トヨタGR86 新車で購入 最初のオイル交換、どうする? 長くつき合うためのエンジンオイル選び

オイルは自宅で上抜きで交換。
マイカーを手に入れたら、少しでも良いフィーリングで、いい状態で、末長くつき合いたい、と思うのは誰しも同じだろう。そうなるとまずはオイル交換にこだわりたい。GR86になってオイルの総量が400cc減るなど、若干の変更がされていた。連載第7回は「オイル選び」について。コレ、知っておいて損はないですよ。

TEXT&PHOTOS 加茂 新(KAMO Arata)

新車の慣らし走行は必要か? GR86のフィーリングに迫る【TOYOTA GR86 長期レポート6_AE86~GR86への道】

GR86を手に入れ、さっそく慣らしをしながらロングドライブに。街乗りでのしっとり感と、高速道路でも快適なフィールと繊細なハンドリングは予想以上の素晴らしさ。長期レポート第6回は「そのフィーリングの秘密」に迫る! TEXT&PHOTOS 加茂 新(KAMO Arata)

最初のオイルほど、汚れる

慣らし走行については取扱説明書によるととくに細かい指示はない。BRZの取扱説明書には1000kmまでは4000rpmに抑えるという指示があるらしいがGR86はとくになかった。
とりあえず、3000rpmくらいを目安にあまり負荷をかけないように、ふわっと乗ることにして距離を重ねる。といっても購入した長野県佐久市から神奈川の自宅まで帰ってきたらあっという間に300kmだ。

これまで、新車で購入したのは86後期とスイフトスポーツ(ZC33S)。一般的には初回オイル交換は1000kmと言われるが、そのどちらも数百kmでオイルを交換した。それはやはり一番最初のオイルほど汚れるからだ。

上抜き後にドレンボルトを開けてみたが、1滴も出てこず。GR86は上抜きでOK。

いまどきオイルに金属片が混じる、なんてことはないが、金属が摩耗したであろう微細な粉が混じっている。わかりやすく一番近いものでいうと、味噌汁だ。あのかき混ぜると味噌がふわっと混ざるように、金属粉がふわっと舞うのだ。これはきっと早く排出してあげないといかんな、と、なるはやでオイル交換を数回することにしている。

抜けたオイルも4.7Lほどで、たしかに先代よりはオイルの量が減っている。
ドレンボルトの形状や位置などはとくに変更なし。

今回も300kmで抜いたが軽く波紋が見えるくらいの金属粉が混ざっていた。

だが今回、金属粉よりも驚いたのがオイルの量だ。初代86/BRZではオイル交換時5.2L/フィルター交換時は5.4Lがメーカーの指定値だった。この容量は国産車としてはかなり多い方だろう。水平対向エンジンはヘッドが左右の遠い位置にあり、オイルがオイルパンに戻ってくるのが遅いせいか、かなり量が多めだった。
ちなみに以前乗っていたS15シルビアのSR20DETは、オイル交換で約3.0L、フィルターも交換して3.5Lほどと約半分。

オイルは130℃から急速に劣化

それが、なんとGR86の取扱説明書によるとオイル交換時4.8L/フィルター交換時は5.0Lと記されている。排気量アップしてハイパワー化され、オイル容量は減ったのだった。
初代86はそれだけのオイル量があったが、油温はかなり高かった。高速道路の100km/h巡航で105℃くらい。これはとくに問題はないが、ちょっとサーキットで踏み込むと120℃は軽く超え、夏場のサーキット走行では10分ほどで130℃オーバーも当たり前だった。
油温が130℃になったからといって即壊れてしまうわけではないが、オイルは130℃くらいから急速に劣化が進み、速やかなオイル交換が推奨される。

ちなみにGT-R(R35)ではエンジン油温が110℃以下の場合は1年か15000kmで交換。110~130℃になった場合は5000kmで交換。130℃以上になった場合は速やかにオイルとフィルターを交換することと規定されている。
車種は異なるが、エンジンオイルが110℃以上になったら早めに交換し、130℃以上になったら即交換が必要になると日産は認めているわけである。

GR86には水冷式オイルクーラーが標準装備されている。WRX STIシリーズに装着されていたものとほぼ同じもので、オイルフィルターの根本でクーラントと熱交換をするシステム。エンジン始動直後は温度の上がりやすいクーラントがエンジンオイルを温め、その後は温度が高くなりやすいオイルをクーラントが冷やすシステムだ。

水温と油温はメーターのバーグラフで確認できるが、センターコーンソールのボタンを長押しして「TRACKモード」にすると、水温も油温も数字で確認することができる。

左が水温、右が油温。トラックモードと電子制御カットモードにすると水温油温が数字で見られるようになるが、GR86だけの機能らしい。

この温度を見ている限り、高速巡航でも100℃くらいになっているので、初代に比べて油温はやはり抑えられているよう。すでにサーキット走行も行なったが、油温は110℃くらいまでしか上昇せず、オイルクーラーの効果を実感できた。
その効果があるせいなのか、オイルが5Lで切りよく使い切れるためなのか、理由は不明だがオイル容量が減ったのだった。

実際交換するとフィルター交換をして約5L。取扱説明書どおり。これまでならもう1L缶を開けなければ足りなかったが、5缶でピッタリである。
GR86になっても純正指定粘度は初代から変わらず0W-20の低粘度オイル。厳しい燃費基準をクリアするためとも思われる粘度で、初代の油温からするとスポーツ走行を楽しむにはやや厳しかったというのが個人的な印象。0W-20のオイルも使ったがサーキットを1回楽しんで油温が120℃以上になると、そのあとはメカニカルノイズが高まった。もちろんオイルの性能もあると思うが、温度的に考えると0W-30とか5W-30くらいは入れても良いように思い、冬場で5W-30。夏場のサーキット走行時は0W-40や5W-40を使っていた。

しかし、今回油温が抑えられるなら通年でOW-20か5W-30で良さそうである。それに容量が減ったぶん、オイル交換のコストが下がったのもうれしいところ。わずか400ccだが、いまや高性能オイルは1Lで4000円ほどなので、2000円はコストが下がるし、1缶開けなくて済むというのはキリが良くて助かる。

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著者プロフィール

加茂 新 近影

加茂 新

1983年神奈川生まれ。カメラマンの父が初代ゴルフ、シトロエンBX、ZXなどを乗り継ぐ影響で16歳で中型バイ…