自動運転予備走行実験<アウトバーンにて>【シン自動車性能論】

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日本の自動車研究の泰斗として数々の研究成果を挙げてこられた小口泰平先生が、21世紀の自動車性能論を書き下ろす。名付けて『シン自動車性能論』である。第7回のテーマは「アウトバーンにおける自動運転予備走行実験」である。
TEXT:小口泰平(OGUCHI Yasuhei)

「自動運転は新たなるモビリティ革命」として夢が広がります。クルマが誕生して以来の最大の変革といえましょう。動力機構の開発などとは次元が異なり、モビリティそのものの「新世界」への歩みでして、かのドボルザークも驚いていることでしょう。

コトは単純ではなく、制御システムとしての塊の如しですから、急がずあわてずに確と参りたいものです。「自動運転の技術開発の難しさは道路環境にあり」なのですから。当面、単純明解な高速道路や限定された市街地ルートに限られましょう。

かつて、自動車技術談義のおり、自動運転についてベルリン工科大学やミュンヘン工科大学の諸氏と話を交わしたのですが、彼らは「クルマは人が運転して走るもの」と頑固一点張りでした。確かにドイツ車の高性能とその爽やかさは魅力的です。でも諦めずに2008年のこと、手段を変えて自動運転技術への取組みを期待し、アウトバーンでの自動運転予備走行実験にミュンヘン工科大学の知人を誘う。

実験合間の話題は「安全とヒトの制御能力の限界」に絞り、喧々諤々。自動運転の難しさを承知している彼らは、研究への参入要請を感じ始めると話を逸らせてしまいます。やはり無理かと。ところが実験後のパーティの席上、ドイツワインとザワークラウトに満足したのか、「ヤルゾー」のひとこと、これには仰天。一旦コトを始めると、新たなテクノに取り組む姿勢は真剣そのもの。「モビリティ テクノ」の新たなる道、その開拓を期待した次第です。

時を経て今日、自動運転の実現を目指すさまざまな技術が開発され、量産化に向けての本格的な始動の時を迎えています。自動運転は、環境保全の基にあればこそのシステムなのです。HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)は、これまでのエンジンと電動モーターの組み合わせ方式で、その多重制御は見事であり複雑です。FCV(燃料電池自動車)は、高度な技術と資源との関わりに課題を秘めています。

EV(電気自動車)は、電動モーター方式の明快なシステムですが、バッテリーの発電能力と小型軽量化が鍵のようです。どうやら自動運転は、特段の変化がない限り、EV方式に向かうのが理のようです。ところで、欧州連合は2035年以後のガソリンエンジン車販売禁止をすでに決定(e-fuelの利用にかぎり認められる)しており、明解かつ効果的な決断と評価されていますが、そのバトンを受け止める次期の動力システムに期待したいです。  

「クルマの未来、自動運転の現在」 小口泰平×清水和夫特別対談

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著者プロフィール

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小口 泰平

小口泰平
1937年長野県生まれ。工学博士。芝浦工業大学名誉学長、日本自動車殿堂名誉会長。1959年芝浦工…