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■ランエボVIIIが2003年ロサンゼルス・オートショーで初披露
2003(平成15)年1月2日から10日間開催されたロサンゼルス・オートショー2003において、三菱自動車が「ランサーエボリューションVIII」の米国仕様を発表。その特徴は、2.0L名機4G63エンジンのチューンアップとスーパーAYC(アクティブヨー制御)の採用により、走りに磨きをかけたことである。
初代ランエボから7代目ランエボVIIまでの進化
初代ランエボは、ギャランVR-4に代わってWRCに参戦するために、「ランサー1600GSR」をベースに1992年に誕生。コンパクトなボディに、高性能の2.0Lターボエンジンと優れた走破性を誇る4WDを組み合わせたラリーマシンは、2500台の限定販売が僅か3日間で完売となる人気を博した。
搭載エンジンは、2.0L直4 DOHC(4G63型)インタークーラー付ターボで、最高出力250ps/最大トルク31.5kgmを発揮、組み合わせるトランスミッションは5MT。駆動方式は、ビスカスカップリング(VCU)をLSDに使ったセンターデフ式フルタイム4WDである。
その後、1994年にホイールベースを100mm拡大した「ランエボII」、1995年には空力性能を向上させた「ランエボIII」に移行、この時点で最高出力は270psに向上。1996年にベースであるランサーのフルモデルチェンジに対応して「ランエボIV」がデビュー。エンジンは、パワーアップして自主規制値280psに達し、AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を採用した。
1998年には、ワイドボディの3ナンバー化した「ランエボV」、1999年には2段リアウィングなど空力特性の改善と冷却性能を向上させた「ランエボVI」に移行。2001年に、ベースのランサーがモデルチェンジして「ランサーセディア」になったため、ランエボもセディアベースの「ランエボVII」へと生まれ変わった。
ランエボは、1993年から“WRCグループA”に参戦、1995年のスウェディッシュラリー初優勝を皮切りに、1990年代後半~2000年代初期にはスバルの「インプレッサWRX」とともに、WRCを席巻する大活躍をした。
エンジンと4WDの進化によって走りを極めたランエボVIII
2003年1月のこの日に発表されたランエボVIIIの特徴は、名機2.0L直4 DOHC(4G63型)ターボエンジンのチューンアップとスーパーAYCの採用。これにより、高性能ターボエンジンと優れた走破性を誇る4WDに磨きをかけたのだ。
一方デザインも刷新され、フロントマスクは通称「ブーレイ顔」に変わった。2000年当時、経営不振に陥っていた三菱は、ダイムラー・クライスラーの傘下に収まっていた。その時、デザインのトップに任命されたのがオリビエ・ブーレイで、彼はフロント中央に富士山型の突起を設けて三菱マークを配する「ブーレイ顔」をランエボVIIIに採用したのだ。ただランエボファンからはあまり評価されなかった。
エンジンは、伝統の2.0L直4 DOHC(4G63型)インタークーラー付ツインスクロールターボを採用。チューンアップによって、最高出力は自主規制値280psのままだが、最大トルクは10kgmアップの40kgmに到達。組み合わせるトランスミッションは、新開発の6速MTおよびスーパークロスの5速MTが用意された。
日本での発売は、同年1月31日から始まり、車両価格は5速MT仕様の「RS」が274.0万円、6速MT仕様の「RS」が316.0万円、6速MTのトップグレード「GSR」は329.8万円に設定された。
ランエボVIIIの走りに磨きをかけたスーパーAYC
AYCは、クルマの旋回性能を向上する「アクティブ・ヨー・コントロール」の略で、デフの油圧を電子制御することで旋回性能とトラクション性能を向上させる電子制御デフのことで、1996年のランエボIVで初めて採用された。最大の特徴は、内輪の駆動力を外輪側に移すことで外側のタイヤを増速させる機構が組み込まれていること。これにより、左右輪に大きな回転差をつけることでヨーを制御し、高いコーナリングスピードを実現できるのだ。
そして、ランエボVIIIで採用されたスーパーAYCは、AYCの性能をさらにレベルアップ。プロペラシャフトの入力部を一般的なベベルギアデフから遊星ギアに変更して、伝達可能トルクを増大。より大きな駆動力を左右輪に伝達できるため、アンダーステアを低減してより安定した旋回性能が実現できるのだ。
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当時の三菱は経営再建中だったためWRC参戦から撤退し、ランエボVIIIがWRCの舞台でその実力を発揮することはなかった。WRCで十分戦える戦闘能力を持っていただけに、その成果を見られなかったのは残念だ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。