生きた魚を本当に運ぶのは大変ですが、『トミカ』ならファンタジックに解決!

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.69 水族館トラック

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.69 水族館トラック (希望小売価格550円・税込)

『トミカ』の『No.69 水族館トラック』は、後部に大型水槽を備えた、水族館で魚や水生生物の輸送に用いるトラックをイメージした車両です。しかし、実は魚など水生生物はそれぞれ生活様式が異なっているため、一つの決まった形式の車で運ばれることはありません。それぞれの生き物に合わせた安全で快適な輸送方法が選ばれます。

『No.69 水族館トラック』の水槽に入っているロゴは大阪にある世界最大級の水族館、『海遊館』のもの。(PHOTO:海遊館プレスリリース)
『No.69 水族館トラック』の水槽に入っている大きな魚は、海遊館の象徴として知られるジンベエザメのようだ。(PHOTO:海遊館プレスリリース)

『トミカ』の『No.69 水族館トラック』後部の大型水槽には、大阪にある世界最大級の水族館、『海遊館』のロゴが入っています。このため、水槽の中の大きな魚は海遊館の象徴とも言えるジンベエザメだと思われます。しかし、残念ながら実際にはジンベエザメのような大きな魚を入れられる大型水槽を備えた車両は存在しないため、沖縄美ら海水族館の場合、ジンベエザメは大型トレーラーの荷台に専用のシートを張り、海水を入れて簡単な水槽の様にした車両で港から水族館まで輸送したそうです。それでも港から水族館までの間の短距離であり、ジンベエザメの健康と安全を考えると長距離輸送はたいへん危険なため、原則として行なわないのだそうです。

新潟市水族館マリンピア日本海の魚類輸送専用車両。(PHOTO:新潟市水族館マリンピア日本海プレスリリース)
新潟市水族館マリンピア日本海の魚類輸送専用車両は水槽壁に100mm厚の断熱材を用いた容量2.3立方メートルと0.6立方メートルの水槽2基を搭載。(PHOTO:新潟市水族館マリンピア日本海プレスリリース)

逆に小さな魚の場合は、最近では魚類輸送専用車両が作られるようになってきています。新潟市水族館マリンピア日本海では、2016年4月に魚類輸送専用車両を導入しています。これは水槽壁に100mm厚の断熱材を用いた容量2.3立方メートルと0.6立方メートルの水槽2基を搭載した特別仕様のトラックで、生物に対する加速度の低減に配慮し、排気ブレーキ・可変式エアサスペンションが装備されています。また水槽には底面濾過装置、コンプレッサー式散気装置、酸素注入装置、水槽内監視システム等のライフサポートシステムを備えており、内壁には魚類の衝突回避に効果的な格子模様を配すなど、輸送される魚や生物たちの安全と快適性に最大限に配慮された最新鋭の水族館用魚類輸送車両となっています。このように水族館における水生生物の輸送は、運ばれる生き物のサイズや生活環境、行動様式などにあわせ、運ばれる生き物たちの安全と快適性に最大限に配慮された車両や手段がそのつど使用されるのです。

また、沖縄美ら海水族館で使用されている活魚車は水槽の左側面がアクリルガラスになっており、小さな魚類専門とはなりますが、『トミカ』の『No.69 水族館トラック』のように移動水族館的な使い方が可能になっています。

日産ディーゼル(UDトラックス)『クオン』(初代)

さて、『トミカ』の『No.69 水族館トラック』は、その外観デザインと車体フロントに印刷されているエンブレムから見て、UDトラックスの大型トラック『クオン』です。このクオンは現在、2代目モデルとなっていますが、『トミカ』の『No.69 水族館トラック』の車両は初代モデルになります。

実はUDトラックスは2010年に社名変更しており、それ以前は日産ディーゼルという会社名でした。現行モデルである2代目クオンは2017年に登場したため、最初から『UDトラックス クオン』という車名なのですが、『トミカ』の『No.69 水族館トラック』には日産ディーゼルのエンブレムが描かれています。つまり、この日産ディーゼルのエンブレムが付いているのは、2004年に発売された初代モデルということになります。このため『トミカ』は初代クオンを再現しているらしいと推測できるわけです。

さて、2004年に登場した初代クオンは、それまでの『ビッグサム』シリーズの大型トラックで培ってきたエンジン技術、電子化技術、環境負荷低減技術などを集大成し、フラッグシップカーとして開発されました。電気系統、安全面、環境面において世界初ともなる革新性をもつ、さまざまな最先端技術が組み込まれていましたが、特に環境対応技術は高い評価を受けました。

初代『クオン』に搭載されたGE13型エンジンは、国内大型トラック初のユニットインジェクター採用エンジンで、世界初の尿素SCRシステムとクールドEGRシステムの組合わせによりNOxの大幅な低減を実現した。

日本では、2005年を目標に新長期排出ガス規制が設定されましたが、あまりに厳しい目標のため、業界では達成は不可能と考えられていました。これに対し、初代クオンは排出ガスの浄化装置に、トラックでは世界初となる尿素SCRシステム『FLENDS(フレンズ)』を採用することで環境性能と燃費性能を大幅に高め、新長期排出ガス規制適合を施行の1年前に実現しています。エンジンには、ユニットインジェクターを採用したGEエンジンシリーズを搭載、最高モデルの最高出力は410psに達していました。

初代『クオン』のキャブは風洞実験を繰り返して空力性能を大幅に向上させていた。

斬新なデザインを採用した新デザインのキャブは、風洞実験を繰り返して空力性能を大幅に向上させています。さらにユーザーの車に実際に乗り込む“同乗調査”をもとに、長時間運転しても疲れない快適な空間を確保、操作しやすいラウンドコクピットを採用し、助手席シートの座面をはね上げることで立って着替えが出来るなど、随所にきめ細かい工夫が施されています。これに加えて安全面でも、キャブ剛性の向上や世界初の二―エアバッグの採用、衝突被害軽減ブレーキの標準装備と言った対策が施されています。

2017年に登場した現行モデルの2代目クオンも、先代から受け継ぐクラス最高レベルの燃費・環境性能と力強さの両立、スムーズでストレスの少ない快適な走りをもたらすドライブライン、乗員と積荷を守ることに加えて、周囲の安全性も同時に確保する先進的な安全装備、快適かつ運転に集中できるインテリアなど、先進的なトラックとなっています。もちろん2代目クオンをベースとしたミキサー車もラインアップされています。

『トミカ』の『No.69 水族館トラック』は、実際の輸送トラックとはいささか異なる部分はありますが、海洋や水生生物たちへのロマンを大いにかき立ててくれるユニークな1台なのは間違いありません。

■日産ディーゼル クオン(初代) 主要諸元(『トミカ』のモデル車両と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):11950×2490×3060

ホイールベース(mm):7125

トレッド(前/後・mm):2040/1840

車両重量(kg):8890

エンジン型式::GE13TB型直列6気筒ターボディーゼル

排気量(cc):13074

最高出力: 279kW(379.3ps)/1800rpm

最大トルク:1648Nm(168kgm)/1400rpm

トランスミッション:6速AMT電子制御式自動変速機能付(ESCOT-A T Ⅳ)

サスペンション(前/後):リジッド

ブレーキ(前後) :フルエアブレーキABS付き

タイヤ:(前/後): 295/80R22.5 / 11R22.5-14PR

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