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シンプルさ、痛快なドライブフィール、ラジカルさ……
MINIクーパーが2024-2025インポート・カー・オブ・ザ・イヤー(日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会主催)を受賞した。受賞理由に「シンプルさ、痛快なドライブフィール、ラジカルさ……新型MINIクーパーはその伝統的名称からユーザーが期待するすべてを高次元で進化させた」とある。
まさにそのとおりで、新型MINIはしっかりMINIに見えたうえで新しさに満ちている。2002年からBMWグループで開発・生産・販売が行なわれているMINIは、2024年3月に国内で販売が始まった現行モデルで4代目。2013年以来、10年ぶりに代替わりした。3月に販売を開始した3ドアモデルに続き、6月には5ドアモデルの販売が始まっている。
MINIクーパー3ドア、パワートレーン別に見てみる
今回紹介するのは3ドアだ。3ドアよりホイールベースが70mm長く(2565mm)、全長が180mm長い(4035mm)5ドアは1.5L直列3気筒ターボエンジン(最高出力115kW、最大トルク230Nm)と2.0L直列4気筒ターボエンジン(最高出力150kW、最大トルク300Nm)搭載車を設定。トランスミッションはどちらも7速DCTを組み合わせる。
全長が4mを切る3ドアには2種類のガソリンエンジン仕様に加え、電気自動車(BEV)の設定がある。フロントに搭載するモーターの最高出力は160kW、最大トルクは330Nm。床下に搭載するリチウムイオンバッテリーの総電力量は54.2kWhで、WLTCによる一充電走行距離は446kmだ。
グレード | 車両価格 | エンジン | トランスミッション | 駆動 |
MINI COOPER(3ドア)C | 396万円 | 1.5L直3ガソリンターボ(156ps/230Nm) | 7DCT | FWD |
MINI COOPER(3ドア)S | 465万円 | 2.0L直4ガソリンターボ(204ps/300Nm) | 7DCT | |
MINI JOHN COOPER WORKS(3ドア) | 536万円 | 2.0L直4ガソリンターボ(231ps/380Nm) | 7DCT | |
ICEモデルボディサイズ | 全長×全幅×全高:3785mm×1745mm×1455mm ホイールベース2495mm | |||
グレード | 車両価格 | モーター | 一充電走行距離 | |
MINI COOPER(3ドア)E | 463万円 | モーター(184ps/290Nm) | 344km | FWD |
MINI COOPER(3ドア)SE | 531万円 | モーター(218ps/330Nm) | 446km | |
BEVモデルボディサイズ | 全長×全幅×全高:3860mm×1755mm×1460mm ホイールベース2525mm |
プラットフォームは共用しておらず、エンジン仕様とBEVで別設計である。識別点のひとつはフロントまわりにあり、ボンネットフードとフロントバンパーの分割が異なる。エンジン仕様は特徴的な丸いヘッドライトを飲み込むほど、ボンネットのカバー範囲が広い。また、ドアハンドルの形状が異なり、ガソリン仕様は順手、BEVは逆手でハンドルを握るタイプだ。ガソリン仕様はフェンダーアーチに加飾があるのに対し、BEVにはない。ガソリン仕様のアンテナはロッドタイプなのに対し、BEVはフィンタイプである。室内ではアクセルペダルの仕様が異なり、ガソリン仕様はオルガン式、BEVは吊り下げ式となる。
愛らしい表情がMINIの特徴だが、筆者がとくに気に入っている眺めはリヤだ。ユニオンジャックをイメージさせるライティンググラフィック(しまった!という表情→(>_<)に見えなくもない)もいいし、いかにも走りそうな踏ん張り感のあるシルエットもいい。
遊び心がMINIの証
室内はセンスのいい素材とデザインでまとめられており、エクステリアを見て上がった気分がさらに盛り上がる。目を引くのはセンターの丸いタッチディスプレイだ。有機ELを採用した直径240mmのディスプレイが映し出すグラフィックは高精細で、眺めているだけで楽しくなる(車速も表示できるが、走行に必要な情報はヘッドアップディスプレイで確認できる)。ギミックも満載で、ディスプレイの下にある「エクスペリエンスモード」のスイッチを操作すると、ディスプレイに表示されるメーターのグラフィックが変化。夜間はモードに応じてアンビエントイルミネーションが切り替わり、異なるムードが楽しめる。
ビビッドモードを選択中に音楽をかけると、流れている音楽のカバーアートに合わせてライトエフェクトが25色の中から自動で選定され、ダッシュボード上に投影。裏モードにDJモードが設定されており、カバーの画面をつまむようにタップすると丸いディスプレイがレコード盤に変わる。レコードを知っている世代向けのサービスだろうか。回転するレコード盤を指でこすると、キュッキュッというスクラッチ音が鳴る仕掛け。
スクラッチ音がしている間は音楽が聞こえなくなるし、だからどうした?という機能なのだが、こうした遊び心を受け入れるタイプかそうでないかで、MINIに対する評価は大きくわかれそうだ。ヘッドライトとリヤライトはキーのオンオフに連動して凝った点灯/消灯パターンを披露して点消灯する。それも複数のパターンから選択できるこだわりようだ。
この手の遊び、筆者は好きだ。だからMINIが好きになった。リサイクルポリエステルの布を張ったダッシュボードも気に入ったし、布ベルトのようなステアリングホイールのセンタースポーク部もいい。前席シートの間にある物入れのフタもおしゃれだ。唯一欠点を挙げるとしたら、BMW車と共用と思われるごついウインカーレバーだろうか(ワイパーレバーも同様)。頻繁に手を触れるこのレバーがMINI専用だったら、もっとウキウキするのに……。
MINIに対してすっかり「あばたもえくぼ」状態になってしまった筆者にとれば、ウインカーレバーなど些事でしかない。しかし、ヒョコヒョコと落ち着かない乗り心地に関しては、どれだけMINIに毒されている、いや、心を奪われているかによって判断が分かれるだろう。人によっては、まったくもってNGと判断されかねない荒々しさだ。MINIに心酔しきっている筆者には許容範囲だが。
充電環境のことは別にして、BEVと2種類のガソリン仕様、どれがベストバイかと問われると、なかなか難しい。BEVとエンジン車で微妙に異なるエクステリアに関しては、よりスマートな装いのBEVに軍配を上げたくなる。モーターならではの、応答性が高く、スムースな走りもBEVの魅力だ。今回の試乗では、380.4km走って電費は7.3km/kWhだった。7km/kWhの電費を記録するとは、なかなか優秀である。
いっぽうで、ベーシックな位置づけの1.5L3気筒版でも充分にMINI COOPERの魅力は味わえる。野太いエグゾーストノートが気分を盛り上げ、格段に力強く、刺激的な走りが楽しめる2.0L4気筒版も魅力的で、これはこれで捨てがたい。ヒョコヒョコした乗り心地は、車重が300kg以上軽い両エンジン仕様ではだいぶ軽減される。
従来からのMINIファン、あるいは新しいMINIを見て「いいかも」と直感的に感じ取った人にとっては、期待を裏切らないクルマといえるだろう。