自動運転は、「車両の運転制御の高質化」と「道路環境改善とその保全」、この両者が不可欠です。前者の確保は技術的には可能な段階に到達しつつありますが、後者は社会システムの課題であり、コトは意外と容易ではないのです。暫くは、自動運転走行が可能な道路に限定した特定の展開となりましょう。
「クルマの未来、自動運転の現在」 小口泰平×清水和夫特別対談
図に示すテーラーメイド運転支援システム(Tailor-made Driving Support System「TDSS」)は、実験室レベルのモデル解析の研究にとどまっていますが、将来的には自動運転のひとつの道となり得る可能性があります。まずは、ドライバー個人の運転特性「加速制御」「操舵制御」「制動制御」などをドライビング・シミュレーターを用いて測定・解析し、運転免許カルテに個人特性として事前に組み込みます。乗車時は、乗車車両に個人の「TDSS」情報を入力し、目的地も入力します。かくして本人確認の後、走行を開始します。走行経路は最速かつ安全・安心の最適ルートを選定し、所要時間が表示されます。このシステムが実現しますと、乗員は自動運転制御に委ね、走る居間として珈琲を飲みながら、ゆったりとテレビでニュースなどを拝見、やがて目的地に到着。これが目指すところです。
なお、レディーメイド運転制御システム(Ready-made Driving Support System「RDSS」) は、既製服のような平均的データに基づく運転制御を意味します。個々人ごとの制御特性を求め、ドライバー特性をグループ化したTDSSを作成し、本体のTDSSを支援します。クルマの安全かつ快適な走行には、このような基本的な制御を軸にして、他車や歩行者そして道路環境、さらには気象条件など、さまざまな走行変数への適合などが必要となります。ヒトの好みや行動は文字通り多岐多様の極みでありますが、実は一定の特性があるのもこれまた事実です。安全・安心の制御行動の世界では、基準や規制が不可欠でして、それを納得し日々つとめるのも、これまたヒトなのです。安全と安心は異質のモノとコトでありながら、人はともに求めるため、納得のゆくシステム創りには、個々人の運転特性の測定とその解析、道路特性と他車対応との統合など、さまざまな知恵が必要なのです。