日産「リーフ」リチウムイオン電池の容量保証を13年に開始、保証対象は5年or走行距離10万km以内のどちらか早い方【今日は何の日?6月7日】

日産「リーフ」の電池計
日産「リーフ」の電池計
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月7日は、日産自動車が電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池容量保証を開始したことを発表した日だ。保証の対象となるのは、満充電時に5年または10万kmの範囲内でメーターパネル内のバッテリー容量計が9セグメント(初期は12セグメント)を割り込んだ場合、日産が無償でバッテリーを修理、交換するというものである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 新型リーフのすべて

■リーフのバッテリー容量の保証をスタート

日産「リーフ」
日産「リーフ」

2013(平成25)年6月7日、日産自動車は2010年から発売を始めた「リーフ」のリチウムイオン電池のバッテリー容量保証を5月31日より開始したことを発表した。バッテリー容量保証は、満充電時に5年または10万kmの範囲内でバッテリー容量計が9セグメントを割り込んだ場合、無償でバッテリーを修理または交換するというもの。

ガソリン車の部品の保証期間は、3年/6万kmまたは5年/10万km

2010年12月に発売された日産「リーフ」
2010年12月に発売された日産「リーフ」

クルマには、構成部品に不具合が起きたときに、保証書に記載されている期間と条件に従って無料で修理が受けられるメ―カー保証がある。メーカーの責任だから、メーカーが無償で修理、交換するということであり、基本的には各メーカーはほぼ同じ保証対応を実施している。

「リーフ」の車両構造
「リーフ」の車両構造。フロントにモーター、床下にバッテリー

メーカー保証には、一般保証と特別保証の2種類がある。

・一般保証
基本的には、ほとんどの自動車部品が保証対象となる。ただし、消耗部品(点火プラグ、フィルター類、電球など)や油脂類(オイルなど)、別扱い保証部品(タイヤ、バッテリーなど)は対象外。保証期間は登録日から3年間、または3年以内でも走行距離6万kmが過ぎると保証は終了する。

・特別保証
走行性能や安全性能、環境性能に関わる特に重要な部品が対象。例えば、エンジンやステアリング、サスペンション、排ガス浄化システム、シートベルトなどが該当する。保証期間は登録日から5年間、または5年以内でも走行距離10万kmで終了となる。

リチウムイオン電池モジュール(セルの集合体)
リチウムイオン電池モジュール(セルの集合体)
ラミネート型リチウムイオン電池セル
ラミネート型リチウムイオン電池セル

バッテリーについては別扱い保証で、それぞれのバッテリーメーカーが定めた保証基準に従って保証される。一般的な鉛バッテリーの保証期間はメーカーや種類によって異なるが、アイドルストップを採用して頻繁に起動・停止を繰り返すものは1.5年/走行距離3万km、アイドルストップなしで3年/6~10万kmといったところである。

「リーフ」搭載の24kWhのバッテリーパック
「リーフ」搭載の24kWhのバッテリーパック。ラミネート型リチウムイオンセルを192個並列に接続
日産「リーフ」の電池計
日産「リーフ」の電池計

EVのリチウムイオン電池の劣化要因

EVのリチウムイオン電池の劣化は、さまざまな要因で引き起こされる。

日産「リーフ」
日産「リーフ」

・時間経過による劣化:ほっといても時間が経過すると劣化する。
・高温・低温での使用:高温と低温で劣化が進行、それを抑えるためバッテリー本体の温度管理を行なっている。
・高電圧・低電圧での劣化:100%充電やカラになることを避け、バッテリーの充電状態を適切な範囲で制御している。
・機械的なストレス:振動や衝撃などで劣化するので、バッテリーは堅牢なケースで保護されている。

劣化が進行すると、満充電時のバッテリー容量(蓄えられる電気量)が減少するので、航続距離が短くなってしまう。この状態をできるだけ避けるように、メーカーは上記のように充電方法やバッテリーの管理を徹底的に行ない、一方でユーザーも使い方に留意することが大切だ。

EVのリチウムイオン電池のメーカー保証

2代目リーフ
リーフは2017年に2代目へ。そして2025年に3代目が登場と発表されている
2代目リーフ
リーフは2017年に2代目へ。そして2025年に3代目が登場と発表されている

EVの開発においては、リチウムイオン電池のエネルギー密度(容量)を向上させるとともに、劣化を抑制することが非常に重要である。高いエネルギー密度であっても、劣化が大きければ使い物にならない。したがって、劣化を抑制しつつ、メーカーとしてはユーザーに安心してEVを使ってもらうために適切な保証期間を設定しなければならない。

2代目リーフのコクピット
2代目リーフのコクピット

2010年4月に発売された三菱「i-MiEV」、同年12月に発売された日産「リーフ」とも、発売当初保証期間は設定されなかった。まだ十分な市場実績がなかったので、どのようなスピードで劣化が進行するのかが統計的に把握できておらず、また当初はまだユーザーの走行距離も短いので補償について設定する必要がなかったのだ。

2代目リーフ、パワートレーンの構造と配置
2代目リーフ、パワートレーンの構造と配置

そして市場の劣化データが十分分析され、市場のEVのバッテリー劣化がある程度進んだであろう時期、2013年5月31日から保証期間の設定を始めた。具体的には、満充電時に5年または10万kmの範囲内でメーターパネル内のバッテリー容量計が9セグメント(初期は12セグメント)を割り込んだ場合、日産が無償でバッテリーを修理または交換するというもの。容量計の9セグメントは、バッテリー容量で30%程度の低下(具体的な数値は公表されていない)に相当すると推察される。

2015年12月のマイナーチェンジで航続距離が延び、保証期間は8年または走行距離16万kmへと延長
2015年12月のマイナーチェンジで航続距離が延び、保証期間は8年または走行距離16万kmへと延長

その後、バッテリーの改良が進み、2015年12月のマイナーチェンジで航続距離が延び、保証期間は8年または走行距離16万kmへと延長された。現在は、他の国内メーカーのEVもこの保証期間とほぼ同じ設定をしている。なお、バッテリーを有償で交換する場合は24kWh:65万円、30kWh:80万円、40kWh:82万円(2018年時点)とされているので、保証期間の延長はユーザーにとっては大変ありがたい。

初代リーフのパトカー仕様
おまけ! 初代リーフにはパトカー仕様も♪

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上述のように、2025年現在のリーフのバッテリーの保証期間は8年、または16万kmに設定されている。一方、保証期間を超えた場合に有償でバッテリーを交換するユーザーはほとんどいないらしい。高額のバッテリーを交換してまで乗り続ける人はほとんどいなくて、EVはバッテリーの寿命が来た時にクルマの寿命と考える人がほとんどなのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…