新型ステップワゴンの「3列目」は使える? 酔わない? これがじつに快適なのだ

ホンダ・新型ステップワゴン&開発責任者と真っ向勝負! クルマ酔いしにくいって、ホントですか〜?【ホンダ新型STEP WGN試乗】

開発責任者・蟻坂篤史さんと談笑する筆者。「本当に酔いづらいクルマに仕上がっているんですか?」
クルマ酔いする人にしかこの気持ちはわかるまい。酔うときは酔うのだ。お腹が空いていてもダメ、満腹すぎてもダメ、匂いもダメ……。そこに「クルマ酔いしにくい!」と堂々と謳った新型ステップワゴンの試乗会のお誘い! コレは戦いを挑むしかないでしょ。ウメボシ持って、Let’s go!

TEXT:生江凪子(Naco NAMAE) PHOTO:Motor-Fan.jp FIGURE:HONDA

ホンダ・新型ステップワゴンの福祉車両体験:「だれもが、なにかを我慢することがない」クルマづくりに、開発者の本気と優しさを見た【ホンダ新型STEP WGN:福祉車両編】

クルマの使いかたは人それぞれで、それはもちろん福祉車両にも当てはまる。そんなクルマづくりは、正解がわからないからこそ “どこまで寄り添えるか ” がキモとなる。今回の試乗会/福祉車両体験では、新型ステップWGNのグランドコンセプトを「#素敵な暮らし」としたホンダの、本気と優しさを感じることができた。 TEXT:生江凪子(Naco NAMAE) PHOTO:Motor-Fan.jp PHOTO&FIGURE:HONDA

正しくは「乗り物酔い」ですが、記事内では対象が自動車なため「クルマ酔い」表記としています。
本日(5月26日)発表・明日(27日)より発売となるHonda STEP WGN。左からSTEP WGN SPADA/STEP WGN AIR/STEP WGN SPADA PREMIUMLINE。タイプは各グレートともにe:HEV(2.0L DOHC i-VTEC+2モーターハイブリッド)/ガソリン(1.5L 直噴VTEC TURBO)仕様あり。価格はe:HEVが340万4500円〜/ガソリン仕様は299万8600円〜となっている。

空腹にまさるものナシ! と、いざ出陣!

筆者の場合「クルマ酔い」は、自身の健康状態が優れないときに起こりやすい。それに加えてドライバーの運転技術(急加速急発進などリズムの合わない運転など)、匂い(芳香剤や同乗者のフレグランスなど)などの外的要因も関わってくる。
そして、クルマの構造も例外ではない。脚周りとボディがシンクロしていないと、走行中のクルマは不安定な揺れを起こし、クルマ酔いを引き起こす。失礼を承知で言わせていただくと、世の中にそういうクルマは、意外やあるのです。

幼少のみぎりから乗り物酔いと戦い、外のクルマをとにかく見続けることで気を紛らわせていた(ことからクルマ好きになった、単純な)筆者は、大人になったいまでこそ、慣れでなんとかなっているものの、要因が重なれば乗り物酔いをしてしまう “クルマ酔いのプロ” 。「酔いにくい」と謳われようものなら、挑戦しないわけにはいきません。

ですが、職業も職業でかなり慣れているため、いまやそうそうのことでは乗り物酔いはしません。それでは煙に巻かれる可能性が否めない……。では、どうするか。ハイ、酔いやすい状況を無理矢理作り出しましょう。プロですから。

・食事は前日のお昼ゴハンまで。その後はゴハン(もちろん、オヤツも)抜き。
・糖分を含まない水分はヨシ。
・睡眠不足は安全運転の観点からナシ。
・柔軟剤・芳香剤(かなりニガテ)などの香りを敢えてかぐことは、試乗前に酔う可能性があるためナシ。
※飛び道具・コンタクトを外す暴挙、に出ることも視野に入れケースを持参。
※開発者を打ち負かしたときに目の前で食す用(というか緊急酔い止め)として梅干しを持参。

空腹状態だと、かなりの確率で酔うので(機嫌も悪くなるけど)コレで充分。いざ! 出陣!

ちゃんと自宅からウメボシ(塩分18パーセント)持参。

ベビちゃんからシニアまで、みんなうれしい

さて、実際に試乗する前に新型ステップWGNのカットモデルを見つつ説明を伺う。

今回は、グランドコンセプトを「#素敵な暮らし」と掲げ、あくまでも使い手側が主役となるような車両を目指したという。
パッケージは全席快適な居住空間。シートはウレタンの厚みを23mm、密度を27%アップし、縫製にもこだわった乗り降りしやすく疲れにくいシートを採用する。3列目に関しても、サブシートという認識ではなく主役級の扱いで快適性を向上させているという。座面の厚みは21mmアップ、ここも「酔いにくい」と謳う理由のひとつである。

そして、どんなシチュエーションにも合うシートアレンジ。
ミニバンというとシートアレンジの豊富さもポイントとなるが、今回の新型ステップWGNももちろんさまざまなアレンジができるよう仕立てられている。

とくに2列目の前後左右のスライド機構は、前後865mm(内寄せ時)/610mm(外寄せ時)のロングスライドを実現し使い勝手を大いに向上させている。

しかし日常的に使うとなると話は別で、私の周りのミニバンオーナーからは「面倒でそのまま」という声も聞かれた。多彩なシートアレンジが可能ではあるが、あまり使うことがないオーナーがいるのも事実だろう。
だが、今回のステップWGNはそこにもしっかりとメスを入れている。ホンダ初となるワンアクションレバーの採用だ。子どもでも自分で動かせるようにと考えられたシートレバー(ワンアクションレバー)で、シートを動かすことが苦にならない。これは、かなり大きい。「ほんのちょっと動かしたい」がラクに叶うこの機構は、どの世代にとってもうれしいに違いない。

ちなみに今回、数あるシートアレンジのなかで感動したのが、【赤ちゃんお世話モード】。うん、子どもいないけど。これね、すごいんですよ。
私事で恐縮だが、姪っ子がまだ小さいころクルマで移動をしていたとき、後部座席でぐずって泣く姪っ子に手を触れることもできず、どうにもならなくてコッチが泣きたくなった経験があるのです。でもそれって、ママ・パパにしてみたら日々のことだったりしますよね? ミニバンなど大きめなクルマになればなるほど、赤ちゃんとの距離は離れていきますが、この【赤ちゃんお世話モード】であれば、かなり近い! ひとりで赤ちゃんを連れているときでも、ストレスなく運転に集中できそうです。

3列目とか、絶対にやだ

ミニバン(3列シート車)に乗るとき、人数が多いと3列目まで使うことがある。でも、ハッキリ言って「3列目はやだ」だ。乗り込みづらいし、声は聞こえづらいし、暗いし狭いし、まさにクルマ酔い要素全部のせってやつよ……?
でも、今回の新型ステップWGNは酔いにくいクルマ。シート以外にもさまざまな工夫がされているという。

ポイントは、視覚。
クルマ酔いに対しては「自分がクルマに乗っている状態が視覚的に正しく入力されること」に配慮することが大切なポイントなのだという。そこで、今回の新型ステップWGNでは
① 1列目にしても2列目もちろん3列目にしても、乗っている状態で外がきちんと見えていること。
② 車室内の線がしっかりと一本通っていること。その線が前につながっていること。
というふたつを重要視した室内デザインとなっている。

車室内の線が一本(まっすぐ)通っていることがそんなに重要なの? それが、とっても重要なんですって!
視界に入る線が直線基調であることで、視覚的に「枠」を認識しやすくなり、いろいろな挙動をするクルマに乗っているときでも「いまクルマがどんな傾きをしているのか、いま自分がどっちに傾いてどっちに重力が向かっているのか」を把握しやすくなるというメリットが。反対にデザインで美しい曲線を作り込みすぎると、どっちに傾いているかが視覚的に把握しづらくなる場合があるのだとか(結果的に乗り物酔いの原因にも)。

ルーフについても、しっかりまっすぐなラインとすることで視界を一定の「枠」に保っている。
地味なポイントだが、ステッチなどアクセントラインについても同様だ。エモーショナルなデザインをつけてしまうと、視覚的にどっちを向いているかがわからなくなってしまうため、直線基調とすることをしっかりと守ったという。
水平・直線基調であることを意識した室内空間か。なるほど座ってみると目にうるさくなく、スッキリとした室内空間であることがわかる。クルマに乗っている感じがなく、視界がスーッとしている。開放的で明るい、と言われれば確かにそう……いやいや、待て待て、カットモデルだからコレ! という突っ込みは置いておいて、窓も大きく、シートポジションも高くなっているため、確かに実際に乗っても開放感があるかもしれない、と思わされた。視線が安定するため、酔いにくい、というのもまんざらウソではないのかもしれない……いや、騙されるなっ!

というわけで、いざ試乗。ちなみに、もはやあまりにハラヘリすぎて酔う準備万端、試乗前に勝利のウメボシを食べたい衝動にかられるほどである。

さぁ、実車試乗へ!

さていよいよ試乗の時間だ。今回発売された新型ステップWGNは、水平直線基調で車両感覚をつかみやすく、より運転しやすくなっているという。

だが、今回の目的は3列目だ。座面の厚み21mm増となり着座位置もフロントシートより90mmアップ(2列目は+40mm)。そして水平なベルトライン、窓の形状や2列目シートのヘッドレスト高を下げたことによる視界の広さといった多くの「乗り物酔いしにくい視界の工夫」がどんなものか、お手並み拝見といきましょう。

おっと、忘れちゃいけない。これは真剣な戦いである。開発責任者にお相手をしていただかねば。蟻坂さ~ん(なんて軽やかに書かせていただいておりますが、新型ステップWGN開発責任者・蟻坂篤史さまです。偉いかたです)。

ヘッドレストも現行よりもサイズを小さくすることで、抜けるような視界を作り出すことを目指した。

走り出してまたびっくり。振動がない! 3列目に座っているのに脚に突き上げ感がない。こだわり抜いたシートと脚周りで、とにかく身体への負担が少ないのです。アタマも揺れない。これは確かに酔いにくいかも! というか、まったく酔う気がしない。すばらしい。3列目に乗っていても、長距離どんとこい、だわ。

それだけではありません「全席で会話ができる、ということを狙った」というだけあって、とにかく静か! ミニバンの3列目に座っていて1列目の話が聞こえるって、かなり奇跡的です。これはぜひ試乗時にお試しいただきたいところ。

そんなこんなでクルマ酔いする気配がみじんも見られずに、試乗時間終了です。アレレ。
蟻坂さんを始めとした開発チームの皆さんの目指した「快適に移動できる空間」、伊達じゃありません。どこもかしこもこだわり抜かれた新型ステップWGN、すごい!

残念ながらウメボシの出番は訪れず、で降参です。蟻坂さん、マイリマシタ、の図。

でも筆者、かなり往生際が悪いことで有名……今日はさ、テストコース内の30分くらいの試乗でしょ? コレはさ、公道に出たら違うんじゃないの? じつは公道で乗ったら、酔うんじゃない? ほぅ。公道試乗会がある? 近々。
というわけで……もう一度戦いを挑む所存であります!

待ってろ! 蟻坂(さま)!!!

非公開: ノア/ヴォクシーの強力なライバル、いよいよ発売!ホンダ・ステップWGN、6代目のグランドコンセプトは「#素敵な暮らし」

新型ステップWGNは、6代目モデルとなる。新型は「AIR(エアー)」と「スパーダ」の二本立て。パワートレーンは、1.5ℓ直4ターボ+CVTと2.0ℓ直4+e:HEV。価格は299万8600円〜384万6700円。

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著者プロフィール

生江 凪子 近影

生江 凪子

クルマ酔い防止で車外のクルマを見て育ち、気づいたときには取得した幼稚園免許/保育士資格を使うことな…