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古いと捉えるか、新しいと感じるか
モーガンは1909年に前2輪、後1輪の3ホイーラーを製造し、1952年に製造を終了している。これでモーガンの3ホイーラーの歴史は終わったかとも思われたが、なんと2011年にVツインエンジンを搭載した新型モデルを発表した。登場した3ホイーラーは最新のディテールと伝統的アピアランス&メカニズムを適度に融合させたものだった。このモデルは大きな成功を収め2021年に生産を中止するも、今回の新型車スーパー3の登場となった。
どんなスタイルで登場するのかは大きな関心だったが、まさに衝撃ともいえる形となった。まるで戦闘機のようにボディ前方に露出していたOHVの古典的Vツインエンジンは、近代的なフォード製3気筒1.5ℓエンジンとなりフロントカウル内に格納された。目指したのは空力性能の向上と、何よりも重量配分の見直し。フロントアクスルの前にあったエンジンは、アクスルより完全に後方配置となって3ホイーラーの運動性能に大幅にメスが入れられたことになる。
「旅のツール」としての提案が新しい
モーガン初のアルミモノコック構造を採用。3分割のプラットフォームとなり、フロントにはアルミ鋳造製のサブフレームを持つ。ここがエンジンとサスペンションのマウント部であると同時に、左右のラジエターへの導風の役割も果たす構造となっている。エンジンを後退させたことによって、ダブルウイッシュボーン式となるフロントサスペンションのアームが長く取れているのも魅力だ。
これまでと大きく異なるのは、荷物を固定できる専用フックが左右のボディサイドにも設置されていることだ。3ホイーラーといえばボディ骨格はミニマムで、リヤに若干のトランクがあるといっても、リヤタイヤとリヤサスのストロークのために大きな空間は期待できない。また、先代モデルではボディサイドにはマフラーが配置されることで、荷物を吊るような場所としては利用できなかった。
実は、ここが大きなポイントだと思う。これまで3ホイーラーはあまり荷物が積めず、独特の走りを単に楽しむだけのスポーツカーとなっていた。しかしその実は、ユーザー調査によってわかったことは、ユーザーは冒険や旅に積極的に利用していたのだという。そこで、3ホイーラーの使われ方が明確になったのだ。
3ホイーラーは旅のためのギアなのだ。そのために荷物は左右ボディサイド、そしてリヤ上部にもアタッチメントによって固定できるように構成された。
また、そのことがこのボディデザインを決めたといってもいい。こんなコンパクトなモデルで、イギリスの田舎道などを旅すれば、実にロマンチックであることは間違いなく、またそのエキサイティングな移動に心惹かれるだろう。そんな「相棒」としての存在感をしっかりと作り上げているのが、このスーパー3のデザインなのだと思う。
EV化だってきっとアリ
バイクより少しリラックスしながら、2人のミニマムな旅のためのツール。そうした側面をスーパー3は明確化したのだ。もちろん今後にはEV化も重要になってくるが、かつてモーガンはEV3という電気自動車の3ホイーラーを開発していた。市販化まであとわずかというところで、バッテリーの供給の問題で断念した経緯があった。
もし今後EV仕様の3ホイーラーが誕生できたとすれば、「アクティブな旅の新しい形」という方向性を持った、超ミニマムなモビリティとしてさらに成長していけるのでは? と、大きな期待を持ってしまうのは、自分だけの妄想だろうか。