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■アコードクロスツアーを米国で販売することを発表
2009(平成21)年11月3日、ホンダの米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターが新型「アコード クロスツアー」を米国で11月20日より販売することを発表した。人気のSUV市場に投入したアメ車らしい大型のクロスオーバーSUVだったが、高額でスタイリングが不評だったこともあり苦しい販売を強いられた。
アコードのフルサイズクロスオーバー誕生
アコードクロスツアーは、アコードをベースにしたプレミアム4ドアセダンの快適性と、SUVの高いユーティリティーを融合させたクロスオーバーSUVで、ハッチバックとワゴンを融合したような個性的なスタイリングが特徴だった。
機能的には、高性能エンジンを搭載したアコードセダンの余裕の走りと快適性を維持し、広い荷室スペースや使いやすい大開口のリアテールゲートなどを装備した高いユーティリティーを両立した。
パワートレインは、最高出力275ps/最大トルク35.1kgmを発揮する3.5L V6 SOHC i-VTECと5速ATの組み合わせ、駆動方式はFFとフルタイム4WDを用意。i-VTECは、吸排気弁の開度を変更する手法だが、本エンジンではこれを利用して可変シリンダーシステム(VCM)を採用。VCMは、運転条件に応じて6気筒のうち、3気筒、および2気筒で燃焼を止めて使用気筒数を6気筒/4気筒/3気筒と変化させるシステムである。これにより、力強い走りと優れた燃費性能を両立させているのだ。
車両価格は、FFを29670ドル、4WDを36220ドルに設定。当時の為替レート82円/ドルで計算すると、FFが243万円、4WDが297万円である。安価なように思えるが、当時の米国では3万ドルを超えるようなクルマは高級車である。
期待したほど販売が伸びずに2016年に生産終了
アコードクロスツアーの販売は、当初は3万台/年程度でスタートしたが、その後は右肩下がりで推移し、米国のアコードシリーズ全体の10%程度の販売台数だった。その後、仕向地は中国やカナダ、ロシアなどへ拡大し、2013年には大幅改良を実施。これを機にアコードの名が外されて単独車名「クロスツアー」となった。
しかし、2014年には販売台数が2万台/年を切るようになり、その後も販売低下に歯止めがかからず2016年に生産を終了した。不振の理由は、セダンとSUVを融合したスタイリングが多くのユーザーに不自然だという印象を与えたこと、さらに価格が高かったことだった。しかも、価格はアコードセダンよりも約1万ドル高かったのだ。
ちなみに、クロスツアーは日本には投入されなかった。日本でも人気のクロスオーバーSUVだが、とにかく大きい。何よりも、ボディサイズは全長/全幅/全高が4999mm/1897mm/1669mmで、新型クラウンクロスオーバーの4930mm/1840mm/1540mmより大きい。
さすがに、これでは狭い日本ではクロスオーバーSUVの魅力が生かせず、米国以上に人気を獲得するのは困難であることが予想される。
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最近の日本市場でのホンダは、軽自動車とミニバンが売れ筋となり、2022年にレジェンドが生産を終えた。ホンダには、現在日本にはフラッグシップと言える高級モデルが存在しない。アコードクロスツアーのような大型高級SUVの日本市場への投入は現実的ではないが、たとえ販売台数は少なくてもホンダの技術力をアピールするフラッグシップは必要ではないだろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。