【後編】日本でキャンピングカーは使いやすい? 実際に買ってわかった! 車中泊生活の本当のトコロとは?

検討期間10数年を経て、ついに愛車となるキャンピングカーを決定した筆者。新たなキャンピンカー生活には、これまでの価値観を変える様々な体験が待っていたのである。

TEXT&PHOTO:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)

実際に旅に出て分かったことは?日本でキャンピングカーは使いやすい?

いよいよ待望の車中泊生活が始まったが、実際に行ってみるといろいろなことが分かってきた。日本でキャンピングカーを使うということの現実とは?

フットモビール「シュピーレン」が納入されてから、間髪を置かずに車中泊の旅に出かけた。以前の愛車であるJeepラングラーでも車中泊をしていたので初体験というわけではないが、キャンピングカーでは「初」ということになる。

長野県のプロットモビールが制作するキャンピングカー「シュピーレン」はトヨタ・タウンエースをベースにしていて使い勝手が良い。

まず、心配していたタウンエースの動力性能だが、乗り慣れたジムニーシエラ(JB74型)とそれほど差はなかった。もちろん、装備面で重量増となっているため、キビキビ走るわけではない。発進直後の出だしは、“ノーマル”ではモッタリとした感がある。

本格的なチューニングはできないので、とりあえず高性能エンジンオイルを入れることに。使ったオイルは、パワークラスター「漆黒」。エンジンオイルとしてはかなり高級品の部類に入るが、Jeepでも愛用してフィーリング、燃費の改善に大きな効果があったため、引き続き使用している。

ノーマル車に比べて装備面で重量増となっているため、発進直後の出だしはモッタリとした印象。フロントブレーキの制動力も強化したいところだ。

実際、ダイハツ製エンジンのガサっとしたフィーリングが驚くほどなめらかになり、静粛性もすぐに改善された。また燃費も2〜3km/Lほど向上している。あとはプアな感じのするフロントブレーキの制動力が改善できればいいのだが、いいパッドがないため模索中だ。

タウンエースは商用車なので、装備は必要最低限のものだが、まあ特に不満はない。贅沢を言うならクルーズコントロールがあるといいのだが、走行するのはほとんどが一般道。なくても問題はない。

【前編】実際に買ってわかった! キャンピングカー選びと車中泊生活の本当のトコロとは?

検討期間10数年を経て、ついに愛車となるキャンピングカーを決定した筆者。新たなキャンピンカー生活には、これまでの価値観を変える様々な体験が待っていたのである。 TEXT&PHOTO:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)

熱帯夜で安眠するためには外部電源がマストか?

さて、2024年の夏は酷暑という言葉がピッタリで、車内環境を整えるのが大変だった。北は北海道、南は紀伊半島までの約1万kmを旅したが、夜になっても30℃を下回る日はわずか。そのため、車内の温度も扇風機、換気扇だけでは下げることができない。

シュピーレンはシートとエンジンの間に断熱材をプラスしているが、車内に排熱が入ってくることは避けられなかった。特に、停車後はエンジン熱が駆動系をつたって車体後部に回り、床面がうんざりするほど熱くなるのである。こうした熱が完全に取れるのは夜半過ぎで、下が舗装されている場所ではさらに時間がかかる。

これはたまらんと、エコフロー・WAVE2を導入したのだが、専用のバッテリーでは3時間ほどしかもたないという状況。最初にクルマのエアコンで車内を冷やしてからポータブルクーラーにスイッチさせてみたが、冷房効率はそれほど変わらなかった。やはりエンジン熱がネックだったのである。

ポータブルクーラーは、エコフローの「WAVE2」を導入した。

もちろんこれには、バンコンならではの開口部の大きさや断熱性のレベルも関係している。断熱性に優れたキャブコンでは、朝まで快適に稼動できたという話を聞いた。

RVパークなどで外部電源が使える場合は、ポータブルクーラーは満足のいく性能を発揮してくれた。電力の心配がないので温度が低く設定でき、吹き出し口付近の気温を16℃ほどで稼動させることができる。この状態だと1時間もしないで車内を“涼しい”状態にすることができた。

そもそも夜間の電力消費が少ない生活を送っている筆者は、キャンピングカーでもそれは同じ。それゆえ、外部電源の必要性をあまり感じなかった。しかし、昨今夏に快適に寝るには、ポータブルクーラーを外部電源で使用することがマストという結論に達した。

定番は「道の駅」だが、最近話題の「RVパーク」はどうだ?

さて、日本を旅していると車中泊をする場所に気を遣う。基本的には「道の駅」というのがスタンダードだが、周知の通り、ここでは仮眠をするだけというのが前提になる。車外でくつろいだり、調理をすることはマナー違反になる。

道の駅で車中泊をしているキャンピングカーは、実に多い。道の駅は飲食店や入浴施設を併設していることもあるので、車中泊に向いている。もちろん、無料で朝まで駐められるのが魅力的だ。キャンピングカーの多くは、日暮れくらいから集まりだし、早朝6時くらいには出発していく。飲食など生活のほとんどを車内で完結させている人が多い。そのため、道の駅泊の場合はキャブコンや広いバンコンが快適ということになる。

バンコンユーザーの実態を見てみると、そのほとんどが後部をベッドにしたまま生活していることが多い。ベッドの上にチャブ台を置き、そこで調理をしたり、食事をしている人が多かった。ダイネットでくつろいでいるという人は、あまり見かけなかった。

ちなみに、一度車内で調理をしたことがあったのだが、それですっかり懲りた。換気扇を回して肉を焼いたが、車内に臭いが長く残って就寝時に不快だったからだ。この経験から、煮炊きは車外スペースが使えるキャンプ場やRVパークのみとすることにした。道の駅で泊まる場合は、基本は外食、もしくは車内でできるだけ調理しないで済むレシピを考えるようにしている。

調理後に車内に充満する匂いを考えると、簡単な料理をするぐらいが無難かもしれない。

車中泊をする場所は、やはり道の駅が手軽だ。大抵の地域にあるし、やはり24時間開いているから時間を考える必要がない。地方の場合、常に開放されている公園の駐車場も狙い目。駐車場からトイレが遠い場合があるが、きれいに整備されていて、一晩の宿泊地には十分快適な環境だ。

意外と探しにくいのが、オートキャンプ場。どこにでもある施設ではないし、場所によっては犬同伴不可ということも少なくない。これは愛犬家にとっては打撃だ。犬連れゆえに断られた、良さげなキャンプ場がいくつもあった。

日本RV協会が、キャンピングカーの車中泊場所として積極的に展開しているのがRVパークだ。キャンピングカーにとって便利な施設だが、不便や不満がないわけでもない。

日本RV協会が『快適に安心して車中泊が出来る場所』を定義し普及を進めているRVパークは、余裕のある駐車スペースや電源、トイレなどが整備されている。

まず基本的に空き地の有効活用という主眼があるので、立地条件がいい所ばかりではないのである。施設によっては、住宅街のど真ん中という所も少なくない。宿泊施設の片隅というパターンも多い。それが落ち着く場所ならいいが、陽当たりが強いとか寒いとか、クルマの出入りが頻繁など、条件が悪い場所をRVパークに当てるところも少なくない。これでスタッフの対応が悪いと、使った側として最悪の印象になる。

施設使用料が2500〜3500円程度のRVパークなら納得もいくが、5000円を支払って電源や風呂の使用料が別という場合は、車中泊にする意義が一気になくなる。7000円もあれば、結構な宿に泊まることができる。その上、立地条件が悪ければ、もはやRVパークを使うメリットが感じられなくなってしまうのである。

筆者は道の駅やRVパーク、キャンプ場などの位置を地図上に示すアプリをスマホに入れて、それで各施設を状況で使い分けるようにしている。使用が多いのはやはり道の駅だが、公共駐車場も頻度が高い。もちろんいずれの施設でも、他の人に迷惑をかけないように、その行動には十分気を遣っている。

道の駅の中にRVパークがあると使い勝手が良い!

よく「車中泊と仮眠の違い」について聞かれることがあるが、キャンプ行為を伴うと車中泊になるとしている道の駅が多い。駐車スペース(車外)に道具を出したり、火を使うのは御法度としている施設がほとんどだ。一方で、道の駅内にRVパークを作り、その駐車スペース内ではキャンプ行為OKとしている施設もある。

これは私見だが、道の駅の中にもっとRVパークが併設されるというのが、一番使い勝手がいいのではないかと思う。住宅街の中にあるRVパークでも魅力的な施設はあるが、やはりそこで煮炊きをしたり、サイドオーニングを出すのは気が引ける部分がないわけではないからだ。

道の駅の中にもっとRVパークが併設されると、使い勝手が良くなると思う。

加えて、観光スポットへのアプローチという点も見逃せない。京都などのように、観光地と住宅地が近いという立地ならいいが、大抵の場合は観光スポットから遠く離れている。敢えて見知らぬ街に行くというのも、旅の醍醐味であるが。

いずれにせよ、車中泊ライフは想像以上に楽しいし、自由で開放的だ。ガソリン代や食費などを併せると、思ったよりも安い旅ではないが。ただ、愛車の車窓から見える景色が毎日変わるのは新鮮だし、日本の良さを存分に楽しむことができるというのは、車中泊の旅が一番ではないかと思う。

いよいよ冬の準備を考える時季がやってきたが、タイヤのチョイス、FFヒーターの装着、冬の車中泊の装備などを、またレポートさせていただく予定だ。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…