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■ハイオーナーカーのラストを飾った8代目ローレル

1997年(平成9)年6月23日、日産自動車はハイオーナーカーとして誕生した「ローレル」のシリーズラストモデルとなる8代目(C35型)を発売した。ブルーバードとセドリックの中間のミドルクラスの上級車として誕生し、先進技術を採用しながら進化を続けたが、この8代目がシリーズ最後のモデルとなった。

日本初のハイオーナーカー初代ローレル(C30型)
1968年4月、日産は「ブルーバード」と「セドリック」の中間に位置するアッパーミドルセダンのローレルを、“ハイオーナーカー”というキャッチコピーを掲げて市場に投入した。ハイオーナーカーには、ライトバンのような商用車を設定しない純粋なオーナーカーであることを強調する意味合いがあったのだ。

ブルーバードで採用された“スーパーソニックライン”を踏襲した直線基調のスタイリングに、サスペンションはブルーバードと同じフロントがマクファーソン・ストラット、リアがセミトレーリングアームの4輪独立懸架、さらに国産車初のラック・ピニオンのステアリング機構を採用。パワートレインは、最高出力100ps/最大トルク15kgmを発揮する1.8L直4 SOHCのエンジンと、3速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ。

また1970年には、ライバルトヨタ「コロナマークII」に対抗するため、日産初のピラーレスハードトップを追加。コロナマークIIには後れを取ったが、日産の人気モデルとなった。
2代目~7代目までの歴代ローレルの軌跡


・2代目(C130型:1972年~)
プラットフォームが4代目「スカイライン」と共通となり、スタイリング全体の雰囲気もケンメリ風になった。4ドアセダンと2ドアハードトップが用意され、2ドアハードトップはビルドインされたリアコンビランプを採用した独特のリアデザインから“ブタケツ”の愛称で親しまれた。歴代ローレルで最高の販売台数を誇った。

・3代目(C230型:1977年~)
高級車をイメージさせる重厚なスタイリングとなり、さらに豪華で落ち着いたインテリアが本来のハイオーナーカーの性格を強めた。


・4代目(C31型:1980年~)
2代続いたアメ車風デザインから一転、空力を意識したスラントノーズを採用した直線基調の欧州車風スタイリングに変更。流線型に生まれ変わったデザインは“アウトバーンの旋風”と称された。

・5代目(C32型:1984年~)
欧州車風から再びアメ車風の押し出しの強いスタイリングに戻った。ハイソカーブームが盛り上がりを見せる中で、期待したほど販売を伸ばすことができなかった。

・6代目(C33型:1989年~)
バルブ絶頂期の真っ只中に登場し、全体として落ち着いた大人の上質な4ドアセダンに仕上げられ、バブル好景気の後押しもあり人気を獲得した。

・7代目(C34型:1993年~)
3ナンバーボディで居住性が高められ、さらなる上級化を図ったが、市場はバブル崩壊の影響で豪華なセダンではなく、より実用的なRVなどを求めるようになり人気は下降した。

ラストローレルとなった8代目

1997年6月のこの日、ローレルのラストモデルとなった8代目(C35型)がデビュー。先代同様4ドアハードトップのみの設定で3ナンバー化して、スポーティ仕様の“クラブS系”とラグジュアリーな“メダリスト系”の2種が用意された。


クラブS系は、ブラック塗装のハニカム状グリルとクリアカバーの中に丸目4灯のヘッドライトを組み合わせた精悍な印象。一方のメダリスト系は、外周部にメッキを施した斜め桟グリルとマルチリフレクターヘッドライトを組み合わせラグジュアリーさを強調。また、ゾーンコンセプトと呼ばれる衝撃吸収ボディで、安全性が飛躍的に高められた。

エンジンは、最高出力235psを発揮する2.5L直6 DOHCターボを筆頭に、200psのそのNAエンジン、155psの2.0L直4 DOHC NA、さらに100psの2.8L直4 SOHCディーゼルの4種。組み合わせるトランスミッションは、電子制御4速ATのみ、駆動方式はFRをベースにアテーサシステムを搭載した4WDも設定された。

車両価格は、2WD仕様の2.0L NAエンジン搭載の標準グレードが225.5万円(クラブS系)/226.0万円(メダリスト系)。当時の大卒初任給は、19.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約266万円/267万円に相当する。
ラストモデルに相応しいハイオーナーカーの8代目ローレルだったが、厳しい市場環境のため販売は伸びず、残念ながら2003年に生産を終了した。
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人気のブルーバードとスカイラインの狭間で先進の技術を搭載しながらも、サーキットやラリーで活躍することもなく、上品だが何となく地味な存在だったローレル。ハイオーナーカーを目指したが、そこにはハイソカーのマークIIがいた。そんな過少評価されたローレルに、何となく愛着を感じてしまう。
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