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箱型5ナンバーステップワゴンの登場
1990年代に入ると、衝突安全性確保のためにワンボックスはフロントに短いボンネットを備えるようになる。衝突時に衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンを設けるためだ。
この分野にホンダも参入を決意。当時のワンボックスは、1列目シート下にエンジンを搭載するキャブオーバー形式が一般的だった。だが、ホンダはワンボックスの経験がない。つまりベースとなる自社モデルが存在しなかった。さてどうするか?
ホンダはオデッセイと同様に、乗用車をベースにすることとした。FF車しかなかったのでFFベースにしたワンボックスを開発。そうしてでき上がったのが1996年に登場した初代ステップワゴンである。
基本的にFRとなるキャブオーバーに比べ、FFベースゆえ極めて低いフロアを達成。全高も1.8m超えとたっぷり取り、広大な室内スペースを実現した。3列目シートまで十分以上の実用性を確保し、リアには片側ながらスライドドアを採用した。
また、ほかのキャブオーバー形式のワンボックスと異なり、商用バンを設定しなかった。商用モデルには低コストと過酷な使用にも耐える頑強さが求められる。それらは乗員の快適性に関してネガティブとなる。対して、ステップワゴンは純粋に乗用モデルとして快適性の追求ができた。ドライバビリティもキャブオーバー形式のワンボックスに比べ圧倒的に優位だった。
ホンダはオデッセイに続きステップワゴンも大ヒット。それだけではなく、ワンボックス進化型のスペース重視ミニバンはFF車をベースとすべし、という現在まで続く不文律を作り上げてしまった。トヨタや日産もステップワゴンに追従。初代ステップワゴンもまた名車であり、日本のミニバン文化にホンダは多大な貢献をしたと言える。
ホンダが展開したムーバー戦略とは?
1980年代からワンボックスカーや、パジェロなどのクロカンが人気を集めた。まとめて「RVブーム」などと呼ばれていたが、ホンダはそこに参入しなかった。満を持して1994年にオデッセイを投入。1995年にCR-Vの投入に合わせ、こういった分野のクルマを「クリエイティブ・ムーバー」と名付けた。「生活創造車」という意味を込め、運転だけでなく生活をより豊にしてくれるクルマとして、ムーバー戦略を採用した。
SWもブームとともに登場
ホンダは個性派ミニバンを続々と投入
他社も追従、ミニバンブーム確立へ
初代ステップワゴンの成功は、その後のミニバン勢力図を一気に塗り替えた。いち早く1991年に短いボンネット付きのワンボックスとして登場した日産バネットセレナは当初は好調だったが、ステップワゴンの登場でジリ貧となり、1999年登場の2代目からはFF車ベースで乗用モデルのみの仕様に改められた。トヨタも1996年にキャブオーバー型のライトエース・ノア/タウンエース・ノアを登場させるも、ステップワゴンに惨敗。2001年にフルモデルチェンジされたノアは、兄弟車のヴォクシーを新設定した。やはりFFベースの乗用車で商用モデルは設定されなかった。
以来現在に至るまで、ステップワゴン、セレナ、ノア/ヴォクシーは箱型ミニバンとして三つ巴の戦いが続いている。
ホンダがステップワゴンを作らなければ、もしかすると現在もキャブオーバー型ミニバンが跋扈していたかもしれない。ホンダの功績は極めて大きい。
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]