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15台のBEVを一気に公開! 本気のトヨタはスゴイ
2021年12月14日のトヨタが行なった「バッテリーEV戦略に関する説明会」には、まさかの16台ものバッテリーEV(以下BEV)がずらりと並べられた。まさに圧巻。トヨタの本気と底力をまざまざと見せつけた。
・2030年までに30種類のBEVを展開する。乗用・商用でフルラインアップを揃える。
・2030年にグローバルのBEVの販売台数を350万台/年に引き上げる。
・2030年にレクサスはBEVのフルラインアップを揃え、2035年に100%BEVのブランドになる。
・2022~2030年の9年間に8兆円の投資を行なう(BEVに4兆円。そのうち2兆円は電池開発への投資)。
スケールの大きさにも驚かされたが、豊田章男社長の後方にずらっと並べられたBEVの数に圧倒された。
しかも、多くが2025年までに市場に投入されるというのだ。2025年って、正味であと4年しかないのに、だ。
15台(16台のうち1台はすでに22年央に発売されるbZ4X)の「これから発売する将来のモデル」を世界に見せてしまうことに驚いた。そして、一気に15台ものBEVを開発中であることにたまげてしまった。トヨタは全方位でやっていくと宣言しているわけだから、BEV以外にもHEVやらPHEVやらFCEVやらも開発しているのだ。BEV専業メーカーとは違う。
14日の会見はオンラインで見た。ずらっと並んだBEVは、21年12月31日に閉館される東京・お台場のメガウェブ(MEGA WEB)に展示されていると聞いて12月17日に見に行ってきた。
近寄ってじっくり見たかったのですが、それは叶わず(かなり遠くからしか見られなかった)残念だったが、実際に自分の眼で見ておくことは重要だ。
16台のもBEVを前にして思ったのは、「いかにトヨタでも、この量のモデルは楽々作れないだろう」とくことだ。
久しくメジャーなモーターショーの取材に行くことができなかった(コロナ禍で、開催されないから)が、これまでも1社の自動車メーカーが同時にこれだけの市販前のモデルを見せたことはない。15台ですよ、15台。
15台のうち、どれが市販間近でどれが開発途中で、どれがまだアイデア段階なのか? 実際に見て、そして写真をじっくり分析してみた。
ドアハンドル/サイドビューミラー/充電リッドに注目してみる
MEGA WEBに同行した難波治教授(元スバル・デザイン部長・現東京都立大学教授)に、「これだけのモデルをデザインして、作るのは簡単じゃないですよね?」と訊くと、「当たり前です。スタートからここまで12カ月じゃできませんからね」と言われた。
世界中にあるトヨタのデザインスタジオとその周辺にあるデザイン会社の力を結集したものだろう。トヨタは、フランス・ニースに「EDスクエア」、アメリカ・カリフォルニアに「CALTY(キャルティ)」、上海にもデザインセンターを持っている。もちろん、日本にデザインのヘッドクォーターがある。
実際に見たところ、クレイモデルにフィルムを貼っただけ、といようなモデルは一台もなかった。
16台のうち、bZ4Xは完成している。市販モデルのbZ4Xを100とすると(市販が近いほど100点に近づくとすると)、「レクサスRZ」がもっとも市販に近いモデルと言えそうだ。実際にテストコースを走っている映像も流されたくらいだから。
では、難波教授からのレクチャーを参考にしながら見ていこう。
レクサスRZ:レクサスRXの次期モデル?
Lexus RZ
そもそも、すでに「LEXUS RZ」というモデル名が付いている。北米では「RZ450e」という名前が公表されている。レクサスのSUVで「R」が付くのは、現在は「RX」だ。現行モデルのデビューは2015年だから、そろそろフルモデルチェンジのタイミングを迎える。北米で高い人気を維持しているRXを一気にBEVに変えるのは、かなりの思い切りが必要だから、「RX」と「RZ」が併存するのかもしれない。
RZのプラットフォームは、bZ4Xと同じe-TNGAだろう。RZが市販に近いのは、走っている映像があるからだけでなく、ドアハンドル、サイドビューミラー、そして充電用のリッドの存在などから推測できる。
e-TNGAは、スケーラブルである。おそらくbZ4Xよりサイズが大きいBEVのSUV、そのレクサス版がレクサスRZだろう。
となると、レクサスRZのトヨタ版(bZシリーズ)が、今回「bZ Large SUV」として紹介されたモデルだろう。写真を見比べるとレクサスRZの方が大きそうだが、果たしてどうだろう?
北米で登録されているbZのシリーズのモデル名は
bZ1/bZ1X
bZ2/bZ2X
bZ3
bZ4
bZ5
だから、bZ Large SUVは「bZ5X」となるはずだ。
市販まで時間がかかりそうなのは、このモデルたち
Lexus Electrified SUV
RZより大型のSUV、Lexus Electrified SUV。RZがRX並みのサイズだとすると、このLexus Electrified SUVは、Lexus LX並みの大きさだということになる。レクサスLXはフルモデルチェンジを受けたばかりだから、このBEVの大型SUVの登場はだいぶ先になるのだろうか?
bZ Compact SUV
サイドビューミラー(カメラの場合ももちろんある)とドアハンドル、充電リッドなどを観察しながら、「これはまだ単なるモックアップだな」と思われるのは、次のクルマだ。
bZシリーズでは
・bZ Compact SUVは、まだ市販までは時間がかかりそうだ。
サイドビューミラーは現実的だが、ドアハンドルも充電リッドもない。おそらくモックアップ段階だろう。これは、将来「bZ3」あるいは「bZ2」となるモデルだろう。
・bZ SDN
美しいシルエットを持つ車だが、こちらもモックアップだと推測する。セダン人気は世界的に高くなく、まずはSUVのBEVから手を付けるだろうし、レクサス版の「Lexus Electrified Sedan」(そもそもモデル名がまだ付いていない)も、同じくモックアップ段階だ。bZ SDNは、充電リッドがリヤにあることも注目。今回発表されたモデルで充電リッドがリヤ側にあるのは、「CROSSOVER EV」だけだ。
Lexus Electrified Sedan
CROSSOVER EV
ただし、このCROSSOVER EV、ほかの部分はかなり現実的で単なるモックアップには見えなかった。
bZ Small Crossover
展示されていたbZシリーズのなかでもっともコンパクトなのが「bZ SMALL CROSSOVER」。これが将来の「bZ1」あるいは、「bZ1X」になると予想する。
スポーツBEVはいつ出てくる?
Lexus Electrified Sport
今回の説明会でいくつかBEVのスポーツカー(スポーツBEVと呼ぶのがいいのか)がお披露目された。
Lexus Electrified Sportは、わかりやすくカッコいいデザインだが、充電リッドもないし、ドアハンドルもない。フロントフードにはモータースポーツで使われることがおおいボンネットピンが見える。これは、まだコンセプトカー段階だろう。
SPORTS EV
トヨタ「SPORTS EV」は、コンパクトなスポーツBEVの提案だ。フロントには「GR」のバッヂも見える。ルーフはデタッチャブル(着脱可能)で、サイドビューミラーもドアハンドルも充電リッドもない。おそらくドアも開かないだろう。こういうコンパクトなスポーツBEVの登場はまだ先の話になりそうだ(早く登場してほしいけれど)。
お台場・MEGA WEBに並べられたBEV群は、トヨタの底力、開発力の凄さを充分に感じさせてくれた。しかし、すべてのモデルを同時にデビューさせるのはいかに大トヨタにしても不可能。だとすると、2025年、そして2030、2035年目指してどういう順番で開発を進め、どういう順番で、どの市場に投入していくのか? そこにもトヨタのメッセージが見えるはずだ。
BEVだけでなく、開発の方向性は全方位で全力でやる、と表明したトヨタ。BEVでないモデルも、同じくらい水面下で開発を進めているとしたら(たぶん、そうなのだろう)、やはり、トヨタはスゴイ、と言わざるをえない。