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■ディーゼル車F50の追加とイメージチェンジ
昭和53(1978)年9月、タフトに自社製のDG型2.5ℓディーゼルを搭載したF50が追加される。これは2t積みトラック・デルタで実績のある鉄の塊のようなエンジンで、最初に積まれたFE型の倍ほどの重さがある。今流にはフェイスリフトなんていうらしいが、顔つきが変わって見た目も近代化された。
このとき、エンジンルーム内に配されたステアリングリンケージの取り回しがダイレクト感を増す方向で簡素化され、極太トルク型の出力特性や重量と相まって、骨っぽい乗り味がより濃くなった。
実際に走らせると、三菱ジープのディーゼル車よりもランクル40系に近い感じがする。それどころか、フレーム構造の違いでガッシリ感がより強く、後年のランクル70系を小型化したような乗り味ともいえる。
エンジン特性に合わせ、デフの減速比がF20の4.777から25%も高い3.545に変更、少しは精神的余裕を持ってゆったり走れるようになった。その代わり、ローレンジ/1速での総減速比が31.7まで上がり、極悪路で足が速すぎた。厳しい地形ではトルクがあれば良い訳ではなく、歩くより遅い速度で乗り切りたい場面もある。
F50系は発売後しばらくすると、昭和54(1979)年度排ガス規制に対応した小変更が施され、K-F50となった。燃料価格やトルク感、使い勝手の違いにより、売れ筋から外れたF20の4人乗り短尺車とF10は生産を打ち切られた。
トヨタから兄弟車ブリザードLD10が発売されたのもこの時期だった。トラック然としたタフトF50とは異なり、クラウンに使われたL型ディーゼルを搭載して乗り味はずいぶん異なる。
ダイハツタフト K-F50J(幌ドア)(1980年) 主要諸元
寸法 全長3485mm×全幅1460mm×全高1860mm
ホイールベース 2025mm
トレッド 前/後 1200mm/1200mm
車両重量 1220kg
エンジン DG型 直列4気筒OHVディーゼル
総排気量 2530cc
最高出力 75ps/3600rpm
最大トルク 17.5kg-m/2200rpm
トランスミッション 4速MT 2速副変速機付き
ブレーキ前 2リーディング
ブレーキ後 リーディング・トレーリング
タイヤサイズ 6.00-16-4PR
■RV時代の波に乗ろうと……
昭和56(1981)年10月、タフトはディーゼルに一本化された。ジープもランクルもガソリン車はほとんど売れていなかったから、当然の流れだった。
この時期になると、作業車を脱するべくRV的な演出が目立った。売れ筋は、幌型のバスタブボディにFRP製のハードトップを被せたレジントップ。赤や白の塗装にスポーク型のスタイルドホイールや縞模様のファブリックシートを備え、遊び用の車、つまりRV的な演出がなされた。
それでも前後リーフリジッドサスペンションにトラック用OHVディーゼルだから、爆発的に売れ始めるパジェロ等とはカテゴリーの違う商品だ。あくまでRV風味の作業車、クロスカントリービークルであり、本質的な乗用車化ではない。いやいや、これで良いのだ。
■2.8ℓの強心臓 F60
昭和57(1982)年11月、ディーゼルエンジンを2.8ℓのDL型に変更。5速車も追加された。1000ccでスタートしたシャシーに、ジープのディーゼルを凌ぐ排気量である。
特筆すべきは、特に補強もせぬまま大雑把なエンジン換装を重ねても、バランスを崩したり、強度面で不都合が出た話を聞かなかったことだ。
想像してほしい。ジムニーJB64Wにダイナやエルフのエンジンを載せたらどうなるか。きっとバランスを崩してマトモに走らないか、駆動系が破綻するだろう。数値上では似たような最大トルクだとしても、トラック用エンジンの底力は別格だ。
タフトには吊り下げ型クーラーのオプション設定こそされたものの、パワステが備わることは最後までなかった。各社の新型RVが人気を博す中でフルモデルチェンジが待たれ、昭和59年4月にラガーと名を変えて登場した。
古色蒼然たる姿に魅力を感じるのは今だからこそで、現役の頃はどちらかといえばダサい四駆の部類だったと思う。同じ車名が36年の時を隔て、トレンドに乗った“軽クロスオーバー”のカテゴリに返り咲いたことは、タフトファンとして複雑な心境ながら、やっぱりうれしい。
…………というわけで、次回は実車リポートをお届けしましょう。
ダイハツタフト レジントップ N-F60V-MB(1983年) 主要諸元
寸法 全長3520mm×全幅1460mm×全高1875mm
車重 1300kg
エンジン DL型 直列4気筒OHVディーゼル
総排気量 2765cc
最高出力 77ps/3600rpm
最大トルク 17.8kg-m/2200rpm
トランスミッション 5速MT 2速副変速機付き
ブレーキ前 ディスク
ブレーキ後 リーディング・トレーリング
タイヤサイズ H78-15-4PR
(初出・2020年6月11日)