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そもそもハイオクガソリンとは何なのか?
皆さんは愛車に入れるガソリンにこだわっているでしょうか。最低限、クルマを設計通りに走らせるにはレギュラーガソリンとプレミアムガソリン(ハイオクガソリン)の指定についてはきちんと守るべきです。セルフ給油で入れるときには赤いノズルはレギュラーガソリン、黄色のノズルがハイオクガソリンと覚えておくと間違いづらいでしょう。
欧州系の輸入車や国産スポーツカーやプレミアムカーはハイオク指定となっていることが多く、レギュラーガソリンを入れたからといってすぐさま壊れるようなことはありませんが、燃費が悪化したり、パワーが出なかったりしますからきちんと指定通りにハイオクガソリンを入れるべきです。
では、ハイオクガソリンというのはレギュラーガソリンと何が違うのでしょう。ハイオクタンを短くした「ハイオク」という愛称が性能差を示しているのですが、端的にいえばエンジンのノッキング(異常燃焼)に影響するオクタン価が高いガソリンのことです。
ハイオクガソリンは燃えづらい特性で、ノッキングが起きづらいのです。そのためパワーを絞り出す設計がしやすくなります。異常燃焼を起こしやすいといわれる高圧縮比エンジンがハイオク指定となっていることが多いのは、そういう理由です。
ハイオクをブランド差別化に使う時代は終わっている
実際、レギュラーガソリンとハイオクガソリンについてはJIS規格によりオクタン価の最低値が定められています。具体的な規格は、ハイオクガソリンがオクタン価96以上、レギュラーガソリンはオクタン価89以上と決まっています。ですから自動車メーカーは、最低基準を満たした燃料において問題が起きないように設計しています。
かつてガソリンのブランドごとにハイオクガソリンの性能差を競うことで、集客につなげる時代がありました。その頃は、オクタン価が規格で決まっている以上のスペック(最高値は100)であることを想起させるような商品名をつけていたことを覚えているかもしれません。
しかし、いまやハイオクガソリンをブランディングに使う時代は終わっています。
その背景にあるのは、石油元売りと呼ばれる企業の吸収合併が進んだことです。いまや全国展開している元売りはブランドでいうとエネオス、アポロ(一部シェルが残る)、コスモの3つとなりつつあります。同じ通りに各社のガソリンスタンドが並んでいるようなエリアもありますが、多くに地域でライバルと差別化する必要はなくなっているのが現実です。
そのため、気が付けばハイオクガソリンに特別な名前をつけているのはシェル「V-POWER」くらいとなってしまいました。そのシェルについても今後はアポロ・ブランドに統合されている最中で、まもなく日本では独自ブランドにこだわるハイオクガソリンは消えていく運命です。
実態としては同一エリアではハイオクの中身は同じ
ハイオクガソリンの差別化をアピールしていないということは機能的にはJIS規格を満たしているというレベルで捉えるべきでしょう。
もはやハイオクガソリンの銘柄にこだわる必要がない時代になっています。こだわりたくても、こだわれないのです。素直に受け入れて、身近なガソリンスタンドで愛車に合ったスペックのガソリンを給油すると判断するのが精神衛生上もおすすめです。
そもそもハイオクガソリンが本当に差別化されていたのかも怪しいというのが実態です。
2020年6月頃に報道されたように、各社が別商品のようにアピールしていたハイオクガソリンも、一部を除いて、実態としては同じエリアの製油所で作られていることは明らかとなりました。同一エリアにおいては、異なるブランドのガソリンスタンドで、同じハイオクガソリンを売っていたということになります。
クルマ好きにとってはセンセーショナルなニュースでしたが、結果的にそれほど元売り各社を批判する声が上がらなかったのは、ハイオクガソリンの成分よりも価格にこだわるユーザーが多いからなのかもしれません。
話は変わりますが、電気自動車に乗るようになると、あれほどガソリンの銘柄にこだわっていたことが何だったのだろうと感じてしまいます。電気についていえば、太陽光で作ろうが、原子力発電だろうが、充電してしまえば同じ”電力”でしかないからです。電動化時代が進んでいくと「燃料にこだわる意味ってあるんですか」と感じる人も増えていきそうです。