EVだから楽しめるサウンドのカスタマイズ
Honda 0で適用する技術を搭載したHonda 0 Prototypeの試乗会場には、SUVタイプとセダンタイプの試乗車の横に「Digital UX Concept」とフロントドアに書かれたHonda eが置いてあった。聞けば、「別のクルマに変わるトライ」が体験できる車両だという。運転席に乗り込み、何がどう変わるのか体験した。
運転席の目の前にあるディスプレイには、シンプルなデジタル表示のHonda eのメーターが表示されている。様子が違うのはその左側だ。9分割されたグリッドにはS2000やシビック・タイプRといった新旧ホンダ車のグラフィックが表示されている。「EVにデジタルの力を付与することで、ホンダらしい遊び心を出せないかと研究しているところです」と、助手席の技術者は説明した。
「S2000のボタンをタッチしてみてください」の指示を受けて画面をタッチしてみると、Honda eのメーター表示は、見覚えのあるS2000のメーター表示に切り替わった。と同時に、車内に直列4気筒自然吸気エンジンが発信源となるアイドル音が響き、ステアリングとシートから振動が伝わってくる。アイドル音はスピーカーから、振動は振動スピーカーで発したものだ。
アクセルペダルを踏み込んでいくと、踏み込み量に連動して回転計のオレンジのバーが弧を描いて右側に伸び、同時にリアルなサウンドが車内に響き渡る。リアルと感じるのはそのはずで、実車のエンジン音をサンプリングしたものだという。
指示に従い、次に「DOHC VTEC」と書かれたボタンを押してみる。「ゆっくりアクセルを踏んでみてください」の言葉に従って操作してみると、6000rpmを超えたあたりでバルブタイミングが切り替わり、音が変化するのがわかる。車内で音を楽しむだけだったが、実際は走行中のアクセルペダルの動きと連動してエンジンサウンドが変わり、変速時のショックはモーターの制御で再現するという。
9分割されたグリッドの一角にはHonda Jetのボタンがあり、押してみるとターボファンエンジンに特有の甲高いサウンドに切り替わる。メーターには操縦桿越しの機内の風景が映し出された。ホンダには二輪もありマリン(船)もある。技術的にはさまざまな新旧ホンダ製品のエンジンサウンドを再現することが可能だ。
グリッドにはCR-XとHonda F1のグラフィックも表示されているが、この2台には鍵マークが重なっている。押しても反応しない。課金するとOTAによって鍵マークが外れ、機能がアクティブになる想定だ。値段にもよるが、筆者なら真っ先に課金してしまいそう。Honda 0シリーズに適用するかどうかは決まっていないというが、これもまた、ホンダが考えるSDV(ソフトウェアディファインドビークル)の提供価値のひとつである。