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■510型ブルーバードにクーペが登場
1968(昭和43)年11月15日、前年にデビューした日産自動車の3代目(510型)「ブルーバード」にクーペが追加(発売は11月20日)された。ライバルのトヨタ「コロナ」が2ドアハードトップを設定し人気を獲得したことから、ブルーバードもスポーティな2ドアクーペを投入したのだ。
小型乗用車市場を開拓した初代ブルーバード(310型)
1950年代後半、日本では純国産車が続々と登場し、モータリゼーションに火が付いた。1957年にトヨタの初代コロナ「トヨペットコロナ」がデビューし、それに対抗する形で日産からは1959年に初代ブルーバード「ダットサン・ブルーバード」が誕生した。
初代ブルーバードは、親しみのある丸みを帯びたフォルムの4ドアセダンで、1ヶ月で約8000台を受注する大ヒットを記録。ライバルのコロナとは、市場を二分する熾烈な販売合戦、いわゆる“BC戦争”が繰り広げられたが、初代の対決はブルーバードが圧倒。しかし、1963年にデビューした2代目では、今度はコロナが巻き返してトップの座を奪取した。
クーペの追加でスポーティなブルーバードをアピールした3代目(510型)
首位奪回のために1967年に登場したのが3代目(510型)ブルーバードである。
510型ブルーバードは、プラットフォームやエンジンなどを一新。高性能時代にふさわしいスーパーソニックラインと呼ばれるシャープなフォルムに、新開発の1.3L&1.6L直4 SOHCエンジンを搭載し、当時としては先進の4輪独立サスペンションなどを採用した革新モデルだった。
特に最高出力100psを発揮する高性能1.6L直4 SOHCエンジンを搭載したスポーツグレード「ブルーバード1600SSS(スーパースポーツセダン/スリーエス)」は、その俊敏な走りによって多くのファンを魅了した。
そして翌1968年のこの日、2ドア/4ドアセダンに加えてスポーティな2ドアクーペを追加。この背景には、ライバルのトヨタ「コロナ」が1965年に日本初となる国産初のハードトップを設定して人気を獲得したことがある。
ブルーバードクーペは、2ドアセダンよりもリアウインドウをやや傾斜させてスポーティさを強調。クーペの追加効果もあり、510型ブルーバードの人気は爆発。2代目でコロナに奪われたトップの座の奪回に成功したのだ。
車両価格は、ブルーバードクーペが69.9万円(2ドアデラックス 60.0万円)、1600SSSクーペは76万円(1600SSS 75.5万円)。当時の大卒初任給は3万円程度(現在は約23万)なので、単純計算では現在の価値でブルーバードクーペが約536万円、人気の1600SSSクーペが約583万円に相当する。
さらに、卓越した走りを誇ったブルーバード1600SSSは、1970年のサファリラリーで総合優勝するなどレースで大活躍したことも、510型ブルーバードの大ヒットを後押しした。
国産車初の流れるウインカーを搭載した510型ブルーバードクーペ
“流れるウインカー”と言われる“シーケンシャルウインカー”を国産車で初めて搭載したのは、この510型ブルーバードSSSクーペである。この頃は、まだ法規が整備されていなかったため、510型の装備は問題とならなかったのだ。しかし、その後シーケンシャルウインカーは法規で認可されなくなり、長く採用されることはなかった。
シーケンシャルウインカーが復活したのは、2014年に保安基準の改正でシーケンシャルウインカーが正式に認められてからであり、以降レクサスの各モデルやトヨタ「クラウン」や「ハリアー」、さらには軽自動車でも採用モデルが増え、一時的に流行りの兆しを見せた。
ところが、最近になってシーケンシャルウインカーの人気の勢いは減速、どちらというと増えるどころか、逆に採用を止めるモデルが増えている。シーケンシャルウインカーの先陣を切ったレクサスはほとんど廃止している。廃れた理由は、ユーザーの好き嫌いが分かれること、作るメーカー側として設計的な制約があることが上げられる。
シーケンシャルウインカーの魅力は見た目のカッコよさだが、一方でカスタマイズ感がありチャラい印象が強く、逆に高級感が損なわれるという印象を持つ人も多かったのではないだろうか。さらにメーカー側では、横長のライトを装備するスペースが必要となり、フロントフェイスの設計的な制約が大きくなるという問題があるのだ。
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ブルーバードの中でも510型ブルーバードは最も人気が高いモデルだ。1960年代後半、マイカーブームが浸透し始め、ファミリカーながらスタイリッシュでスポーティなモデルを求めるユーザーが増えた。その要望に、クーペを追加するなどして510型ブルーバードは応えて大ヒットしたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。