テーラーメイド運転支援システム(TDSS)【シン自動車性能論】

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日本の自動車研究の泰斗として数々の研究成果を挙げてこられた小口泰平先生が、21世紀の自動車性能論を書き下ろす。名付けて『シン自動車性能論』である。第5回のテーマは「テーラーメイド運転支援システム」である。
TEXT:小口泰平(OGUCHI Yasuhei)

自動運転は、「車両の運転制御の高質化」と「道路環境改善とその保全」、この両者が不可欠です。前者の確保は技術的には可能な段階に到達しつつありますが、後者は社会システムの課題であり、コトは意外と容易ではないのです。暫くは、自動運転走行が可能な道路に限定した特定の展開となりましょう。

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図に示すテーラーメイド運転支援システム(Tailor-made Driving Support  System「TDSS」)は、実験室レベルのモデル解析の研究にとどまっていますが、将来的には自動運転のひとつの道となり得る可能性があります。まずは、ドライバー個人の運転特性「加速制御」「操舵制御」「制動制御」などをドライビング・シミュレーターを用いて測定・解析し、運転免許カルテに個人特性として事前に組み込みます。乗車時は、乗車車両に個人の「TDSS」情報を入力し、目的地も入力します。かくして本人確認の後、走行を開始します。走行経路は最速かつ安全・安心の最適ルートを選定し、所要時間が表示されます。このシステムが実現しますと、乗員は自動運転制御に委ね、走る居間として珈琲を飲みながら、ゆったりとテレビでニュースなどを拝見、やがて目的地に到着。これが目指すところです。

なお、レディーメイド運転制御システム(Ready-made Driving  Support System「RDSS」) は、既製服のような平均的データに基づく運転制御を意味します。個々人ごとの制御特性を求め、ドライバー特性をグループ化したTDSSを作成し、本体のTDSSを支援します。クルマの安全かつ快適な走行には、このような基本的な制御を軸にして、他車や歩行者そして道路環境、さらには気象条件など、さまざまな走行変数への適合などが必要となります。ヒトの好みや行動は文字通り多岐多様の極みでありますが、実は一定の特性があるのもこれまた事実です。安全・安心の制御行動の世界では、基準や規制が不可欠でして、それを納得し日々つとめるのも、これまたヒトなのです。安全と安心は異質のモノとコトでありながら、人はともに求めるため、納得のゆくシステム創りには、個々人の運転特性の測定とその解析、道路特性と他車対応との統合など、さまざまな知恵が必要なのです。

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著者プロフィール

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小口 泰平

小口泰平
1937年長野県生まれ。工学博士。芝浦工業大学名誉学長、日本自動車殿堂名誉会長。1959年芝浦工…