「良い物を永く」という思いが共鳴

TOYOTA GAZOO Racingは、老舗のアウトドアセレクトショップ「A&Fカントリー」とコラボしたブースを展開している。「良いものを長く使う」という両社の思いが近いことから今回のコラボ出展が実現したそうだ。

ブースには、美しくレストアされたランドクルーザー60とランドクルザー40の2台が並ぶ。そして、トヨタのクルマを長く愛してくださるお客様の笑顔を増やしたいとの思いで取り組む『GRヘリテージパーツプロジェクト』のアイテムが数多く展示されている。

GRヘリテージパーツとは?

「一生モノの相棒」。そう語られることも少なくないトヨタ・ランドクルーザー(以下ランクル)だが、長年連れ添えば当然ながら部品の劣化・供給終了という壁に突き当たる。そうした悩みに対して、トヨタが正面から向き合ったのが「GRヘリテージパーツ」プロジェクトである。

トヨタ・ランドクルーザー60

この取り組みは、トヨタが過去に販売した名車の純正部品を再供給するプログラムだ。初期はスープラ(A70/A80)やAE86などスポーツモデルが中心だったが、2021年以降、ついにランクルもその対象に加えられた。

対象となるのは、1960年代から1980年代にかけて販売された「40系」を筆頭に、順次60系・70系・80系といった歴代モデルへ拡大されている。現在は特に40系(FJ40など)向けの部品供給が活発化しており、ステアリング系や足回り、エンジン関連部品など、走行安全にかかわる部位を中心に復刻が進められている。

トヨタ・ランドクルーザー40

なぜランクルなのか。トヨタによれば、海外を含めたオーナーからの要望が非常に多く、同社にとっても「走る文化財」とも言える存在であることが背景にあるという。ランドクルーザーはその堅牢さから、過酷な環境で今なお第一線にある個体も多い。しかし、部品供給が絶たれれば、どれほど整備技術があっても維持は難しい。GRヘリテージパーツはそうした危機感への一つの回答なのである。

ユーザーの声を反映した復刻パーツのランナップ

具体的な供給方法は、全国のトヨタ販売店やGRガレージ、さらにトヨタ公式の楽天市場店などからの取り寄せが基本となる。部品によっては海外向けにも供給が開始されており、北米・豪州・中東といったランクル人気の高い地域にも対応可能な体制が整いつつある。

GRヘリテージパーツのラインナップ

部品はすべてトヨタの純正設計に基づいて製造されており、一部については当時の金型を使いながらも現代の品質基準で再設計されている。たとえば、かつては供給終了していたリヤアクスルシャフトやウインドウレギュレータ、排気系パーツといったものがリストアップされ、再び入手可能となった。2025年以降も新規追加も予定されており、オーナーからの「リクエスト受付」も行われている点は注目に値する。

ランクル40用のブレーキマスタシリンダなども用意されている。

このリクエスト制度は非常にユニークだ。トヨタは一方的にパーツを選定するのではなく、ユーザーや整備業者などから「どの部品が必要か」を直接ヒアリングし、需要の高いものから順に復刻を検討していく。言い換えれば、ランクルを愛する人々自身が、愛車の“延命リスト”を構築していく仕組みである。

こちらのメッキグリルは現在検討中の商品。ラインナップ拡充している。

興味深いのは、GRヘリテージパーツが単なる「補修品供給」ではなく、文化継承の一環として位置づけられていることだ。トヨタはこの活動を通じて「長く愛されるクルマを作る責任」を明確にし、過去の製品を切り捨てるのではなく、未来へと橋渡しする姿勢を打ち出している。

電動化の時代にこそ甦る旧型ランクルの魅力

ランドクルーザーは2024年に“250系”として新世代モデルが登場し、マイルドハイブリッドなどの電動化も進みつつある。しかし、同時に「40年前のランクル」を今も現役として走らせようとするオーナーがいることも事実だ。その姿勢をトヨタ自身が支えている。それこそが、このプロジェクトの真価である。

今後、さらに部品ラインアップが充実すれば、レストアや維持を断念していた車両も再び息を吹き返すかもしれない。ランクルという名の物語は、終わることがないだろう。