HKSはエンジンもチューニングもあきらめない!サスティナブルでもスペックを我慢しない技術を開発中!!【東京オートサロン2025】

2025年1月10日(金)〜12日(日)に幕張メッセ(千葉県)で開催される『東京オートサロン2025』。カスタムカーの祭典だけに、自動車メーカーはもちろんパーツメーカーが多数出典。チューニング界の雄「HKS」ももちろん大々的にブースを展開しているのだが……。

チューニング業界の持続可能性

西ホール1のHKSブースでは、1月10日(金)にプレスカンファレンスが開かれ、株式会社エッチ・ケー・エスの水口大輔代表取締役社長がマイクを握り、ブースコンセプトや出展内容、HKSの技術について解説を行った。

『東京オートサロン2025』のHKSブース。

ブースのテーマは「Tune the Next」。展示内容も新製品も次世代のチューニングを見越したものになっている。HKSはチューニングの持続可能性=サスティナビリティを重視。いわゆる「3R」=Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)を踏まえたブースづくりをしており、ブースの90%は3Rの範囲に収まるという。

プレスカンファレンスでHKSブースのコンセプトや内容を語る水口大輔代表取締役社長。

サスティナブルなど環境問題への対応となると、とかくチューニングとは真逆でネガティブな印象を受けがちだが、HKSのサスティナ技術は然にあらず。むしろ、近未来のチューニングの鍵になる技術だと感じられた。

「THE HKS」最新モデルはR34スカイラインGT-R

HKSは2024年にHKS製のコンプリートカー販売事業「THE HKS」を発表。発表時にはGR86とR35日産GT-Rを展示したが、今回はR34スカイラインGT-Rをベースとした「SKYLINE GT-R BNR34 DIMENSION:Z」を展示した。車両事業の肝となるX/Y/Zの三軸のうち、Z軸を担うモデルだ。

THE HKSのX/Y/Zの3軸のコンセプト。

2ピースピストンを採用した「RB26改3.0Lコンプリートエンジン」に大容量タービン「GT7095_BB」を組み合わせ、最大出力900psを実現。圧倒的ハイパワーを活かすダウンフォースを得るためにリヤには可変式(DRS機構付き)の大型GTウイングを装備するなど、まさに現代的手法でカスタムされたマシンだと言える。

THE HKSのSKYLINE GT-R BNR34 DIMENSION:Z。
SKYLINE GT-R BNR34 DIMENSION:Zのエンジンルーム。3.0LまでスープアップされたRB26改エンジンには「RB30」の文字が。
DRS機構付き大型GTウイングのフラップアップ状態。
DRS機構のリンク模式図。フラップアップ状態。
DRS機構付き大型GTウイングのフラップダウン状態。
DRS機構のリンク模式図。フラップダウン状態。

いきなりサスティナブルとは縁遠そうなチューニングカーの登場かと思いきや、実はこのGT-RにもHKSのサスティナブルなチューニング技術が生かされているという。

スペックを我慢しない次世代サスティナブルチューニング技術

SKYLINE GT-R BNR34 DIMENSION:Zのベース車両は2000年式。初年度登録から25年が経とうとする、今ではすっかりネオヒストリックカーだ。クルマ自体はもちろん、搭載されるRB26エンジンや純正部品も年々枯渇していく一方。HKSはそんなRB26エンジンの、これまで廃棄されてしまったようなものでも再生する技術を開発している。

展示されたRB26エンジンのシリンダーブロック。

それはシリンダー内を破損してしまったエンジンをボーリングしてボアを拡大し、その内側に強化ライナーを打ち込むことで再利用するというものだ。ライナーでシリンダーを再生する技術自体は昔からあるものだが、HKSでは摺動抵抗の減少などノーマル以上の性能を求め素材など様々なアプローチで模索中だという。

再生用のライナーとピストン。

実際、この手法で1300psまでパワーアップしたエンジンをドラッグマシンに搭載して実戦テストを行ったところ、破損は見られなかった。ただ、歪みが発生しており素材も含めて未だ研究開発の余地ありとのことだ。とはいえ1300psの話である。一般的なチューニングレベルであれば十分実用になるのではないかと思われるが、そこはHKSがさらなる高みを目指しているということか。

熱効率を現代エンジンレベルまで引き上げる「アドバンスド・ヘリテージ」

HKSはRBエンジンの再生だけでなく、熱効率を現代のエンジンレベルに引き上げるチューニング技術「アドバンスド・ヘリテージ」も開発中。シリンダーヘッドの加工とオリジナル形状のピストンにより高圧縮化。ピストンだけで14:1〜15:1、シリンダーヘッドで最大17:1という驚きの圧縮比を実現した。

アドバンスド・ヘリテージ仕様のシリンダーヘッド。中央がスパークプラグの電極を覆ったプレチャンバー。

さらに、点火系をプレチャンバー化することで燃焼効率を飛躍的に向上させてノック限界を引き上げ、前述の高圧縮化につなげている。

プレチャンバーの透視モデル。素材や形状、噴射口の数や形状など、より効率の高いものを研究・開発中。

その結果、最大熱効率はベースエンジンの25.5%(市販ハイオクガソリンを使用したHKS STEPチューニングエンジン)から、アドバンスド・ヘリテージ仕様(バイオ系カーボンニュートラル燃料)では37.9%に向上。ベース比では実に1.5倍の熱効率を達成。
WLTC燃費では、ベースエンジンの7.5km/Lからアドバンスド・ヘリテージ仕様では12.2km/Lと、実に62%向上というテスト結果が出ている。

アドバンスド・ヘリテージ仕様のシリンダーヘッドとピストン。ピストンは頭頂部が盛り上がった形状で、圧縮比を高めている。

さらにカーボンニュートラル燃料「CNR FUEL」も開発中

しかも、前述のアドバンスド・ヘリテージ仕様RBエンジンのテストで使用したエンジンはバイオ系カーボンニュートラル燃料なのだが、この燃料も現在開発中だという。開発中のカーボンニュートラル燃料は3種類。バイオエタノールを基本に、既存のガソリンとの混合「CN85 Bio-E85 Plus」、100%バイオエタノール「CN100 Bio-E100」、さらに水を添加した「CN100W Bio-E100+H2O」と、カーボンユートラル度合いが異なる3種類がラインナップ予定となっている。

開発中のバイオエタノール系カーボンニュートラル燃料「CNR FUEL」。

特に「CN100W」は水を添加することで燃焼時の気加熱で燃焼室を冷やすためノッキング対策となり前述の高圧縮化にも有利に働くのだ。
これらのカーボンニュートラル燃料「CNR(Carbon Neutral Racing Fuel)」により、脱二酸化炭素やガソリン価格高騰の時代でも持続可能なモータースポーツ、チューニングを実現していくビジョンを描いている。

単なるEV化ではない、エンジンを生かしたハイエースの電動化「e-HIACE」

e-HIACEの紹介パネル。

世界的なEV化の減速傾向はあれど、HKSは次世代を見据え電動化とエンジン技術の開発を共に進めてきた。その成果が「e-HIACE」として結実しつつある。

「e-HIACE」は前述のカーボンニュートラル燃料とCNGによるバイフューエルエンジンで発電し、モーターで駆動するハイブリッド車。しかも、ノーマルのハイエースからコンバージョンできるシステムだという。

バイフューエルにバッテリーとモーターを加えたHV。

EV用バッテリーの容量は25kW/hで、約150kmのEV走行航続距離を確保。V2H(Vehicle to Home)機能を備え、家庭用やアウトドア、非常用の電源としても利用できる。
もちろん、バイフューエルでのWLTC燃費もガソリンエンジンはもちろんディーゼルを大きく上回ることを目標に開発が進められている。

モーターによるEV走行が基本。
既存車両からのコンバージョンが可能。
e-HIACEの意義とメリット。

多様な燃料に対応しつつEVとしても走行可能。それでいて、ハイエースの機能は変わらないという期待のシステムなのだ。

HKSが目指す持続可能性=サスティナビリティ

エンジンの高効率化など、自動車メーカーが既存エンジンの改良や新エンジンで行うような開発だ。それが、生産終了しているエンジンに対して行われていることはとても喜ばしいことだ。「e-HIACE」にせよ既存車両をコンバージョンすることができることも大きな意義がある。

「アドバンスド・ヘリテージ」や「CNRF」「e-HIACE」について解説する水口社長。

サスティナブルやカーボンニュートラルのために今あるものを全て新しいモノに置き換えることがサスティナブルとは言えなイノではないだろうか。今あるものを現代に即したレベルで活用できるのなら、それは非常に有効であり大事なことだと感じさせるプレスカンファレンスの内容だった。

ロータリーエンジンも展示し、RBエンジンのみに止まらない旧車の持続可能性も示唆していた。

HKSはサスティナブルな社会の実現のために、チューニングや旧車のサスティナビリティ=持続可能性を高める技術を開発中で、それはまさにユーザーのての届くところまで近づいてきている。

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