プレサージュベースの上級ミニバン、日産「バサラ」が256.8万円~登場【今日は何の日?11月4日】

日産・バサラ
日産・バサラ
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、日産自動車の高級ミニバン「バサラ」が誕生した日だ。バサラは、乗用車ベースの低床ミニバンとして大ヒットしたホンダの「オデッセイ」に対抗して登場した「プレサージュ」をベースにした上級バージョンのミニバンである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産バサラのすべて、新型プレサージュのすべて

■プレサージュベースの高級ミニバン

1999(平成11)年11月4日、日産自動車から高級ミニバン「バサラ」がデビューした。大ヒット中のホンダ「オデッセイ」の対抗馬として前年にデビューした「プレサージュ」をベースに、それよりも上級に位置する高級バージョンとして登場したのがバサラである。

日産・バサラ
日産・バサラ

オデッセイの対抗馬として登場したプレサージュ

1994年にデビューしたホンダの初代オデッセイは、それまでの商用車ベースのミニバンとは異なり、乗用車ベースで車高は低いが、低床で3列シートの広い室内空間を実現。約5年間で国内販売42万台を達成する大ヒットモデルとなり、ミニバンブームをけん引した。

ホンダ初代「オデッセイ」
1994年に誕生したホンダの初代「オデッセイ」。乗用車ライクな新世代ミニバンとして大ヒット

日産も、オデッセイの人気に刺激を受けて4年後の1998年に初代プレサージュを投入。オデッセイより全高が75mmほど高いやや大きめのボディに、パワートレインは3.0L V6 DOHC、2.4L直4 DOHC、2.5L直4 DOHCターボの3機種と4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが用意された。

日産初代「プレサージュ」
1998年に誕生した日産初代「プレサージュ」

プレサージュは、エコノミー派からパワフル派までが満足できるエンジンラインナップで一定の評価は受けたものの、オデッセイの牙城を崩すには至らなかった。低床で全高を抑えた乗用車感覚のオデッセイに対して、全高がやや高いプレサージュに多くの人が新鮮味を感じなかったのだ。

プレサージュをベースにした高級ミニバンのバサラ

日産・バサラ
日産・バサラ

バサラは、プレサージュをベースにしたプレサージュの上級バージョンという位置付けで登場し、“ミニバン・クルーザー”のキャッチコピーで、上質な長距離ドライブが楽しめる高級なミニバンを目指した。

日産・バサラXのインテリア
日産・バサラXのインテリア
日産・バサラVのインテリア
日産・バサラVのインテリア
日産「バサラ」のコクピット
日産「バサラ」のコクピット
日産「バサラ」のシートアレンジ
日産「バサラ」のシートアレンジ

基本的なシャシーはプレサージュと共用し、ボディタイプはプレサージュ同様オールヒンジドア採用の5ドアでメッキパーツを多用。ヘッドライトを一体化した縦基調のフロントグリルや、バンパー一体型のフロントスポイラーなどでプレサージュとの差別化が図られた。またインテリアについてもプレサージュベースだが、シート地や色で独自性をアピールした。

日産「バサロ」のリアビュー
日産「バサロ」のリアビュー

パワートレインは、最高出力220psの3.0L V6 DOHCと150psの2.4L直4 DOHC、150psの2.0L直4 DOHCインタークーラー付ターボディーゼルの3種エンジンと、4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFとフルタイム4WDが用意された。

車両価格は、標準グレードで256.8万円(2.4L)/271.8万円(3.0L)。当時の大卒初任給は19.7万円程度(2024年現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約300万円/317万円に相当する。

インパクトを残せず短命で終わったバサラ

健闘したプレサージュもバサラも、オデッセイの牙城を崩すことはできなかった。オデッセイのアピールポイントのひとつ、低床ミニバンに対して、プレサージュとバサラはそれほど低床でなく、車高が高い割には室内空間が十分でないということが最大の問題だった。

日産2代目「プレサージュ」
2003年に登場した上級ミニバン、日産2代目「プレサージュ」

しかもバサラは主要コンポーネントが同じで、フロントグリルやリアコンビを変えて全体的には大きな差がないという印象は拭えなかった。その結果、バサラの販売は伸び悩み、プレサージュが2代目へのモデルチェンジ時に吸収される形で、1代わずか約3年半で消え去ってしまった。

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オデッセイの対抗馬としてプレサージュの上級バージョンとして登場したバサラだったが、多くのコンポーネントをプレサージュと共用したために、ユーザーにとっては新鮮味がなく、安直な印象を与えた。コストをかけずに目先の印象を変えるような兄弟車やバッジエンジニアリングの、ある意味で限界を表している。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…