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大先輩、立花啓毅さんのこと
筆者の大先輩であり、モータージャーナリストでもある立花啓毅(たちばなひろたか)氏は元マツダの実研部のリーダーとして、1980年の赤いFF初代ファミリアに始まり、カペラ、サバンナRX-7(FC3S)、ユーノスロードスター(NA6CE)など数々のマツダ車の車両セッティングを取り仕切ってきた実力者だ。
マツダの子会社である株式会社エム・ツー(通称:M2)では常務取締役としてユーノスロードスター(NA)をベースに走りの性能を引き上げたコンプリートカー「M2 1001」を開発、販売。マツダを引退後はマツダロードスター(NB)ベースのコンプリートカー「TD-1001R」を筆者と共に開発した経緯があり、親睦は深い。
現在もモータージャーナリストとして活躍する傍ら、クラシックバイクのレースにも出場し続けているため、多くの新車に試乗経験があると同時に自動車メーカーに在籍した経験から、独自の視点で的確にクルマを解説してくれるので、とても興味深いコメントが聞ける。今回も筆者が新型ジムニーを購入したことを伝えるといち早く、乗ってみたいと回答があったため、すぐに駆けつけた。
クルマは、「わかっている人」が作ればすべてが良くなる
軽自動車はいつも欲しいと思うが、「大人のデザイン」がない。子供っぽくて、大人の男性が乗って格好いいモデルは本当にない。その点、新型ジムニーは、「うわー、格好いい!」と正直思った。このデザインだけで購入理由になる。そんな軽自動車は久しぶりだろう。四角いボディは機能的にデザインされていて視界もいい。
後ろの窓もしっかり四角いのは好印象だ、内装もいいね。特にこの助手席前のインパネのシボは凄い!質感が高いし、これを新規で開発するのはとてもコストがかかるので大変だ。インパネのグリップバー、オリジナルのメーターフード、しっかりした掛け心地のシート、どれもしっかり作ってあって、「よくここまでやったなあ」と感心するばかりだね。
走り出してみると、エンジンも元気があっていいね。しっかり回るし、パワーとトルクは軽でも十分だ。シフトフィールはちょっとトラックみたいだけど、まあフィーリングはいいね。乗り心地もいい。嫌な突き上げが一切ない。昔のジムニーはリヤシートに座ると突き上げが凄くて、跳ねて、うんざりしたけれど、これは本当に全くの別物。エンジンとシャシーはとても洗練されていて、よくここまで仕上げたものだと、感心するしかない。
結局、エンジン、ミッション、シャシー、エクステリアとインテリアのデザインなど、全てがとても良い。つまりクルマというのは、「わかっている人」が作ればすべてが良くなるし、「わかってない人」が作るとどれもイマイチになる。新型ジムニーに乗るとそれを改めて思うね。
ジムニーは世界中のメーカーに影響を与えると思う
「今ある国産スポーツカーの中でどれがよいですか」と聞かれて、あれこれ紹介するのだけど、みんな、試乗すると「今のスポーツカーは面白くない」と言う。昔のユーノスロードスター(NA)を知っている人はあれがいいと言うが、いま、新車でそれに似たフィーリングを持つクルマはないよね。どのクルマも誰でも乗りやすいけれど、ワクワクしない。デザインはあっちもこっちも主張して、派手なクルマばかりだしね。
「新型ジムニーは革命児になる」と思うよ。きっと世界の自動車メーカーに影響を与えるはずだ。燃費、排ガス、安全性、コストなどを理由に「昔のように楽しいクルマは作れない」と言っていたメーカーの人間たちはこれでもう一度真剣にクルマを作ってくることになるだろう。良いクルマに乗ればワクワクする。そこは老若男女同じで、目利きのユーザーは見ているから、こんないいクルマを見逃すはずはない。きっと新型ジムニーの人気はこれからも続くよ。
立花氏の予言通り、この時から4年以上に渡って新型ジムニーの人気は続き、未だ1年以上のバックオーダーを抱える大変な人気車種のままだ。このままの仕様で出来るだけ長く生産してほしいし、各メーカーから目利きのリーダーが監修した刺激的なクルマが出てくれることを願いたい。