650万円のプレミアムコンパクトSUV、レクサスLBX MORIZO RR。走りもサウンドも刺激たっぷりだ

レクサスLBX MORIZO RR(8AT)
レクサスLBX MORIZO RRは、LBXのハイパフォーマンスモデルである。いかつい顔とちょっとばかりワイド(ベース車+15mmの全幅1840mm)なボディから「ただ者ではない」ムードが感じ取れるかもしれないが、実際にそのとおりで、ものすごく大ざっぱに表現すれば、MORIZO RRはLBXのボディにGRヤリスのパワートレーンを移植したクルマということになる。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

LBXのボディにGRヤリスのパワートレーンを移植したMORIZO RR

全長×全幅×全高4190mm×1840mm×1535mm ホイールベース:2580mm

LBX MORIZO RRが搭載するエンジンはG16E-GTS型の1.6L直列3気筒ターボで、最高出力は224kW(304ps)/6500rpm、最大トルクは400Nm/3250-4600rpmを発生する。トランスミッションは変速時の回転合わせをシステムが自動で行なってくれるiMTを搭載した6速MTと8速ATを設定。4WDシステムには電子制御カップリングを用い、前後の駆動力配分は専用にチューニングしている。

レクサスLBX MORIZO RRのディテール写真はこちら

G16E-GTS型1.6L直列3気筒DOHCターボ

GRヤリスのパワートレーンをただ移植しただけでは強大なパワーとトルク、ハイグリップのタイヤ(前後235/45R19)にボディが負けるのは自明で、徹底的に強化されている。すでにLBXですら、ベースのGA-Bプラットフォーム(ヤリスクロスなどに適用)に対してスポット溶接の打点を増やし、構造用接着材の塗布範囲拡大が行なわれているが、剛性向上を図ったLBXに対し、MORIZO RRにはさらに手が入っている。スポット溶接の打点は10%強にあたる469打点追加。構造用接着材の塗布長は50%強の12.8m追加されている。

塗布型剛性アップ材のREDS(Response-Enhancing Damping Structure)

LBX MORIZO RRの開発にあたっては新技術が投入された。塗布型剛性アップ材のREDS(Response-Enhancing Damping Structure)がそれで、スチール製フロントロワーアームの裏側に熱硬化性樹脂を塗布することで断面変形を抑制する技術である。アルミ鍛造材を採用すれば話は早いが、開発期間とコストの観点から変更は許されず、知恵を絞って編み出したのがREDSだ。ロワーアームの裏に塗布するREDSの適用により、剛性は1.5倍に向上。これにより、操舵応答性を高めている。

タイヤはコンチネンタル SportContact7 サイズは235/45R19

すでに筆者は袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県、全長2.436km)でMT、ATそれぞれの味見を済ませている。LBX MORIZO RRはサーキットを走れるコンパクトSUVであることを確認済み。しかも、ただ「走れる」だけでなく、「楽しめる」ことを確認している。今回は8速AT仕様で都内の一般道と首都高速を走ってみた。

アクティブサウンドコントロールの虜に

ボディカラーはソニッククロム&ブラック
ドアの開閉は電磁ラッチ式。引くのではなく「軽く押す」のだ。

サーキット走行時は特段意識しなかったが、ドアの開閉は電磁ラッチ式で、カチャという作動音が新鮮だ。プレミアムブランドとしてのレクサスらしさを感じるディテールである。サーキット走行をそつなくカバーする脚の仕立てになっていることを考えると、一般道ではガチガチ? それともヒョコヒョコ?と身構えたくなるが、まったくそんなことはない。上屋はぐらつかず、サスペンションで路面の凹凸やうねりをいなしている感じで、終始快適である。これなら、助手席の乗員に気を使う必要もないだろう。

市街地で周囲の流れに乗って走るとき、あるいは首都高速で先行車に追従して走るシーンでも終始動きは穏やかだ。操舵入力に対して過敏に反応するのでライントレースに気を使うなどということはなく、肩の力を抜いたリラックスした状態でステアリングを握っていられる。いかつい顔をしているが常に戦闘モードというわけではなく、スイッチ(多分にドライバーの)を入れなければ快適なクルーザーである。

おそらく、サーキットでの刺激的な走りを知ってしまったので物足りないと感じてしまったのだろうと自己分析するが、筆者はアクティブサウンドコントロールの虜になってしまったようだ。加速や減速など、走行状態に応じた走行サウンドをオーディオスピーカーから鳴動する機能である。

サウンドはドライブモードごとに異なり、AT車の場合、NORMALはノーマルサウンド、SPORTはスポーツサウンド(エンジン)となる。オプションでマークレビンソン・プレミアムサウンドシステム(25万7400円)を装着すると、標準システムとは異なるサウンドが楽しめるようになる。試乗車はマクレビ付きだった。

SPORTはスポーツサウンドであることに変わりはないが、エンジンにエキゾーストのサウンドがプラスされる。また、EXPERT、VSC OFFに設定するとスポーツサウンド(エンジン+エキゾースト)のボリュームがアップされる。最も刺激的な設定がこれだ。ボリュームはセンターのタッチディスプレイでも設定できる。

刺激的なサウンドを求め、ほぼ常時VSC OFFにして走行した。スピンモードに陥ったときに制御の助けを得られないことになるが、タイヤグリップの範囲内で走ればいいだけの話である。日常的な走行では問題ないはずだ(不測の事態に遭遇したら困る、という不安は残るが)。アクセルオフしたときのボボボボという破裂音をともなうエキゾーストのバブリングサウンドがいい。ちゃんと後ろから聞こえる。

開発者に話をうかがったところ、エンジン回転数や事前のアクセル開度によって、選択するボボボボ音をランダムに変えているという。鳴らす音の選択も数も間隔も変えることで、二度と同じ音が鳴らないようにしているのだそう。組み合わせはほぼ無限。同じ音とわかった時点で興ざめになるからだ。

一度でもボボボボ音を味わってしまうと、もう一度鳴らしたくなる。鳴るようなシチュエーションを求めて走りに行きたくなる。筆者などは開発者の思うツボだろうが、こんなツボなら何度はまってもいい。

レクサスLBX MORIZO RR(8AT) 
全長×全幅×全高:4190mm×1840mm×1535mm
ホイールベース:2580mm
車重:1480kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列3気筒DOHCターボ
型式:G16E-GTS
排気量:1618cc
ボア×ストローク:87.5mm×89.7mm
圧縮比:ー
最高出力:304ps(224kW)/6500pm
最大トルク:400Nm/3250-4600rpm
燃料供給:燃料筒内直接噴射(DI)+PFI(D-4ST)
燃料:プレミアム
燃料タンク:50L
トランスミッション:DirectShift-8AT

燃費:WLTCモード 10.7km/L
 市街地モード7.1km/L
 郊外モード:11.2km/L
 高速道路:13.2km/L
車両本体価格:650万円
試乗車はオプション込み 683万3300円(オプション:デジタルキー3万3000円/アークレビン村プレミアムサウンドシステム+アクティブサウンドコントロール)25万7400円/ドライブレコーダー前後4万2900円)

キーワードで検索する

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…