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1966年に日産と合併する前のプリンス自動車は、上質なデザインのクルマを手掛けていた。57年登場の初代スカイライン、59年のグロリアには堂々とした風格が感じられ、63年の2代目グロリアは水平基調のスマートなボディを持つ。合併の直後67年に発売された3代目グロリアは、縦方向にヘッドランプを並べたフロントマスクを含め、60年代のカーデザインの中では際立って美しい。
この流れを予感させたのが、62年に登場したスカイラインスポーツだ。4灯式のヘッドランプは左右それぞれが斜めに配置される「吊り目」状のデザイン。中央にはメッシュのラジエターグリルが装着され、日本車とは思えない気品を感じさせる。
ボディはクーペとコンバーチプルの2種類。ボディサイドに施されたレリーフが美しい。トランクスペースが収まるリヤフェンダーは、後ろに向けて緩やかに下降する。この角度とトランクフードの長さも絶妙だ。
車内に目を向ければ十分な厚みを持たせた本革のセパレートシートが装着され、メーターのメッキリングも緻密に造り込まれている。ステアリングホイールは、細身の3本スポークタイプ。これもクルマ全体の印象にマッチする。
デザイナーはジョバンニ・ミケロッティとされ、当時のプリンス自動車には、この美しいデザインを具現化する能力が備わっていたわけだ。
スカイラインスポーツのシャシーは、57年に発売された初代スカイライン、この発展型となる初代グロリアと共通になる。2535mmのホイールベースも等しい。
ボディサイズは全長が4650mm、全幅が1675mmだから、5ナンバー規格をほぼ使い切った。初代グロリアと比較しても290mm長く、伸びやかな外観を生み出している。
エンジンは直列4気筒1.9ℓのOHVで、初代グロリアと同じタイプ。日本気化器製のシングルキャブレターを装着し、最高出力は94ps(4800rpm)、最大トルクは15.6kgm(3600rpm)になる。
フロントサスペンションは初代スカイラインやグロリアと同じで、フロント側はダブルウイッシュボーン式、リヤ側はリーフスプリングを用いたド・ディオンアクスルだ。
東京地区の店頭売り渡し価格は185万円。同じ年に2代目に一新されたグロリア1900DXが117万円だから、まさに憧れの存在。プリンス自動車の技術水準が高いことを実感させるクルマであった。
搭載されるエンジンは1.9ℓ
SPECIFICATIONS:Skyline Sport Coupe (1962)
〈寸法重量〉
全長×全幅×全高:4650×1675×1360mm
ホイールベース:2535mm
トレッド前/後:1338/1374mm
車両重量:1220kg
乗車定員:5人
〈エンジン〉
GB30 直列4気筒OHV
総排気量:1862
最高出力:94ps/4800rpm
最大トルク:15.6kgm/3600rpm
〈トランスミッション〉
4MT
〈駆動方式〉
RWD
〈ステアリング型式〉
ウォーム・ローラー式
〈サスペンション〉
前・ダブルウイッシュボーン式、後・ド・ディオンアクスル式リジッド
〈ブレーキ〉
前・ドラム、後・ドラム
〈タイヤサイズ〉
5.90-15
〈最高速度〉
150km/h
〈価格〉
185.0万円(コンバーチブル 195.0万円)