ユーノスロードスターの灰皿。ね、同じでしょ。
こちらはボンゴフレンディ(1995年)の灰皿。こちらも同じ形状だ
シガライター。

★センタ・コンソール

リッドがやや低いが、ふたを閉じているときはアームレストにもなるコンソールボックスが上位3機種に、最廉価カスタムにはその小型版が装備される。
容量は、車室幅やシートサイズからしてこんなものだろうといったもの。サングラスやたばこの箱、当時ならカセットテープを入れるのに重宝したことだろう。

センタ・コンソール(オープン)。
センタ・コンソール(クローズ)。

というわけで、予定を変更して3回に渡ってお送りした初代サバンナRX-7解説ですが、ここで気が変わりました。
次回は初代サバンナRX-7に用意された販社オプション品をご紹介するぞ。

テナワケデ、また次回。

【撮影車スペック】

マツダサバンナRX-7 GT(SA22C型・1978(昭和53)年型・5段MT・オーロラホワイト・ブラック内装)

●全長×全幅×全高:4285×1675×1260mm ●ホイールベース:2420mm ●トレッド前/後:1420/1400mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:1005kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.8m ●タイヤサイズ:185/70SR13 ●エンジン:12A型・水冷直列2ローター) ●総排気量:573cc×2 ●圧縮比:9.4 ●最高出力:130ps/7000rpm ●最大トルク:16.5kgm/4000rpm ●燃料供給装置:2ステージ4バレル ●燃料タンク容量:55L(レギュラー) ●サスペンション 前/後:ストラット式コイルスプリング/4リンク+ワットリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/フィン付きドラム式リーディングトレーリング ●車両本体価格:144万円(当時・東京価格)

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