プジョー308に乗ってみた! 初めて触れる最新プジョーのコックピットは、驚きと感動と戸惑いの連続!

プジョー308 Allure Blue HDi
プジョー308は2021年に8年ぶりにモデルチェンジした現行モデル。そのプジョー308に初めて乗ることになったのだが、普段は装備やユーティリティが無い無い尽くしの国産旧車に乗っているだけに、そのコックピットとインターフェースはまさに隔世の感。そんな原始人ドライバーがいきなり最新の輸入車に乗って大丈夫なのか? プジョー308は初めて触るドライバーにも使いこなせるのか? これはその実録レポートである。
REPORT:大橋俊哉(MotorFan.jp)

未来感あるデザインとオーソドックスなインターフェース配置

■最近のクルマとしては意外にシンプル?
ドアを開けると水平基調に鋭角を組み合わせたSF感のあるコックピットが目に入る。とはいえ、メータークラスター、ハンドルとハンドルスイッチ、ウインカーとワイパーのレバー、タッチパネルのディスプレイ、エアコン操作系と並ぶインパネに、センタコンソールにまとめられたドライブ系のスイッチと、配置は至極オーソドックス。ミラーやパワーウインドウのスイッチはドアとこれも至って普通だ。コンソールまわりのスイッチならむしろ同クラス国産車の方が多く感じられるくらいだ。

■ドライビンポジションをセット……気になるところは?
シートは前後スライドはシート下のレバー、シート右下のレバーで座面の上下、右下のダイヤルでリクライニングとこれもまたオーソドックス。リクライニングがダイヤルなのがヨーロッパ車らしい。ランバーサポートもあるが、こちらもダイヤル式。個人的には電動よりも手動の方が調整しやすい(調整幅の自由度よりも調整にかかる時間。電動は微調整ができるのは良いのだが時間がかかる)と思っているので、これは好感度高し。
ステアリングはチルトに加えテレスコピックもできるのがありがたい。ただし、プジョーはステアリングの上からメーターを見る配置。これがi-Cockpitというヤツか。なので、ステアリングはそもそもあまり上にはできないし目一杯上げるとステアリングの上端がメーターの下端にかかるのが気になってしまう。メーター下端はプジョーのロゴがあるくらいでメーター自体の視認性は悪くならないので、ここはポジション重視でセッティングだ。

発進できない!? 308独特のドライブセレクター

告白すると筆者は初めて乗るクルマで発進できなかったことがこれまで三度あった。一度目は足踏み式のパーキングブレーキを知らず、レンタカー屋で「どうやってサイドブレーキを解除するんですか?」と訊いたこと。二度目は初代BRZのMTを代車で借りた際に、ブレーキを踏んでスタートスイッチを押してもエンジンが掛からなくてディーラーマンに「クラッチも踏んでください」と言われたこと。
そして今回の三度目は……

センターコンソールのドライバー寄りにスタートスイッチとドライブセレクターが並ぶ。[P]と[M]はボタンになっており、左のつまみがトグルスイッチになっていて、前後に動かして[P]から動かし、[R][N][D]を前後させる。トグルでは[P]にも[M]にもならない。

■トグルとスイッチの組み合わせ
ミラーを調整してブレーキを踏んでスタートスイッチを押す。さて、シフトをドライブ(D)に入れて発進……セレクターを[D]に入れる方法がわからない! [P][R][N][M]を触ってみると、[P]と[M]がボタンなのはわかったが[R][N][D]は一塊で押せない。それに左のシルバーの加飾はなんだろう?
結局、プジョーの人に訊くことになったのだが、左のシルバーのつまみがトグルスイッチになっており、これを前後させて[P]から各ポジションに変えるというシステムだった。
ちなみに、最初はトグルスイッチをワンクリックずつ動かすものだと思ってたのだが、後になって一気に動かせることに気がついた。理解できれば操作性自体は良い感じ。[M]のマニュアルモードは[D]時のみ使用できるようで、シフト操作はステアリング裏のパドルシフトで操作する。

余談ではあるが、新谷かおる先生のラリーマンガ『ガッデム』(1988-1990/ビッグコミックスペリオール連載)の作中で、主人公チームがオートマ車でラリーに出場した際に「オートマのセレクターは単なるスイッチ。どこにあってもどんな形でもいい。単に操作しやすいからレバーにしているだけ」というようなセリフがあった。
実際、オートマのセレクターにレバー以外の形が現れたのは比較的最近。昔から研究はされてきたのだろうが、新谷先生の慧眼には今更ながら驚かされた。

■それぞれ違った操作方法の組み合わせが気になる
セレクターはボタンとトグル。ドライブモードはシーソー。パーキングブレーキはレバー。と、ドライブ系のスイッチ操作が全て異なるのは、機能別に操作方法を変えて間違えないようにしているのだろうか? ただ、どのスイッチも操作方法が違うと慣れるまで戸惑うこともあった。

ドライブモードはシーソースイッチ。モードはノーマルを基準に、前側を押すとスポーツ、後側を押すとエコ。
最近では標準ともいえる電気式のパーキングブレーキ。引いて作動、押して解除も一般的。

とはいえ基本的にセレクターの操作は停止時なので、慣れなくても視認して操作すれば良かった。それはパーキングブレーキのスイッチも同様。ただ、[M]モードへの切り替え(シフト操作自体は[D]でもパドルシフトで行えるが、[M]でないとギアはホールドしない)や、ドライブモードの変更を運転しながらブラインドで操作しようと思うと慣れが必要かもしれない。慣れないうちは停止時に操作した方が安全だと感じた。

三大快適ユーティリティ……エアコン、オーディオ、ナビ

センターパネルには上からタッチパネルのモニター。
その直下中央に物理スイッチのホームボタン。
その下がエアコンの操作パネル。その左右が温度調節用のダイヤル。
最下端が左からオーディオのスイッチと音量調整ダイヤル。車両の各種設定。エアコンの風量調整。デフォッガー。内気循環。リヤウインドウデフォッガー。エアコンOFFスイッチ。ハザードランプ。

モニターとタッチパネルによりシンプルなデザインとなったユーティリティ系。スイッチ類のアイコンは基本的に昔ながらのものと変わらない、またはよく使われる欧文表記なのでわかりやすい。

■上下に分かればエアコン操作系
エアコンのスイッチ類はオーソドックスなので特に困ったことはないのだが、最初だけ温度調節ダイヤルをオーディオの音量ダイヤルと間違えた。「+」と「−」だけじゃなあ……音量ダイヤルが2つもあるわけないが、赤と青とか色が付いていればわかりやすいのに。
上下二段に分かれているのも使いにくいわけではないが、下段は両端がエアコンとは関係ないスイッチになっているのが気になりはしたものの、左端の車両設定は使わなかったし(押してみて確認はした)、右端のハザードはむしろ使いやすかった。
もちろんパネル上でも操作は可能なのだが、物理スイッチの方が操作しやすいと感じるのは慣れの問題だろう。温度調節のダイヤルはクリック感がある方が調節しやすいと思った。軽いと設定したい温度を行きすぎてしまう。これは不器用なだけか。

■え!?ナビは無いの? Apple CarPlay&Android Auto
国産車に慣れているとナビが標準装備じゃないことに驚く。タッチパネルをいじり回して無いことに気が付くのに結構かかってしまった。

iPhoneの画面をスクリーンに表示。「Mirror Screen」で、スマートフォンをタッチパネルで操作できる。

というわけでiPhoneを繋いでGoogle Mapをスクリーンに表示。Mirror Screenを使えばタッチパネルで操作できるようになるのだが、iPhone側と操作性が微妙に違ったのがちょっと困った点ではあった。
一方で、ナビのない自分のクルマではGoogle Mapをスマホ画面で見ていただけに、10インチのモニターで見ることができるのがありがたい。普段使っているナビ=Google Mapがそのまま使えるのも助かった。

アクアラインを走行中。ルートはトンネル内だが、自車の位置は海の中。

これも余談ではあるが、Google Mapは便利なのだが、長いトンネルに入ると自車の位置がズレてリルートを繰り返すことがある。今回の移動では、首都高速の山手トンネルとアクアライントンネルでこの症状が出た。アクアラインなどは他にどこに行きようもないので気にならないが、途中で東京湾内の船の航路にリルートしたのは面白かった。

USBソケットはセンターコンソールに用意。隣にはDC12V電源もある。

なお、スマートフォンはBluetoothまたはUSBで接続が可能。USBのケーブルはデータ転送も可能なものを使用する必要がある。
USBのソケットはType-Cだった。最近はデバイス側にType-Cが採用されている機器が多く、出力側もType-Cになっているケースも増えてきた。実はType-Cの出力ソケットを使うのがこれが初めてで、ライトニングケーブルはType-A(いわゆる普通のUSB)しかなかったので新しく買わなければならなかった。
規格の移行時には仕方のないところではあるのだが、まだType-Aでも良かったんじゃないだろうか……。

Type-CのUSBソケット。電源に加えクルマと接続する。
上の画像でiPhoneを置いるところには無線充電ポイントがある。

■オーディオもスマートフォンで
標準で聴けるオーディオはラジオのみ。もちろん、物理ディスクを入れる場所などない。実に今風だ。なので、スマートフォンをクルマに繋いでスマートフォン内の音楽データやストリーミングを流すことになる。
筆者の環境として試すことができたのは、AndroidスマートフォンをBluetoothで接続してAmazon Musicをかけること。これは他のBluetooth対応ナビやBluetooth機器(スピーカーやヘッドホンなど)と同様に使うことができた。環境を問わない汎用性と拡張性の高さはスマートフォン(と対応するクルマ)さまさまだ。

ステアリング右のスイッチはオーディオ系がまとめられている。電話と音声入力のスイッチもココ。ハンズフリーで使いやすかった。

音量はハンドルの右がわにある「三角形+−」で調整できる。手元で操作できるのはありがたい。となると、「上下三角」のトグルスイッチで次曲前曲にできるのかと思って操作してみたら「タッチパネルで操作してください」的な表示がメーター内に出る。ラジオの選局はこのトグルスイッチでできたのに、オーディオはできないのか。ここで操作できた方が便利なんだがなあ……。運転中にタッチパネルを操作するわけにもいかないし。

音楽に関しては、スマートフォンではなくデジタルオーディオプレイヤーやUSBメモリから直接再生できるのかも気になるところだが手持ちの機器がなかったので試すことはできなかった。最近はその辺りも全部スマートフォンを使うのかな。それと、インパネの右隅にSDカードスロットらしき穴があったのだが、これも何に使うのか確認できなかった。

正直に言いますと、原始人にはApple CarPlayとAndroid Autoを十分に使いこなすことはできませんでした! それでも、iPhoneを繋いでGoogle Mapをスクリーンで操作してナビを使えたし、Bluetooth接続で音楽も再生できたので、十分といえば十分ではあった。ハンズフリー通話も使いやすかったし。
後になってカタログやWebサイトを見るともっと色々なことができたようだが、原始人がいきなり乗って説明書も見ないでもここまで使えたのは立派だと思う。

なかなか消えないランプは不安になる?

■明るいランプでおもてなし
夜間のドア開閉時にはランプが足元まで照らしてくれる、最近のクルマのおもてなし。かなり明るいし、車内はもちろん地面まで照らされているので、足捌きも安心だ。

キャプション欄・画像は任意のサイズにドラッグ可能

もう一つ気になったのが、ドア前方上部にあるブルーグリーンのライン状の光。夜光系の反射素材かと思いきや、ちゃんとランプになっている。これはタクシーなどでよく見かける後方からの衝突防止用だろうか? と思いきや、運転席と助手席にしかなく後席のドアには付いていなかった。あくまで演出なのか、何か役割があるのか……。


■ランプ類は徐々に消灯する
エンジンを切ってクルマを降りる際にすごく気になったことがある。スタートスイッチを押してエンジンを切ってもタッチパネルは消えずオーディオは鳴ったままだった。これはドアを開けたら停止して画面も消えた。
降りてドアを閉めてスマートキーでロック。でもヘッドライトが消えない。今はオートライトが義務化され、基本的にライトを操作することは少ないのだが、エンジンを切ったのにライトがついたままというのはバッテリ上がりを思い起こさせて不安になる。そんな不安に駆られてライトスイッチを探そうとしたらようやく消灯。ロックをしてからだいたい20秒くらい。慌てすぎか。

ただ、よく見ると室内のパーキングブレーキの赤い作動ランプとエアコン類の操作パネルのアイコンが光ったままだ。これも消すには何か操作が必要なのではないか? 放置したら消えないでバッテリーが上がるんじゃないか? と、初めて乗るクルマだけにやはり不安に駆られる。
スマートキーをクルマが反応しない離れたところに置いてから車室内を見ていると、パーキングブレーキのランプは1分くらい、エアコンのアイコンは1分45秒くらいで消灯した。
どうしてこんな仕様に……と思わずにはいられないが、当然メーカーには意図があってのことなんだろう。そのうち、理由を訊いてみたいと思う。
エンジンOFF=基本的に電源OFFという意識と、ランプ類のつけっぱなしによるバッテリー上がりの恐怖が染み付いている筆者であった。

プジョーのCセグメントハッチバック

プジョー308 Allure Blue HDi(オリビン・グリーン)

今回乗ったのはプジョー308のベーシックグレード「Allure」の1.5Lディーゼルモデル「Blue HDi」。2021年に8年ぶりにフルモデルチェンジを果たした3代目で、日本では2022年4月から発売されている。

プジョー308 Allure Blue HDi
全長×全幅×全高:4420mm×1850mm×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1420kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボディーゼル
排気量:1498cc
ボア×ストローク:75.0mm×84.8 mm
圧縮比:16.4
最高出力:130ps(96kW)/3750pm
最大トルク:300Nm/1750rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:53ℓ
燃費:WLTCモード 21.6km/ℓ
 市街地モード17.1km/ℓ
 郊外モード:21.6km/ℓ
 高速道路:24.4km/ℓ
トランスミッション:8速AT
車両本体価格:344万1000円
試乗車はオプション込み3 48万 105円(フロアマット 2万1890円/ETC 1万7215円)

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著者プロフィール

大橋 俊哉 近影

大橋 俊哉

自動車部でダートラとジムカーナとラリーを少しずつかじった大学卒業後、ゲーム雑誌編集として10年過ごし…