e-SKYACTIV X SPRIT1.1で700km一気乗り
SKYACTIV-Xは、SPCCIと呼ぶ革新的な火花点火制御圧縮着火という画期的な燃焼方法を実現した現代世界最先端のエンジンである。これにこれに24VのBSG(ベルトドリブン・スタータージェネレーター)を組み合わせたのがe-SKYACTIV Xである。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りというe-SKYACTIV XはSPIRIT1.1版へ進化した。ハードウェアの変更ではなくソフトウェアのアップデートによって性能アップを果たしたことが話題になった。このアップデート版のSKYACTIV-Xを搭載したMAZDA3に試乗した。
MAZDA3は、2021年10月28日に商品改良を受けている。e-SKYACTIV X搭載モデルは、アクセルペダルの操作力の最適化などにより加速フィールとエンジンサウンドの造り込みを行なったという。また、燃費も改善されている。
WLTCモード 16.7km/ℓ
市街地モード 13.6km/ℓ
郊外モード 17.1km/ℓ
高速道路モード 18.2km/ℓ
となった。
販売状況を見てみよう。MAZDA3の国内発売は2019年5月だった。
日本国内では、
2019年1~12月:2万4108台
2020年1~12月:1万9215台
2021年1~11月:1万4737台
だ。
北米では、
2019年1~12月:5万741台
2020年1~12月:3万3608台
2021年1~11月:3万5634台
となっている。
面白いのは、北米のセールスデータではセダンとハッチバック(ファストバック)の販売台数が、それぞれ発表されるようになったことだ。
2021年の3万5634台の内訳は
セダン2万377台(57.2%):FB1万5257台(42.8%)
で、セダンの方が多い。欧州や日本と違う市場特性が窺える。
試乗車はMAZDA3 FASTBACK X L Package(AWD) 車両価格361万6963円である。赤レザーを使ったX Burgundy Selectionを除いて実質的にMAZDA3の最上級仕様だ。
試乗車のモード燃費は
WLTCモード燃費:16.2km/ℓ
市街地モード 12.6km/ℓ
郊外モード 16.7km/ℓ
高速道路モード 18.1km/ℓ
である。
マツダR&Dセンター横浜で借りだして、数日間通勤、郊外への往復120km程度のドライブなどで406km走った燃費は12.8km/ℓ(高速道路は3割ほど)だった。
自宅から東新宿の編集部まで都内の幹線道路(目黒通り~明治通り)を14kmほど走った燃費は、11km/ℓ台である。
正直、ちょっと物足りない気がする。e-SKYACTIV Xエンジンのフィールは、相変わらず独特だ。まさにディーゼルとよくできたガソリンNAのいいとこ取りの感じ。ディーゼルのように低速トルクが豊かで2000rpm以上のエンジンの伸び感はガソリンエンジンの長所を持っている。精度の高いパーツが精緻に組み上げられて、一回一回のシリンダー内の燃焼がきめ細かく制御されている……そんな(どんなだ?)独特のフィーリング。いつの深夜のように静まりかえった(でも21時くらい)都内をゆっくり走ると、少しカラカラとディーゼルエンジンのような音がする。これ、気になり出すと、ちょっと気になる。
さて、ICE(内燃機関)を積んだクルマがEVに対して持つ大きなアドバンテージは1タンクで走れる距離、つまり「足の長さ」だ。e-SKYACTIV X搭載のMAZDA3の足の長さを確認するために、ロングドライブに連れ出してみた。
WLTCモードが16.2km/ℓでガソリンタンク容量が48ℓ(FFモデルは51ℓ)ということは計算上777.6km走れるということだ。
ちなみに、MAZDA3は21年4月に商品改良を受けてSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルのモード燃費が次のようになった。
e-SKYACTIV X AWD(6MT):17.1km/ℓ(2021年10月の改良で17.7km/ℓになっている)
e-SKYACTIV X AWD(6AT):16.6km/ℓ(同16.7km/ℓ)
e-SKYACTIV X FF(6MT):17.9km/ℓ(同18.5km/ℓ)
e-SKYACTIV X FF(6AT):17.3km/ℓ(同17.4km/ℓ)
・AWDはFFより4%ほど燃費が悪化する。
・ATはMTより3%ほど燃費が悪化する
結果として、Xでもっとも燃費のよいFF(6MT)よりAT/AWDモデルは7%ほど燃費では不利になる。
という事前情報を頭にいれて、緊急事態宣言が発出される前の都内を早朝に出発した。目指すは日本海(新潟)である。片道350km程度だ。
まずは給油。e-SKYACTIV Xはレギュラーにも対応するが、ハイオクを入れた方がいい。まったくフィーリングが違うから。
満タンにした時点でメーター内に示された航続可能距離は530kmだった。燃料タンクは48ℓだから直近の燃費が11.0km/ℓだったことになる。530kmでは日本海を見て都内に戻ってこられない!
さて、マツダのATは、SKYACTIV-Driveと呼ばれる6速である。変速タイミングもいいし、いたずらに多段化する必要はそうは感じない。ちなみにMAZDA3 e-SKYACTIV X AWD 6ATの各速度の巡航エンジン回転数はいずれもメーター読みで
100km/h巡航で2150rpm
110km/h巡航で2350rpm
120km/h巡航で2500rpmほど
である。
燃費的には7速、8速があればもっと有利かもしれないが、90km/hでアクセルを踏んで追い抜きをする、あるいは100km/hから加速する(120km/h制限の区間など)場合、SPIRT1.1にアップデートされたe-SKYACTIV Xは、じつに気持ちいい。2000〜5000rpmでトルクが大きくなっているからだ。2000-3500rpmあたりの常用域の回転フィールは、e-SKYACTIV Xの真骨頂である。
PAで休憩するたびに区間燃費を見てみた。流れに乗って100km/h巡航すると18.7km/ℓだった。
新潟で日本海を眺めたあと、東京へ戻る。関越自動車道の最高地点は関越トンネル内の海抜約697m。帰りはここから下っていくわけだ。意識して90km/hくらいで巡航すると燃費は21km/ℓ台になる。燃費を考えたら、90km/hくらいで走るのがもっともいいようだ。
新潟往復の走行距離700kmで41.76ℓのガソリン(ハイオクだ)を給油した。満タン法で16.76km/ℓとなった(出発時と同じガソリンスタンドの同じ給油機を使った)。700km走ったところで、残ったガソリンで走れる距離は21kmとなっていた。つまり満タンで走れる距離は721kmだったということだ。
再び満タンにしたときの航続距離は「780km」となっていた(最後のセクションの燃費がよかったということだ)。
780km÷48ℓ=16.25km/ℓ
WLTCモード燃費が16.2km/ℓだから、まさにモード燃費通りだったわけだ。