チェロキー乗りじゃなくても気になる? ジープ・コマンダーはディーゼル搭載でラングラーと並ぶヒットモデルになれるか?

ジープ・コマンダー LIMITED 車両価格:597万円
ジープブランドの3列シートSUV、コマンダーが2.0L直4ディーゼルエンジンを搭載して登場した。「ジープにディーゼル?」と思う方もいらっしゃるだろうが、トルキーで燃費が良いなら、大歓迎だ。ジープ・コマンダー、どんなクルマか?

ジープ・コマンダー? どんなクルマ?

ジープ、というかFCA、というかPSA、は複雑だ。要するにステランティス(STELLANTIS)だ。ジープはFCA(フィアット・クライスラー)の1ブランドだったものが、現在ではステランティスの1ブランドという位置づけになる。
今回、日本導入を果たしたコマンダーは、四角い目(ライト)のSUV系の中核をなすモデルである。

ジープにはサイズの小さい方から
丸い目系:レネゲード/ラングラー/グラディエーター
四角い目系:コンパス/チェロキー/グランドチェロキー

というラインアップだったのだが、今回のコマンダーはチェロキーのポジションを受け継ぐモデルとしての役割が期待されている。

さて、そのコマンダーだ。ジープブランドのスゴイところは、どれを見ても(どのモデルかわからなくても)「これ、ジープだよね!」と思えるところだ。フロントのジープ伝統の「7スロットグリル」がどんなカタチでもジープに見えるのかといえば、きっとそんなことはないだろう。おそらく、ジープに見せるための工夫がそこかしこに施してあるのだろう。

左がジープ・コマンダー、右がジープ・グランドチェロキー
コマンダーはエンジン横置き、グランドチェロキーは縦置きレイアウトを採る。

同じタイミングで試乗したさらに上級のジープ・グランドチェロキーと並べても、コマンダーがグランドチェロキーの弟分だと誰でもわかるし、なんだか頼りになりそうで頼もしい相棒になってくれることは見た目でわかる。

まずはアウトラインを。

コマンダーはフロントにエンジンを横置きするFFベースの4WDモデルだ。プラットフォームはフィアットが開発してステランティスで使う「Small Wide 4×4 LWB」。ジープ・コンパスやアルファロメオ・トナーレと同じプラットフォームだ。

全長×全幅×全高:4770mm×1860mm×1730mm ホイールベース:2780mm 最小回転半径:5.8m
トレッド:F1580mm/R1590mm
車両重量:1890kg 前軸軸重1060kg 後軸軸重830kg

ボディサイズは
コマンダー
全長×全幅×全高:4770mm×1860mm×1730mm
ホイールベース:2780mm

ちなみに、ジープ・チェロキーの2021年モデルのサイズは
全長×全幅×全高:4665mm×1860mm×1725mm
ホイールベース:2720mm

チェロキーより10cmほど長いだけで、ほぼ同じサイズだからチェロキー→コマンダーの買い換えはスムーズかもしれない。

ジープ初のディーゼルエンジンはアリ?

鋳鉄ブロックにアルミ合金製シリンダーヘッドを組み合わせた直4ディーゼル。前方排気。GMでいうと2.0MultiJetⅡである。
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:46344732 排気量:1956cc ボア×ストローク:83.0mm×90.4mm 最高出力:170ps(125kW)/3750rpm 最大トルク:350Nm/1750-2500rpm 過給機:ターボ 燃料供給:DI 使用燃料:軽油 燃料タンク容量:60ℓ

エンジンは、ジープブランド初となるディーゼルエンジンを搭載する。2.0ℓ直4ディーゼルターボの型式は「46344732」で、相変わらずどんなルールで示される型式なのかわからないが、フィアット風に言えば「2.0 MultiJetⅡ」である。

開発はGMパワートレインズが担当。GMとアライアンス関係があった頃に開発されたディーゼルエンジンだ。鋳鉄ブロックにアルミ合金製シリンダーヘッドを組み合わせたエンジンだ。

パワースペックは
最高出力:170ps(125kW)/3750rpm
最大トルク:350Nm/1750-2500rpm

だから、今時の2.0L直4ディーゼルにしては「控え目」なスペックだ。

BMWの2.0L直4ディーゼルは3シリーズ搭載のスペックで
最高出力:190ps(140kW)/4000rpm
最大トルク:400Nm/1750-2500rpm

メルセデスの2.0L直4ディーゼル
最高出力:200ps(147kW)/3600rpm
最大トルク:440Nm/1800-2800rpm

では、コマンダーの2.0Lディーゼルターボが力不足か、といえばそうでもない。1870kgのボディを軽々と走らせてくれる。エンジンはボンネットフードの下でちょっと「カリカリカリッ」というディーゼル特有のノイズを響かせるが、さほど気にならない。高速道路を巡航していても、エンジン音はうまく抑えられている。

それを可能にしているのが、組み合わせる9速ATの存在だ。

ちょっとワイルド、でも都会で乗っても違和感なし、のインテリア。フルカラー10.25インチマルチビューディスプレイも使いやすい。
トランスミッションはZF 9HP(9速AT) 9HPは4組の遊星ギヤセットと6つのシフトエレメント(ふたつのドッグクラッチ、2組のクラッチ、2組のブレーキで構成されている。9HPはトルク容量違いで9HP48と9HP28がある。コマンダーに積むのは前者だろう。

横置きディーゼルに組み合わせるのは、ZFの9HP。9.819という当代随一のレシオカバレッジを誇るトランスミッションだ。おそらく、米・サウスカロライナ州グレイコート工場で製造された9HPのおかげで、100km/h巡航でもエンジン回転数は1500rpm以下。
ちなみに、100km/hでもギヤは9速に入っていた。

WLTCモード燃費は13.9km/L。今回、短時間の試乗だったが、76km走って燃費は14.2km/Lだった。

チェロキーも同じ9HPを使っていた。エンジンは2.0L直4ガソリンターボ(272ps/400Nm)で、WLTCモード燃費は10.0km/Lだった。

燃料単価(軽油かレギュラーガソリンか)を考えると、コマンダーの2.0Lは多くの人から喜びをもって受け入れられるはず。ジープにディーゼル?アメ車なのに燃費? と思う人は、認識がだいぶ古いかもしれない。

あ、言い忘れたが、コマンダーは3列シートを持つ。乗車定員は7名である。ルックスもインテリアも、「これぞジープ」と言える存在感があるコマンダー。3列シートに魅力を感じている人にもかなりの吸引力を発揮しそうだ。

フロントシート
セカンドシート
そしてこれが3列目シートだ。大人が長時間乗るのはキツイが、子どもならOKだろう。
タイヤはマッド&スノーを履く。
ブリヂストンのDUELER H/T
リヤサスペンションはマルチリンク式
フロントはマクファーソン式
4WDのカップリングはMOPAR製。電子制御式パワートランスファーユニットを使いドライブモードはSAND/MUD、SNOW、AUTOの3モード
ジープ・コマンダー LIMITED
全長×全幅×全高:4770mm×1860mm×1730mm
ホイールベース:2780mm
車重:1870kg(サンルーフ付きは1890kg)
サスペンション:Fマクファーソン式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:46344732
排気量:1956cc
ボア×ストローク:83.0mm×90.4mm
圧縮比:
最高出力:170ps(125kW)/3750rpm
最大トルク:350Nm/1750-2500rpm
過給機:ターボ
燃料供給:DI
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:60ℓ
トランスミッション:9速AT

駆動方式:4WD
WLTCモード燃費:13.9km/ℓ
 市街地モード10.6km/ℓ
 郊外モード13.9km/ℓ
 高速道路モード16.1km/ℓ
車両価格:597万円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…