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どこかノスタルジック
MCモデルは横長基調の前後ライト周りとバンパーのデザイン変更によって先代モデルより全長で10~25mm延長され、ゴルフに通じる上質感と力強さが与えられた。
大型化されたリヤウインカーはポロ初のシーケンシャルタイプとなり、対向車や先行車の動きを検知して、最適配光を行なうLEDマトリックヘッドライトを採用するなど機能装備も充実。
エンジンは1.0ℓ3気筒エンジン1タイプで、1.5ℓや2.0ℓ 4気筒ユニットの採用はない。ラインアップはTSiアクティブ・ベーシックの257.2万円~TSi Rライン329.9万円までの4タイプ。中心グレードのアクティブとスタイルが16インチタイヤを履き、エントリーモデルが15インチ、トップグレードが17インチタイヤを採用。GTiモデルはいまのところ用意されていない。
パワースペックは全グレード共通ながら、燃焼過程のシステム変更やバリアブル過給機構の採用などによって、最大トルクの発生回転下限を2000rpmから1600rpmへと落とすことで、よりワイドレンジ化。下から扱いやすい特性変更が行なわれた。組み合わされるミッションは従来どおりの7速DSGで、モーターアシストはない。
今回試乗したモデルはトップグレードで走りのフォルムが与えられたTSI・Rライン。唯一17インチタイヤを履き、精悍な印象を受ける仕上がりとなっている。
走行フィールは3気筒ユニットならでは軽快な吹け上がりが好印象。トコトコとどこかノスタルジックなエンジンフィールながらも各気筒の力強さを肌で感じられる力強さがある。右足の動きに対してザクザクとパワーを上下させフロントタイヤを確実に蹴り出していく。
17インチはオーバーサイズ?
フォルクスワーゲンならではの安定したフロントの牽引力に変わりはなく、パワーフィールの波に進路が乱されないのは良い。3気筒ユニットゆえのフロントの軽さもあって、ステアリングに対する応答に遅れはなく右足に神経質にならずに遠慮なく切り込める。
旋回初期の動きの良さに対してフロントの旋回追従性においてはウェット路面ということもあって、タイヤがオーバーサイズ気味。フロントのグリップ感を引き出すためにやや多めの操作量を必要とした。
DSGは従来どおり切れ味鋭くシフトアップを重ねていくが、モーターを組み合わされているゴルフのような滑らかさはなく、ひと昔前のフィーリング。小気味良いと感じる一方で段つき感による粗さがいまでは気になる。
走行フィールは従来どおりしっかり感があって、3気筒エンジンとDSGの組み合わせはドイツ車らしいメリハリある走りが楽しめる。だが半面、商品力的な面から見ると、室内の仕上がりは大型ディスプレイを除けば素っ気ない味わいで、良くも悪くも機能優先のイメージ。
台頭する国産車を迎え撃てるか
257万円~というお値打ち価格は、国産モデルでは日産ノート オーラの261万円からと同じ価格帯に入る。
ノートの上級モデルで高い質感を持つうえに、100kWのモーター駆動は静粛性に優れ新設計のシャシーも走りの性能を進化させてきている。
そんなオーラを含めた日本車代表モデルは、ポロの質実剛健な走りの良さには未だ届かない部分はあるものの、上質さ、パワーフィール、先進性などをみると全方位から着々と攻め込んできていることは確かだ。同じ価格帯にある日欧代表モデルを見たとき、いまとなってはドイツ車神話へのこだわりも少しばかり軌道修正せざるを得ないかもしれない。
もちろん、ドイツ車の走りの良さに対する信頼度はいまもブレることはないが、ポロに乗り、ゴルフを思い出し、商品力としてはちょっと物足りなく思ってしまうことは事実。
価格設定の苦労もあるだろうが、ダイナミクス性能の高さだけではなく、従来のVWのように機能性のなかにも質感を感じさせる重厚な作リ込み感は失ってほしくないと思った。電動化への大きなうねりのなか、ガソリン車ももうひと踏んばり、頑張ってほしいものである。
全長×全幅×全高:4085mm×1750mm×1450mm
ホイールベース:2550mm
最小回転半径:5.1m
車両重量:1190kg
駆動方式:前輪駆動
サスペンション:F|マクファーソンストラット/R|トレーリングアーム
タイヤ:215/45R17
エンジン:水冷直列3気筒インタークーラーターボ
総排気量:999cc
トランスミッション:7速DSG
最高出力:70kW(95ps)/5000- 5500rpm
最大トルク:175Nm(17.9kgm)/1600-3500rpm
燃費消費率(WLTC):17.1km/l
価格:3,299,000円