SKYACTIV-Zは新型CX-5に搭載されて2027年登場! マツダの明日を切り拓く「ライトアセット戦略」とは?

将来的に電動化の時代がやってくるのは間違いないものの、バッテリーEVの普及にブレーキがかかっている今、自動車メーカーは多様な電動パワートレインを用意せざるを得ないご時世だ。トヨタのような巨大企業ならば全方位戦略で対応できるものの、自称「スモールプレーヤー」のマツダにはいささか苦が重い...。そこでマツダが掲げたのが「ライトアセット戦略」だ。自前の資産を有効活用しつつ、他社との協業による効率化も図ることで、電動化のマルチソリューションを実現していく。

「ものづくり革新2.0」を推し進め、SKYACTIV-ZとバッテリーEVを2027年投入

マツダは3月18日に「ライトアセット戦略」を発表した。「アセット」とは資産のこと。マツダは2030年までを「電動化の黎明期」と位置づけていて、マイルドハイブリッドやストロングハイブリッド、プラグインハイブリッド、そしてバッテリーEVを適材適所で展開するマルチソリューションで電動化に対応することとしている。そうした多様な電動化技術を実現するのには膨大な労力を必要とするが、それらをすべて自社で賄うのは、“スモールプレーヤー”(自称)のマツダにとっては荷が重い。

そこでマツダは、他社との協業を活用して効率的な技術開発を行ないつつ、できる限り自社の既存の資産を活用することで競争力を確保することを目論んでいる。それがライトアセット戦略だ。

説明会に登壇されたマツダ首脳陣。右から毛籠勝弘 代表取締役社長兼CEO、廣瀬一郎 取締役専務執行役員兼CTO、梅下隆一 常務執行役員電動化推進担当、弘中武都 常務執行役員 生産技術・グローバル品質・カーボンニュートラル・コスト革新担当。

ライトアセット戦略に基づくマツダの取り組み

・「マツダ ものづくり革新2.0」の推進
2015年から取り組んでいる、マツダ独自の開発・生産プロセスの進化形「マツダ ものづくり革新2.0」をさらに推し進めていく。バッテリーEVからエンジン車までの開発・生産を一括企画するほか、ユニット単位だったモデルベース開発(MBD)を、AI活用により車両全体のモデル化へ拡張し、さらにJAMBEなどとの共創により、サプライチェーン全体にも適用する。また、生産プロセスにおいても混流生産ラインにAGV(無人搬送車)を導入し、需要変動に対する柔軟性を確保する。

・SKYACTIV-Z
マツダファンやクルマ好きにとって、気になるのはこの新世代エンジンだろう。形式は2.5L直列4気筒でユーロ7や米国LEV4などの排出ガス規制に適合し、ハイブリッドシステムとの組み合わせにより高効率な燃焼を実現。次期CX-5に搭載されて、2027年に導入される予定だ。また、SKYACTIV-Zの燃焼技術は、ラージ商品向けの直列6気筒エンジンやロータリーエンジンにも応用されるという。一方で、SKYACTIV-Zの導入に伴い、エンジンユニット数は半数以下に集約する。

バッテリーEV
自社開発のバッテリーEVは2027年導入予定。日本国内で生産し、グローバル市場に展開する。プラットフォームは自社開発。日進月歩の電池技術の動向を踏まえ、さまざまなタイプの電池を搭載できて、車型の多種展開も可能というフレキシビリティの高さが特徴だ。

ライトアセット戦略で見込まれる効果は?

・電動化投資の最適化:2022年に発表した2030年までの電動化投資1.5兆円は、インフレ影響で2兆円規模となる見込みだったが、電池投資の最適化により、総額1.5兆円程度に抑制。電池投資に関しては、全量自前調達の想定だったが、協業を活用することで7500億円規模から半減。

・「マツダ ものづくり革新2.0」の推進:開発プロセスを効率化し、既存リソースの維持を前提としながら生産性を3倍向上。

・バッテリーEVの開発と生産最適化:2027年導入予定のバッテリーEVについて、協業を活用することで開発投資を40%、開発工数を50%削減。また、既存生産ラインを活用することで、専用工場を新設する場合と比較して初期設備投資を85%、量産準備期間を80%削減。

・高資産効率と持続的成長:低投資で高い資産効率を確保し、競争力のある技術・商品を提供。資本コストを上回るリターンを創出し、持続的な成長を実現。

このように、マツダの電動化/知能化は「ライトアセット戦略」と「マツダ ものづくり革新2.0 」に基づいて着々と進行される。それと同時に、「走る歓び」を追求していくことも忘れないとマツダは宣言してくれたのは、クルマ好きにとってはうれしい限りだ。

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