目次
時代の名車探訪・初代ソアラ編の第4回は、まだまだ続く、同車の内装編だ。
今回はクルマ好きがわくわくする、ソアラの室内装備を眺めていこう。
★マーク付きは、当時の資料などでの呼称です。
【室内装備】
・クルーズコンピューター
当時のクラウンやマークIIに載っていたものは電卓の親分みたいな姿でボタンがずらり! それがまた商品魅力でもあったが、煩雑に見えるものでもあった。
ソアラ用は、まずは従来のものに対して小型・軽量化を図ったことで進化している。
上級機種に標準で、表示内容は、「航続距離」「到着予想時刻」「減産距離計」「消費燃料」「時計」の5つだ。
★マイクロプロセスド オートマチック エアコンディショナー(マイコン式オートエアコン)
名称が長い! こちらも上級機種に標準装備。
日射量の変化をセンサーが検知し、マイクロコンピューター(という呼び名が懐かしい)が、乗員の設定した希望温度(18~32℃)に室内温を保つ。室内の代表温度を測る室温センサーはセンターコンソール後端に置いたのはうまい。たいていは計器盤のハンドル左あたりに設置される。
操作パネルは当時画期的な、フラットなタッチパネル。
開発側にもスマートフォン世代が増えたせいか、いまのクルマのオーディオや空調パネルに用いられるタッチ操作のパネルが、運転時に凝視を強いられることに私は問題視しているのだが、同じタッチ操作なのにこの時代の未来感あるデザインを見るとそれを忘れ、見入ってしまうのはよくないですな。
★膝元吹出口
80年代後半~90年代初頭にかけ、コロナクラスから上のトヨタ車に採り入れられていた。ハンドルコラムの下にあり、風向き調整はルーバーの前後=回転のみ。そのまま端までまわすとシャットアウトされる。その存在を認識するユーザーがどれほどいたかはわからないが、いつの世もトヨタがトップにあるのは、こういったユーザー想いの細やかな優しさの有無と決して無関係ではないと思う。
・ベンチレーション
空調がらみの話なのでここで。
この頃になると、70年代のクルマの外観にあったエアアウトレット(室内気の排出口)は少しずつ姿を消し始めた。スタイリング要請だろう。いまのクルマは後ろのバンパーの右か左どちらかの裏にあり、簡単なバルブで追い出すようになっている。
ソアラは室内排気を、まず後席サイドとリヤガラス下端の排出スリットに誘い込み、ドア開口部ロックストライカー下のアウトレットとボディ側サイドプロテクターと一体にした排出口から外に出るようにした。他の機能部品であるサイドプロテクターと換気機能とを一体にしたデザイン技が光る。
・オーディオ
一体の豪華オーディオに見えるが、豪華ではあるものの上下別々のものを重ねて配置されている。上段ラジオも下段ステレオも機種によって標準装備やオプションの組み合わせは様々だ。
で、このGT-EXTRAのこのオーディオについて解説するが、名称が長いから、目ぇしっかりおっぴらいてよーく読めよ!
上段はラジオで、★番組予約付電子同調AM/FMラジオ。
いまのデジタルテレビよろしく番組予約ができるが、異なるのはワンタッチではないことで、こちらは希望放送局と放送時間をセットすることでふたつまでの番組予約ができる・・・VHSビデオに近いが、曜日関連がないため、たぶん聴きたい番組の放送当日でないとセットできない。
下段は★録音機構付カセットカーステレオ。
名のとおり録音と再生が可能で、入れたテープにラジオ放送を録音できるのが便利なのと、何に使うことを想定しているのか、操作パネル右下に見えるMIC端子からつないだマイクからも録音できる。
挿入口に「AUTO REVERSE」とある割に、録音できるのは片面だけなのはおもしろい・・・「テープ」だの「片面」だの、いまのスマートフォン世代にわかるかなあ、この話。
★リヤ ウインド アンテナ
後ろのガラスにある茶色い線・・・電気を流してガラスに付着したくもりを除去する熱線(リヤウインドウデフォッガ)とは別に、上部で同じ色の線が横に走っている。これがリヤウインドアンテナだ。
私が使っていたU14ブルーバードもガラス鋳込みのアンテナがあったが、これはパワーで伸びるアンテナとの併用で、走行場所によって変わる受信状態の、良好なほうの電波で音を流すものだった(ダイバーシティ)。
他に変わった例としては、トランクリッドそのものをアンテナにするクルマもある。
いっぽうのソアラは外観のどこを見まわしても、伸縮するロッドアンテナはなく、アンテナはこのガラスだけで完結させているのはりっぱ。
デフォッガとつないでアンテナにも電気を流し、アンテナ部のくもりも取れるようになぜしないのかと思うが、構造図を見るとデフォッガ使用時の雑音防止目的にノイズフィルタをデフォッガ回路に組み込まれている。ならばノイズが大敵のアンテナ線になおのこと電気を流すはずはなく、素人考えだった。
★エレクトロニック・スピークモニター(音声警告装置)
どうやらソアラの性別は女性らしい。ドライバーや他の乗員が運転操作時や乗降時にしてしまう「ついうっかり」を女性の声で運転席ドアスピーカーから注意を2回ずつ促す。
この写真の撮影時も「ドアをお確かめ・・・」と数回ご注意を受けたもの。その流暢で美しい声たるや、みなさんにお聞かせしたいほどだった。
ユニットは、後席左乗員足元の内張りの中・・・そう、外から見るなら、さきの室内側排出スリット下あたりに据えられている。
項目は次の5つだ。
1.キー抜き忘れ警告
<作動条件>
・キーが差し込まれた状態で運転席ドアが開いたとき。
<音声内容>
「キーをお確かめください。」を2回。
2.ライト消し忘れ警告
<作動条件>
・ライトを点灯したままエンジンを切ったとき。
・ライトを点灯したままキーを抜いたとき。
<音声内容>
「ライトをお確かめください。」を2回。
3.ガソリン残量警告
<作動条件>
フューエル残量信号が40秒以上続いたとき。
<音声内容>
「ガソリンを入れてください。」を2回。
4.半ドア状態警告
<作動条件>
・走行中、2つのドアのいずれかが開いたとき。
<音声内容>
「ドアをお確かめください。」
5.パーキングブレーキ戻し忘れ警告
<作動条件>
・走行し始め、パーキングブレーキを戻していないとき。
<音声内容>
「パーキングブレーキをお確かめください。」を2回。
・ルームランプ
特に特徴はない。「ON」「OFF」のほか、ドア開閉に連動して点消灯する「DOOR」の3ポジション。
・アシストグリップ
後席ルーフサイドにはアシストグリップがある。さすが高級スペシャルティ、留めるボルト隠しの部分はゴールドのめっき仕立てだ。
初代ソアラで特徴的なのは、助手席側のフロントピラーにアシストグリップがあることだが、写真を撮るのを忘れました。ゴメン。
【収納・トランク】
・グローブボックス
内部は植毛処理付きの照明付き。インパネ造形上、くの字になっているふたを開けた水平部分は、お月さまのクレーターの様に円形にくぼんでおり、飲料缶を置けるようになっている。
なお、ふたにはキーロックがついているが、これはおおらかだった当時と異なり、いまこそ深刻な車上荒らし対策として、現代のクルマに採り入れてほしいものだ。
・灰皿
オーディオ上部には、いまのクルマでは廃止された引き出し式の灰皿がある。その隣にはシガライター。いずれも夜間の使用性向上のための照明がついている。
私はもういちどいまのクルマでも灰皿を復活させてもいいのではと思っている。中に照明がついているし、小銭を入れておくのに便利なのだ。
ETCが普及したといっても、時間貸駐車場やファーストフードのドライブスルーなど、窓からのお金のやり取りをするシーンはまだまだある。
「この禁煙時代に!」と顔をしかめるなら、灰皿と同容量のもの入れといい替えてもいい。
いま使っている私の旧シエラにも灰皿があり、販社用品のもの入れに置き替えて小銭入れに使っているが、これほど便利なものはない。
これくらいのサイズのもの入れ、いまのひとは音楽を入れたUSB、スマートホンとナビを接続するコード、Bluetooth機器を入れる場所としてもいいと思うのだが。
・コンソールボックス
2か所の仕切りスロット(仕切り板自体は1枚)で、任意に分割して使える。こちらも内部には植毛処理が施されている。
★フタ付き背もたれポケット
最上級GT-EXTRAはふた付きの2重式。このソアラにはあってもよさそうなドアポケットがないから、当時のオーナーは道路地図帳を入れたのだろう。いまなら軽量モバイルパソコンを収めるのにうってつけだ。
・トランクルーム
リッドはバンパー上からではなく、ランプ上から開く。荷物の出し入れには低いほうがいいだろうが、中で散乱していたものがふたを開けるや転がり落ちてこないよさがあるのはこちらのほうだ(そのようなことになるほど満載することはないだろうが。)。
内部は汚れものを放り込むのに躊躇するほど、ていねいなていねいなトリミングが施されている。
なお、ソアラはトランクルームランプをパーセルトレイ下に備えるが、ソアラの第2回で述べたとおり、夜間のリヤスモールランプの光もトランク内を照らす構造になっている。このソアラでは、エントリーイルミネーテッドシステムだけでなく、お金のかからないやさしさも光る。
・スペアタイヤ
ついこの間まで主流だった応急用タイヤが認可されたのは1981年3月12日のことだ。発表・発売が1981年2月27日だった初代ソアラのトランクに応急用タイヤが収まっているはずはなく、厚いマットをめくれば走行用タイヤ(グランドタイヤ)そのままのスペアタイヤが顔を出す。ホイールまでグランドタイヤと同じアルミホイールというありさまだ。
あと2週間認可が早ければこの時点で応急用タイヤが積まれていたのだろう。
なお、私はいまのパンクへの対応が応急用タイヤではなく、パンク修理剤であることに多大な疑問を持っている。この年末のおりに忙中閑をつけられる方、よかったらこのソアラ記事のついでにこちらもお読みいただければ。
【その他の興味を惹く装備】
★クォーターサンシェイド
名のとおり、後席乗員を直射日光から保護するためのシェイド。
樹脂でできており、ドライバー席からの斜め後方視界を阻害しないよう、外枠も内側5枚のフィンもアングルが与えられている。スクリュー留めになっているので、清掃時には脱着が可能だ。
機能はただの日除けなのだが、外から見ても中から見てもソアラスタイリングを特徴づけているひとつになっていると思う。
・成型天井
成型天井を初めて採り入れたのは1970(昭和45)年の初代セリカだ。トリム材をルーフ形状そのままに成型しているので、頭上空間が稼げるのと、見映えが良くなるのが吊り天井に対する美点。ただしセリカの頃は、表面素材は吊り天井と同じビニール地だった。
初代ソアラ時代にもなると進化していて、表面は布、というよりカーペットと同じような素材で乗員を頭からやさしく包み込む。もっともソアラより前の、この頃生産されていた最後のFRカローラでも上級機種はこのタイプだったと記憶するから、ソアラならなおのこと当然のルーフトリミングだろう。
いやあ、カローラにソアラ・・・どちらも余裕が出始めた80年代のクルマだけに造り込み感が高い! それに引き換え、いまはどうよ・・・
・牽引フック
かつての乗用車は、前後に牽引フックを備えていた。ソアラも後ろのバンパー右下に牽引フックを用意。
故障車を牽引ロープでつなぎ、引っ張るときに使う。このスタイルのソアラが青いJAFの救援トラックよろしく故障車を引っ張る姿なんて想像するとおかしい。
オフロード4駆を除き、いまのクルマは、故障した自分を引っ張ってもらうための牽引フックをフロントには備えても、故障車引っ張り用としてリヤには備えていないはずである。もしそれらしいものがリヤバンパーにあったら、それは輸送時用の固定用(固縛フック)だから、いいカッコ見せようとしてまちがえて牽引用に使わないように。クルマをボディごと壊します。
・サイドシルのプレート
ドアを開けるとここにも「SOARER」の文字がお出迎え。「SOARER」の書体がトランクのエンブレムの気品さが抑制され、どこかポップでマンガチックになっているのがおもしろい。
というわけで、初代ソアラ解説はまだ続けます。
【撮影車スペック】
トヨタソアラ 2800 GT-EXTRA(MZ11型・1981(昭和56)年型・OD付4段フルオートマチック)
●全長×全幅×全高:4655×1695×1360mm ●ホイールベース:2660mm ●トレッド前/後:1440/1450mm ●最低地上高:165mm ●車両重量:1305kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.5m ●燃費:8.1km/L(10モード燃費)、15.5km/L(60km/h定地走行燃費) ●タイヤサイズ:195/70HR14ミシュラン ●エンジン:5M-GEU型・水冷直列6気筒DOHC ●総排気量:2759cc ●圧縮比:8.8 ●最高出力:170ps/5600rpm ●最大トルク:24.0kgm/4400rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:61L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:ストラット式コイルスプリング/セミトレーリングアーム式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:293万8000円(当時・東京価格)