スバル・フォレスター 1.8ℓターボ搭載グレードとe-BOXERを比べてみる。ターボは「ハード目なエクササイズを、息を乱さず平然とこなす高い心肺能力の持ち主」だ

スバル・フォレスター SPORT 車両価格○328万9000円
フォレスターにもレヴォーグが搭載している1.8ℓ水平対向4気筒直噴ターボ(CB18型)搭載グレードがある。つまりフォレスターはe-BOXERと1.8ℓターボの2本立てなのだ。1.8ℓターボをロングドライブしたうえで、両車を比較してみよう。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
燃費は旧グレードの2.5ℓ車が13.2km/ℓなのに対してe-BOXERは14.0km/ℓ、CB18搭載のSPORTは、13.6km/ℓ。車重はe-BOXERの方が1.8ℓターボより70kg重い。

2018年6月にデビューした第5世代フォレスターに、1.8ℓ直噴ターボエンジン搭載グレードが追加されたのは2020年10月22日のことだ。スバルはターボエンジン搭載グレードの設定に合わせてラインアップを見直した。従来はFB25型の2.5ℓ自然吸気エンジンと、FB20型の2.0ℓ自然吸気エンジン(すべて水平対向4気筒である。以下同)に最高出力13.6ps(10kW)、最大トルク65Nmのモーターを組み合わせたe-BOXER(イー・ボクサー)を設定していた。

1.8ℓ直噴ターボエンジン搭載グレードの導入に合わせ、2.5ℓ自然吸気エンジン搭載グレードを廃止。e-BOXERと1.8ℓターボの2本立てなっている。従来の価格設定は2.5ℓ自然吸気<e-BOXERだったが、現在はe-BOXER<1.8ℓターボになっている。つまり、1.8ℓターボはハイブリッドよりも上位の位置づけ。e-BOXERはTouring、X-BREAK、Advanceの3グレードを設定し、価格は291万5000円〜315万7000円(税込)。1.8ℓターボはSPORTの単一グレードで328万9000円(税込)だ。

フォレスターは、2021年8月に大幅改良を受けている。改良点は、スバルのデザインコンセプト「DYNAMIC×SOLID」をより進化させる「BOLDER」思想を取り入れたフロントフェイスや新デザインのアルミホイールで、イメージを一新した。走行性能では全グレードで足まわりを改良し、しなやかさとスポーティさを高い次元で両立。さらにアダプティブ変速制御「e-アクティブシフトコントロール」が、e-BOXER搭載車全グレードに拡大展開された点も新しい。

安全性能では、「新世代アイサイト」を搭載。ステレオカメラの広角化やソフトウェアの改良で、これまで以上に幅広いシーンで安全運転をサポートする。

試乗したのは、マイナーチェンジ前のモデル、SPORT(現行モデルでは車両価格330万円)である。

フォレスターは後席の居住性、乗り心地も上々。ターボモデルにもその美点はそのまま受け継がれている。

1.8ℓターボは2020年10月に発表された第2世代レヴォーグに合わせて開発されたものだ。CB18のエンジン型式名が示すように、完全新開発である。狙いは「もっと走る」ようにすることだった。何に対してかといえば、初代レヴォーグが積んでいた1.6ℓターボエンジン(FB16DIT)に対してだ。初代レヴォーグ1.6ℓターボエンジン搭載車ユーザーの要望に応える形で開発したのがCB18である。

「走る」と感じてもらうために、トルクを上げにいった。FB16DITの最高出力は170ps(125kW)だったのに対し、CB18の最高出力は177ps(130kW)で、7ps(5kW)しか向上していない。ところが、最大トルクは250Nmから300Nmへと、50Nmも向上させた。そこがポイントだ。CB18を開発した技術者は次のように説明する。

e-BOXERは48ℓ、対するターボモデルは63ℓだ。グランツーリスモとしての能力は圧倒的にターボだ。

「誰が乗っても疲れないのがコンセプト。信号で加速するとか、右折した際にちょっと加速するとか、高速道路の合流で速さを競うわけではなく、ストレスなく流れに乗ることがテーマ。アクセル全開の馬力は買ってから一度も使わないお客様がいるかもしれません。でも、トルクは毎日使ってもらえます」

そんな狙いで新型レヴォーグのために開発した1.8ℓターボエンジンは、フォレスターとどんな相性を見せるのか。まずはフォレスターに設定されている1.8 ℓターボとe-BOXERの主なスペックを比較しておこう。組み合わせるトランスミッションは、どちらもCVTだ。

エンジン形式:水平対向4気筒DOHC エンジン型式:CB18 排気量:1795cc ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm 圧縮比:10.4 最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm 最大トルク:300Nm/1600-3600rpm 過給機:ターボ 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:63ℓ

エンジン:CB18
排気量:1795cc
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
WLTCモード燃費:13.6km/ ℓ

フォレスター Touring/X-BREAK/Advance

エンジン形式:水平対向4気筒DOHC エンジン型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4000rpm 過給機:× 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:48ℓ モーター:MA1型交流同期モーター(13.6ps/65Nm)

e-BOXER:FB20+モーター
排気量:1995cc
最高出力:145ps(107kW)/6000rpm
最大トルク:188Nm/4000rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:65Nm
WLTCモード燃費:14.0km/ ℓ

CB18の1.8 ℓターボとe-BOXERの2.0 ℓ自然吸気+モーターのスペックを比較してみると、後者はだいぶ見劣りがする。しかし、過去にe-BOXERを試乗した際の記憶を引っ張り出してみると、必要にして充分という印象だった。少なくとも、「物足りない」とは感じなかったし、「思ったように力が出てこなくてイライラする」からと、思わずアクセルペダルを踏み増してエンジンをブイーンと吹かすようなシーンはなかった。「2.0ℓ自然吸気なのに(モーターのアシストがあるとはいえ)意外とよく走るな、このエンジン」という印象である。

1.8ℓターボを積んだフォレスターSPORTは、拍子抜けするほどフツーに走る。乗り込んでアクセルペダルを踏んだ瞬間に、感嘆の声を挙げたくなるような、獰猛なまでの力強さを披露するわけではない。ただ淡々と、ドライバーが期待しただけの力を出してくれる。低い回転域で充分な力を出してくれるので、エンジンやトランスミッションが発するノイズとも無縁だ。本当に、淡々と走る。

それでエキサイトメントに欠けるかというとそんなことはなく、足の裏とエンジンがダイレクトにつながっている感覚はある。右足の動きに忠実に反応して素直に力を出してくるのが心地いい。だから、ドライバーとエンジン(あるいはクルマ)の対話が成立し、運転が楽しい。反応が遅くもなく、急激に出るでもないので、疲れない。

フォレスターSPORTの試乗は、金沢駅(石川県)を起点に能登半島を北上し、輪島で折り返して富山市内を経由。北陸自動車道〜上信越自動車道〜関越自動車道〜外環道〜首都高速を経由して、スバルの本社がある東京・恵比寿に向かうルートをたどった。全行程は約700kmで、この700kmを同じエンジンを積むレヴォーグと乗り換えながら移動した。

同じエンジンを積む2台のキャラクターの違いは別のレポートでご確認いただくとして、開発にあたった技術者が言ったように、高速道路で合流するようなシーンで頼もしさを感じる。いや、実際のところは運転しながら「頼もしい!」と感じるわけではない。振り返ってみれば、ストレスを感じていなかったことに気づく。

山道を駆け上がっていくようなシーンにしてもそうだ。力がモリモリ湧いてきて頼もしいとは、運転しているときには感じない。後でドライブを振り返ってみて、「そういえば、なんのストレスも感じなかったな」と気づくのである。普通の人が肩で息をするようなエクササイズを、息を乱さず平然とこなしてしまう高い心肺能力の持ち主。1.8ℓターボエンジンを積んだフォレスターSPORTはそんなイメージだ。

スバル・フォレスター SPORT
全長×全幅×全高:4625mm×1815mm×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式
エンジン
エンジン形式:水平対向4気筒DOHC
エンジン型式:CB18
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
過給機:ターボ
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:63ℓ
トランスミッション:チェーン式CVT(リニアトロニックCVT)

WLTCモード:13.6km/ℓ
市街地モード10.3km/ℓ
郊外路モード14.3km/ℓ
高速道路モード15.2km/ℓ
車両価格○328万9000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…