日産“ハイオーナーカー”「ローレル」よ、さようなら(涙)…C35型ラストモデルは約225万円【今日は何の日?6月23日】

日産8代目「ローレル」
日産8代目「ローレル」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月23日は、日産自動車のアッパーミドルセダン「ローレル」の8代目(C35型)が誕生した日だ。1968年のデビュー以来、日本初のハイオーナーカーとして長く人気を集めていたが、8代目をもって35年の歴史に幕を下ろした。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 新型ローレルのすべて、80年代日産車のすべて

■ハイオーナーカーのラストを飾った8代目ローレル

日産8代目「ローレル」
1997年にデビューした8代目(C35型)「ローレル」

1997年(平成9)年6月23日、日産自動車はハイオーナーカーとして誕生した「ローレル」のシリーズラストモデルとなる8代目(C35型)を発売した。ブルーバードとセドリックの中間のミドルクラスの上級車として誕生し、先進技術を採用しながら進化を続けたが、この8代目がシリーズ最後のモデルとなった。

8代目(C35型)「ローレル」のリアビュー
8代目(C35型)「ローレル」のリアビュー

日本初のハイオーナーカー初代ローレル(C30型)

1968年4月、日産は「ブルーバード」と「セドリック」の中間に位置するアッパーミドルセダンのローレルを、“ハイオーナーカー”というキャッチコピーを掲げて市場に投入した。ハイオーナーカーには、ライトバンのような商用車を設定しない純粋なオーナーカーであることを強調する意味合いがあったのだ。

初代(C30型)「ローレル」
1968年に誕生した初代(C30型)「ローレル」。“ハイオーナーカー”というキャッチコピーで登場

ブルーバードで採用された“スーパーソニックライン”を踏襲した直線基調のスタイリングに、サスペンションはブルーバードと同じフロントがマクファーソン・ストラット、リアがセミトレーリングアームの4輪独立懸架、さらに国産車初のラック・ピニオンのステアリング機構を採用。パワートレインは、最高出力100ps/最大トルク15kgmを発揮する1.8L直4 SOHCのエンジンと、3速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ。

初代(C30型)「ローレル」
1968年に誕生した初代(C30型)「ローレル」。“ハイオーナーカー”というキャッチコピーで登場

また1970年には、ライバルトヨタ「コロナマークII」に対抗するため、日産初のピラーレスハードトップを追加。コロナマークIIには後れを取ったが、日産の人気モデルとなった。

2代目~7代目までの歴代ローレルの軌跡

2代目(C130型)「ローレル
1972年にデビューした2代目(C130型)「ローレル(ハードトップ)」のリアビュー(通称:ブタケツ)
2代目(C130型)「ローレル
1972年にデビューした2代目(C130型)「ローレル(ハードトップ)」のリアビュー(通称:ブタケツ)

・2代目(C130型:1972年~)
プラットフォームが4代目「スカイライン」と共通となり、スタイリング全体の雰囲気もケンメリ風になった。4ドアセダンと2ドアハードトップが用意され、2ドアハードトップはビルドインされたリアコンビランプを採用した独特のリアデザインから“ブタケツ”の愛称で親しまれた。歴代ローレルで最高の販売台数を誇った。

3代目ローレル 2ドアハートトップ 2000SGL-E
3代目ローレル 2ドアハートトップ 2000SGL-E

・3代目(C230型:1977年~)
高級車をイメージさせる重厚なスタイリングとなり、さらに豪華で落ち着いたインテリアが本来のハイオーナーカーの性格を強めた。

1980年にデビューした4代目(C31型)「ローレル」
1980年にデビューした4代目(C31型)「ローレル」
4代目ローレル ジバンシィバージョン
4代目ローレル ジバンシィバージョン/大丸創業家として知られる下村家当主の12 代 下村正太郎氏の愛車で、1983年のジバンシィ30 周年回顧展の際に、下村氏と懇意だったジバンシィ氏本人と、初来日だった女優オードリー・ヘップバーンを乗せて、伊丹空港と当時の下村邸(京都「大丸ヴィラ」)の間を送迎した逸話をもつ特別な個体

・4代目(C31型:1980年~)
2代続いたアメ車風デザインから一転、空力を意識したスラントノーズを採用した直線基調の欧州車風スタイリングに変更。流線型に生まれ変わったデザインは“アウトバーンの旋風”と称された。

5代目ローレル 4ドアハードトップ ターボ メダリスト エミネンス
5代目ローレル 4ドアハードトップ ターボ メダリスト エミネンス/画像のクルマは170psを発生するVG20ET型エンジンを搭載、電動格納式ドアミラーやオートワイパーも標準装備の最上級車

・5代目(C32型:1984年~)
欧州車風から再びアメ車風の押し出しの強いスタイリングに戻った。ハイソカーブームが盛り上がりを見せる中で、期待したほど販売を伸ばすことができなかった。

1989年にデビューした6代目(C33型)「ローレル」
1989年にデビューした6代目(C33型)「ローレル」

・6代目(C33型:1989年~)
バルブ絶頂期の真っ只中に登場し、全体として落ち着いた大人の上質な4ドアセダンに仕上げられ、バブル好景気の後押しもあり人気を獲得した。

1993年にデビューした7代目(C34型)「ローレル」
1993年にデビューした7代目(C34型)「ローレル」

・7代目(C34型:1993年~)
3ナンバーボディで居住性が高められ、さらなる上級化を図ったが、市場はバブル崩壊の影響で豪華なセダンではなく、より実用的なRVなどを求めるようになり人気は下降した。

C230~C33までの歴代ローレル
C230~C33までの歴代ローレル

ラストローレルとなった8代目

日産8代目「ローレル」
1997年にデビューした8代目(C35型)「ローレル」

1997年6月のこの日、ローレルのラストモデルとなった8代目(C35型)がデビュー。先代同様4ドアハードトップのみの設定で3ナンバー化して、スポーティ仕様の“クラブS系”とラグジュアリーな“メダリスト系”の2種が用意された。

8代目(C35型)「ローレル」のコクピット
8代目(C35型)「ローレル」のコクピット
8代目(C35型)「ローレル」のフロントシート
8代目(C35型)「ローレル」のフロントシート

クラブS系は、ブラック塗装のハニカム状グリルとクリアカバーの中に丸目4灯のヘッドライトを組み合わせた精悍な印象。一方のメダリスト系は、外周部にメッキを施した斜め桟グリルとマルチリフレクターヘッドライトを組み合わせラグジュアリーさを強調。また、ゾーンコンセプトと呼ばれる衝撃吸収ボディで、安全性が飛躍的に高められた。

日産8代目「ローレル」
1997年にデビューした8代目(C35型)「ローレル」

エンジンは、最高出力235psを発揮する2.5L直6 DOHCターボを筆頭に、200psのそのNAエンジン、155psの2.0L直4 DOHC NA、さらに100psの2.8L直4 SOHCディーゼルの4種。組み合わせるトランスミッションは、電子制御4速ATのみ、駆動方式はFRをベースにアテーサシステムを搭載した4WDも設定された。

日産8代目「ローレル」
1997年にデビューした8代目(C35型)「ローレル」

車両価格は、2WD仕様の2.0L NAエンジン搭載の標準グレードが225.5万円(クラブS系)/226.0万円(メダリスト系)。当時の大卒初任給は、19.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約266万円/267万円に相当する。

ラストモデルに相応しいハイオーナーカーの8代目ローレルだったが、厳しい市場環境のため販売は伸びず、残念ながら2003年に生産を終了した。

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人気のブルーバードとスカイラインの狭間で先進の技術を搭載しながらも、サーキットやラリーで活躍することもなく、上品だが何となく地味な存在だったローレル。ハイオーナーカーを目指したが、そこにはハイソカーのマークIIがいた。そんな過少評価されたローレルに、何となく愛着を感じてしまう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…