【火曜カーデザイン特集】BEVのフロントのフェイス・デザイン

BEVになるとフロント・グリルは? レクサスの新たな方向性を見る

電気自動車が大きな流れになっていくように見える昨今だが、内燃機関にあったラジエターグリルや大きなフロントインテークのようなものは、必要なくなっていく。ここが各メーカーの見せ場で、この先BEVのフロントデザインには大注目なのである。まずはレクサスにその方向性を見てみよう。

クルマのブランドを象徴するのが、フロントグリル。もともとはラジエターグリルと呼ばれ、エンジンの冷却を行うための水を冷やす装置。クルマの先端にあるのが合理的で、かなり大きなものだったので独自のデザインを加えることで象徴としやすかった。

なので正面から一目で、どんなブランドなのかがわかりやすかったのだ。またメーカーとしても、ラジエターグリルを中心にクルマ全体のデザインを考えてきたという経緯もある。

ところが、純粋な電気自動車=BEVとなるにあたって内燃機関よりも冷却の必要性が少なくなってくると、機能的にはそれほど目立つような位置に備えるものでもなくなってきた。また、空気抵抗の低減という観点もあるので、必要最小限のインテークを必要な時だけ使うことの方が重要になってきた。

そのためこれまで一目で見てわかる「顔」を作ってきた各社は、新たな模索をしている。メーカーによっては、「家紋」としてラジエターグリルと同じ形の風防パネルを採用して、個性を守っている例も出始めている。それほど、フロントのグリル形状は、わかりやすく個性を主張できるものなのだ。それだけに、BEVへのデザイン転換はメーカーにとっても正念場伴ってくるのだ。

トヨタがBEVへの取り組みを発表。その中で多数のBEVのお披露目を行った。どれも興味深いのだが、今回はレクサスの顔について。

そんな中で、昨年12月にトヨタが近未来のBEV戦略についての発表を行った。その中でグリルの話題として、今回注目したいのがレクサスだ。レクサスは、トヨタの中でもよりEV化を強める方針で2035年までには100%のモデルがEVになるという目標も発表されている。

最近のレクサスは、デイライトをヘッドライトとコンビにしたL字型としている。これはもちろんLEXUSのLを用いることでレクサスらしさを表現できている。リヤコンビランプにもこのテーマは用いられ、レクサスらしさを表現してきた。

しかしここには大きな狙いがあったのだ、ということを4台の発表されたモデルが教えてくれている。

レクサスといえば、中央の凹んだ糸巻き形状のスピンドルグリルが特徴。採用時は賛否両論だったが、使い続けることでレクサスらしさの象徴と位置付けることに成功した。L字型のデイライトはその形状に添わせた、グッドアイデアと思えたのだが実はBEVになるのに向かってまずは、このL字型デイライトが象徴となっていくのだということがはっきりとわかった。

今春発表されるBEVのRZ。ほぼ量産型。もはやスピンドルグリルはないが、レクサスらしさを感じる。

この造形によって、フロントグリルがなくなってもフェイスにはスピンドル形状の造形を残すことができる。それも無理やりにではなく必然として形作られているように感じられる。それは、現在に至るまで展開されてきたL字型デイライトの展開が、グリルのないBEVデザインに抵抗なく誘導しているともいえる。今回紹介されたのは、スポーツカー、セダン、そして2つのSUVモデル。SUVのなかの1台は今春発売が予定されているRZだ。

ハイエンドのスポーツモデルのようだ。L字型のデイライトとアンダーグリルのエア導入構造によってスピンドル形状を感じさせる。LFAのようにサイドインテークを持つがキャラクターラインがよりスマートに造形を誘導する。セダンタイプのモデルでも、共通するイメージを採用している。
セダンモデル。ぐっと下げたノーズとスポーツモデル同様のランプと薄いグリル周りを持つ。フェイスの厚みに合わせて下のインテーク造形が大きくなる。サイドのキャラクターラインは前後フェンダーの豊かさを表現するとともに、サイドウインドウの造形に繋がる。タイトルバックの写真にもちらりと登場するが、ワゴンやハッチバック、そしてコンバーチブルにも独特の躍動感と低重心イメージを与えているようだ。
R Zとの共通性を感じさせながらも、さらに力強さを纏うフェイス。ビッグキャビンとなるSUVでは、サイドをはじめとするキャラクターをセダン系とは異にしているようだ。

このRZを皮切りにBEVが展開されていくわけだが、それぞれのモデルのデイライトの扱いは違っている。ボディやグリルとの交わりかた、サイドとの関係性などが様々な印象だ。共通した造形イメージはあるものの、それぞれのモデルの個性やプロポーションに併せた造形展開ができることになっているのではないだろうか。こうすることによって、多様性のあるモデル展開を可能としているようにも見える。

一見するとシンプルなアイデアに思えるのだが、ここまでシンプルに到るには相当に大変な思考錯誤があったことは、想像に難しくなく、すごいことなんだと思う。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…