2025欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた「ルノー5 E-Tech electric」と「アルピーヌA290」が日本にマッチするワケは?

2025 欧州カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたアルピーヌA290(左)とルノー5 E-Tech electric
2025年1月に発表された欧州カー・オブ・ザ・イヤー。イヤーカーに選ばれたのはルノー5(サンク)E-Tech electricと、同じAmpRプラットフォームに則りながら走りを磨きあげたアルピーヌA290だった。コンパクトなBEV(電気自動車)としての基本性能、そしてサンクというヘリテージを十分に活かしたスタイリングなどが高く評価されたことは間違いない。日本導入の正式なアナウンスが待ち焦がれるばかりとなる2台の魅力を、あらためて確認してみたい。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:Renault

電気自動車の激戦区、欧州で最高級に評価されたBセグメントモデル

日本と同じ右ハンドルとなるイギリス仕様のスターティングプライスは22,995ポンド(約440万円)。

2025 欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのは「ルノー5(サンク)E-Tech electric」と、そのホットモデルといえる「アルピーヌA290」。2台の電気自動車(BEV)だ。

ルノーグループは、2年連続欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞という快挙を達成したことになる。

BEVをリードしてきた欧州の自動車市場ゆえにカー・オブ・ザ・イヤーの最終候補となったモデルも個性的なBEVが揃っていた。たとえば、日本でも発表されたばかりのヒョンデ・インスターのほか、シトロエンえ-C3などがファイナリストに名を連ねていた。コンパクトなBEVというだけで評価されるような環境ではない。そもそも欧州カー・オブ・ザ・イヤーでは2011年に日産リーフがイヤーカーに選ばれている。もはやBEVというだけで評価される賞ではないといえる。

また、欧州においてBEVの販売は縮小している…というイメージを持っているかもしれないが、BEVがオワコンと思うのは間違いといえるだろう。実際、欧州31か国における2024年のBEV販売台数は199万台以上となっている。たしかに前年比でいえばマイナス1.3%と微減しているが、乗用車販売の9台に1台はBEVというのが現実だ。

そんなBEV激戦区においてイヤーカーとなったのが、ルノー5 E-Tech electricであり、アルピーヌA290である。まだ日本導入は検討段階であり未上陸の2台だが、その実力は折り紙つきといえるだろう。

後ろ姿にもルノーのヘリテージが感じられる。歴史と伝統をBEVらしさに融合したスタイリングだ。

バッテリーは2タイプ、日本にマッチするボディサイズで軽量なのも魅力

思い返せば、ルノー5 E-Tech electricの世界初公開は、2024年2月26日のジュネーブモーターショーだった。

名前からもわかるように、スタイリングのモチーフは1980年代に日本でも人気を博したルノー5、同社のヘリテージをビンビンに感じさせるエクステリアだ。そしてE-Tech electricはBEVであることを示している。全長4m以下、全高1.5mに届かないボディは、まさしくBセグメントの王道といえるサイズ感となっている。そんなわけで、ジュネーブショーのときから日本でも使いやすそうな、コンパクトBEVとして注目したい一台となった。

ルノーのAmpRスモールプラットフォームに基づく最初のクルマが、ルノー5 E-Tech electricだ。

簡単にルノー5 E-Tech electricのメカニズムやテクノロジーを整理してみよう。

基本となるプラットフォームは、BセグメントのBEVモデルに最適化したAmpRスモールプラットフォームを採用、駆動輪はフロント、バッテリーはキャビンの床下にレイアウトされる。さらにV2Gに標準対応するのも、このプラットフォームの特徴となっている。

ルノー5 E-Tech electricは当プラットフォームによる最初のモデルであり、すなわちルノーの考えるBEV時代における理想のコンパクトカー像を示すものだと理解できる。

バランスによいデザインや性能も、2025欧州カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた理由のひとつだろう。

日本導入が検討されている仕様のスペックを紹介すると、全長は3920mmで全幅が1770mm、全高が1500mm。ホイールベースは2540mmで、駆動方式は前輪駆動となっている。

搭載される駆動用バッテリーの総電力量は40kWhと52kWhの2種類があり、駆動用モーターの型式は共通となっているが、40kWhバッテリー車のスペックは最高出力70kW・最大トルク215Nm、52kWhバッテリー車では最高出力110kW・最大トルク245Nmと発表されている。

全長:3920mm、全幅:1770mm、全高:1500mm、ホイールベース:2540mm *主要諸元はすべて欧州仕様値

注目すべきは車両重量で、40kWhバッテリー車の最軽量グレードで1350kg、52kWhバッテリー車でも1450kgとなっている。BEVといえばバッテリーを多量に積んだ重量級ボディであることが多いが、ルノー5のイメージ通りに軽量なハッチバックに仕上がっているのだ。

近距離ユースが多いのに、多量なバッテリーを積んでいるのは、いろいろな意味で”無駄遣い”といえる。必要十分なバッテリーに抑え、むしろ軽量に仕上げることでモーター駆動らしいキビキビ感も味わいやすくなるだろう。こうした設計も日本の市街地ユースとの相性がよさそうといえる理由だ。

アルピーヌA290は最高出力160kW。最大トルク300Nmとなる

アルピーヌのロゴが大きく入ったステアリングなどコックピットの仕上がりは別物だ。

BセグメントのBEVとして、ど真ん中の性能を持つルノー5 E-Tech electricを、スポーツパフォーマンスよりに仕上げたのがアルピーヌA290といえる。基本となるアーキテクチャーがAmpRスモールプラットフォームで共通となっていることもあって、2025の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを同時受賞した。

じつは初代ルノー5にもアルピーヌの名を冠したスポーツバージョンがあったことを覚えているファンも少なくないだろう。そうした伝統を思い出させる、アルピーヌA290は、まさにハイパフォーマンスなコンパクトBEVとして仕上がっている。

全長:3990mm、全幅:1820mm、全高:1520mm、ホイールベース:2530mm *主要諸元はすべて欧州仕様値

パフォーマンスアップのポイントはモータースペックにある。

A290のエントリーグレードで最高出力130kWとなり、最上級グレードでは最高出力160kWまでパワーアップしている。いずれもバッテリー総電力量は52kWh仕様で、最高出力160kWのグレードでも一充電で350km以上を走ることができるというから実用性も兼ね備えたスポーツモデルといえそうだ。

さらに専用19インチホイールの中にブレンボ製ブレーキが確認できるグレードも設定されている。インテリアも専用デザインとなっており、所有欲を満たしてくれるBEVホットハッチとなること確実といえる。

日本独自の急速充電インフラへの対応などローカライズに時間がかかるのは理解できるが、ルノー5 E-Tech electricとアルピーヌA290どちらも日本上陸が待ち遠しいと感じているファンは少なくないだろう。

アルピーヌにロゴが大きく入ったステアリングなどコックピットの仕上がりは別物だ。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…