運転席側ドアにも秘密あり!? 新型フォルクスワーゲン・パサートは13cm長くなって後席が極上空間に!

1973年の誕生以来、全世界で3400万台以上が世に送り出されてきたフォルクスワーゲンの大名跡、パサート。その9代目となる新型の日本発売が、2024年11月から始まっている。より広くなった後席と荷室の空間、142kmのEV走行が可能なPHEVの登場が話題だが、いざ乗り込もうと思って運転席側のドアを開けると、すっぽりと「穴」が開いているのを発見。これって何だ!?

9代目はワゴンのみ! 140km以上のEV走行が可能なプラグインハイブリッド車も登場

9世代目となるフォルクスワーゲン(VW)パサートが日本の道を走り始めた。ボディタイプはかつてヴァリアントと呼ばれたワゴンのみ。国内にワゴンしか導入されないのではなく、そもそも新型はステーションワゴンタイプの設定しかない。セダンの設定はなくなった。パサートといえばワゴンになったので、ボディタイプはワゴンだが、車名はシンプルに「パサート」だ。

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1973年に初代が登場したパサート。その歴史は、ゴルフよりも長い。2024年11月から日本での発売が開始された新型は9代目となる。
新型はMQBアーキテクチャーの進化版である「MQB evo アーキテクチャー」を採用。Cd値は0.25と良好な数字をマークしている。
エントリーグレードの「Elegance Basic」、装備が充実した「Elegance(写真)」、スポーティな専用エクステリア&ホイールが備わる「R-Line」の3グレードが基本構成。

新型は大きくなった。全長×全幅×全高は4915mm×1850mm×1500mmで、先代より130mm長くなっている。全幅と全高に変わりはない。ホイールベースは先代比+50mmの2840mm。ホイールベースの拡大分は後席の居住性向上にあてられ、全長の拡大分は荷室の拡大にあてられている。おかげで、もともと広かった後席はさらに広くなった。身長184cmの筆者が運転席でドラポジをとった状態で後席に座ってみると、足元にはこぶしが4つは入りそうなくらいスペースが残る。足が組めそうだ(体が硬いので組めない)。

新型のスリーサイズは全長4915mm×全幅1850mm×全高1500mm、ホイールベースは2840mm。先代よりも全長は130mm、ホイールベースは50mm長くなったことで、より流麗なシルエットに。

荷室も広い。通常時の容量は690L、後席を倒すと1920Lに拡大し、この数値は先代比+140Lだそう。付属の金属製バーを使ってハンモックのような状態を作り出し、そこに小物を置いたり、フロアに固定して仕切りに使ったり、付属の樹脂部品をフロアに差し込んで荷物が走行中に暴れないようにすることができる。多彩な使い方ができるのも新型パサートの特徴だ。AC100Vの電源ソケットも設置されている。テールゲートの開閉は当然、電動だ。

荷室容量は通常時で690L、後席格納時で1920L。先代比では、それぞれ+40L、+140L拡大された。フロアと開口部の高さが最小限に抑えられていたり、側面がフラットに整えらていたりと、実直な荷室のつくり方はフォルクスワーゲンの伝統だ。
2本のバーを横に渡して、ハンモックのように荷室の上のスペースに小物を置くことも可能。バーは床面にも固定用の穴が設けられている。
写真はプラスチックのガイドをマジックテープで固定して、バッグを固定している様子。
トノカバー類は床下スペースに収納できる。
100V・1500WのAC電源も荷室に完備。アウトドなど幅広いシーンで活躍してくれそうだ。

インテリアからは新世代になった感がたっぷり伝わってくる。基本的には同時期に新型に移行したティグアンと同じで、インパネ中央に15インチのタッチスクリーンが鎮座しているのが特徴。メーターもフルデジタルで、カラーが選択できるアンビエントライトが備わっており、3ポイント式空気圧のリラクゼーション機能が前席に標準で備わる。

最近のフォルクスワーゲンの流儀に則り、物理ボタンの数の少ないすっきりとした印象のインパネ。
メーターは10.25インチの大型液晶タイプ。
インパネ中央に、15インチの大型タッチスクリーンを採用したのが新型のインテリアの目玉。
後席は新型の特等席。膝まわりは余裕たっぷり。
試乗車はレザーシートパッケージ(17万6000円)装着車。
前席は背もたれが空気圧によって身体を押圧するリラクゼーション機能付き。

パワートレーンは3種類。ハイライトはプラグインハイブリッド車(PHEV)が設定されたことだろう。グレード名称は「eHybrid」で、名は体を表しているとは言い切れない。実はメディア向け試乗会で試乗車を選択する際、「eHybrid…ん?」という感じでスルーしてしまい、「イチ押しのボディカラーです」の誘いに乗ってガソリンのeTSI(詳細は後述)を選択してしまったのである。新作のeHybridをもっと推してくれれば選択したのに、と愚痴っておく。

フォルクスワーゲン・パサート グレード展開
eTSI Elegance Basic 524万8000円
eTSI Elegance 553万円
eTSI R-Line 576万4000円
TDI 4MOTION Elegance 622万4000円
TDI 4MOTION R-Line 645万8000円
eHybrid Elegance 655万9000円
eHybrid R-Line 679万4000円

というわけで、マリポサイトグリーンメタリックのボディカラー、とくとご覧ください。きれいでしょう。

ボディカラーは全7色。写真が色鮮やかなマリポサイトグリーンメタリック。

PHEVのeHybridはeTSIがベース。ただし、組み合わせるトランスミッションは7速DSG(DCT)ではなく6速DCTとなる。駆動用モーターの最高出力は85kW、最大トルクは330Nmだ。総電力量25.7kWh、走行時最大使用容量19.7kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTCモードのEV等価レンジは142km。10年前の電気自動車(BEV)並みのバッテリーを搭載しており、長いEV航続距離が特徴だ。

BEVを購入したタイミングで自宅に普通充電器を設置してみたものの、出先で充電する際の不便さに嫌気が差して「BEVはもういいや」と感じているユーザーが一定数いるとフォルクスワーゲン ジャパン(VWJ)では認識している。でも、とりこになった電気(モーター)の、応答性が良く、スムースな走りからは離れがたい。バッテリーに蓄えた電気エネルギーがなくなっても、ガソリンで走り続けられるPHEVならEV航続距離や充電の不安から解放される。そこが歓迎されれば、BEVからPHEVへの流れが起きるのではないか──と、VWJでは読んでいる(期待している?)ようだ。

EV走行からエンジン主体の走行に切り替わった際のアクセルペダル操作に対する応答性や音の変化が気になるところだが、そのあたりの確認は改めて機会を探ることにしたい。パサートeHybridは急速充電(DC)には対応しておらず、普通充電(AC)のみの対応。55万円のCEV補助金が受けられるので、補助金を差し引くとディーゼルエンジン搭載グレードよりお買い得になる。

eHybridも「Elegance」と「R-Line」の2グレード展開。写真は後者。
助手席側のフロントフェンダーに、普通充電口が設けられている。
eHybridは150PS(110kW)の1.5Lターボエンジンに85kWのモーターの組み合わせ。バッテリー容量は25.7kWhで、142kmのEV走行が可能。

ガソリンとディーゼルエンジン搭載車はティグアンと同じラインアップで、ディーゼルは2L TDI、ガソリンは1.5L eTSI mHEVである。ディーゼルは4MOTION(4WD)、ガソリンは2WD(FF)だ。トランスミッションは両エンジンともに7速DSGとの組み合わせ。両エンジンともに最新世代で、ディーゼルはNOxを浄化する尿素水を排気系の上流と下流の2ヵ所で噴射するツインドージングシステムを採用しているのが特徴だ(従来はシングル)。

ガソリンは1.5L直列4気筒直噴エンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムの組み合わせとなり、新型パサートが搭載する最新世代はスターターモーターレスとなったのが特徴。ベルトスタータージェネレーター(BSG)でエンジンの始動を行なうため、耳障りなキュルキュル音とは無縁となる。

eTSI系に搭載される1.5Lターボ+マイルドハイブリッド。エンジンの最高出力は150PS(110kW)、モーターの最高出力は13kW、バッテリーの容量は0.7kWh。

前世代のVW車を知っていると、操作系が変わっていることにとまどうだろう。エンジンのスタート/ストップボタンはセンターコンソールに残っているが、シフトセレクターは見あたらない。どこにあるかといえば、ステアリングホイール右側の裏にあるレバーだ。前にひねるとD、手前にひねるとR、先端のスイッチを押すとPレンジに入る。シフトセレクターをセンターコンソールから追い出したのは、収納など他の用途に使いたかったということだろうか(操作系はティグアンも同じ)。

センターコンソールからなくなったといえば、オートブレーキホールドのスイッチもなくなった。ダッシュボード右側が定位置のアイドリングストップのON/OFFスイッチと同様、タッチスクリーンでメニューを呼び出して操作する必要がある。物理スイッチはできるだけなくしてすっきりさせたい(ついでにコストも下げたい)ということだろうか。

シフトレバーは、ステアリングコラムの右側に配置。先端を捻ることで、シフト操作が行なわれる。
センターコンソールには、スタータースイッチ、パーキングスイッチ、シャッター付き小物入れを配置。
シャッターを開けると、スマホのワイヤレス充電器とドリンクホルダーが現れる。
様々な操作をセンターモニターに集約。パーキングブレーキのオートホールド機能もここでオン/オフを行なう。

音声認識機能を搭載しているのもパサートの特徴で(ティグアンも同様)、「ハロー、フォルクスワーゲン」もしくは「ハロー、アイーダ(IDA)」と声を掛けると機能が立ち上がり、コマンドを受け付ける。試しに(同乗者が)何度かエアコンの温度調節などを指示してみたが、拒絶されることしきりで、「喧嘩売ってんのか」という印象(怒ってはいません)。このままでは困る。

前述したように、試乗したのはガソリンのeTSI(最高出力110kW/5000-6000rpm、最大トルク250Nm/1500-3500rpm)だった。中間グレードのEleganceにレザーシートパッケージとDCC Proパッケージがついていた。レザーシートパッケージを選択すると前席リラクゼーション機能にシートベンチレーションが付加される。DCC Proパッケージを選択すると減衰力固定式のダンパーが減衰力可変ダンパーになる。

車重は約1.5tだが、加速力は必要にして十分、といった印象。
「Elegance Basic」は17インチ、「Elegance」は18インチ(写真)、「R-Line」は19インチのタイヤを履く。
DCC Proは「スポーツ」「コンフォート」といったモードのほか、細かく固さを調整することもできる。

従来のDCCはソレノイドバルブ1個で伸び側と縮み側の減衰力を調節していたが、DCC Proはソレノイドバルブ2個に進化しており、伸び側と縮み側で独立して減衰力を制御できる。そのぶん制御自由度は高い。ドライビングプロファイルで「コンフォート」を選択すると文字どおり乗り味はコンフォートだし、「スポーツ」を選択すると「スポーティなクルマに変わった?」と感じるくらいキャラクターが変化する(高回転側を多用するパワートレーンの制御による効果も大きい)。1台で2台分の乗り味が楽しめるお得感がある。

2名乗車+パソコンやカメラなどの手荷物を載せた状態では、動力性能は必要十分という印象。新型パサートの最大の魅力はやはり、広大な居住空間と荷室空間だろう。新車で買えるステーションワゴンの選択肢が少なくなっているなかで、貴重な存在である。

運転席側ドアの「穴」は、折り畳み傘をスマートに収納するためのスペース

運転席側ドアのアームレストの端部には、折り畳み傘がすっぽりと収まる「穴」が空いている。
突然雨が降り出したような場面でも、ここからスマートに折り畳み傘を取り出せる、というわけだ。
フォルクスワーゲン・パサート eTSI Elegance
全長×全幅×全高:4915mm×1850mm×1500mm
ホイールベース:2840mm
車重:1570kg
駆動方式:FF
エンジン
形式:1.5L直列4気筒DOHCターボ
排気量:1497cc
最高出力:110kW(150PS)/5000-6000pm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
燃料:無鉛プレミアム
モーター
最高出力:13kW/4000rpm
最大トルク:56Nm/200rpm
リチウムイオン電池
総電圧:44V
総電力量:0.7kWh
燃費:燃料消費率WLTCモード 17.4km/L
車両本体価格:553万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…