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「最高級新世代1BOX」とデビューした日産・エルグランド
1980年代には一大勢力となっていたワンボックス。だが、1990年代に入ると、衝突安全性能を確保するためにクラッシャブルゾーンが必要となり、短いボンネットを備えるようになる。つまりミニバンのようなフォルムに進化していった。
隆盛を極めたワンボックスといっても、中身はさまざまだった。そのなかには、大きさこそ5ナンバーサイズに収まるものの、上級車として位置づけられるモデルがあった。その代表格がトヨタのハイエースと日産のキャラバンである。2.8Lや3.0Lの大排気量エンジンを積むモデルもラインアップしていた。
上級モデルといえど例に漏れず衝突安全性能を確保しなくてはならない。先に動いたのはトヨタで、1995年にグランビアを登場させる。全幅1.8mという堂々としたサイズのミニバンで、その中身はというと欧州仕様のハイエースを国内向けに改良したモデルだった。
一方、日産はまったく異なる手法を採用する。北米で「パスファインダー」と名乗っていたSUVの2代目テラノをベースにミニバンとして、1997年にキャラバン・エルグランド/ホーミー・エルグランドを登場させる(ホーミーはキャラバンの兄弟車)。テラノベースを端的に表しているのがホイールで、初代エルグランドのホイールは6穴、PCDは139.7と当時のオフロード4WDのものと同じだった。
初代エルグランドは全幅1.8m級の堂々としたボディで、助手席側にリアスライドドアを備え、3列シートで7/8人乗りが可能でFRが基本。つまりグランビアとあまり相違はない。だがこの2台のライバル対決はエルグランドが圧勝する。
グランビアのテーマは「これからのワンボックスカー」。もともとが欧州仕様らしくあっさりとしたスタイリングで、室内も至ってシンプル。主力エンジンは2.7L直4だった。
一方、エルグランドのテーマは「最高級新世代1BOX」。メッキをあしらった大型のグリルを備え、室内も豪華装備でまさしく高級車にふさわしい内容だった。さらに主力エンジンは3.3LV6(後期モデルは3.5L)とパワフルかつスムース。グランビアとは目指す地点が大きく異なっていた。
グランビアは欧州向けハイエースがベースのため、その本質は商用バンと言える。飾り気がないのも当然だったのだ。この当時、短いボンネット付きワンボックスには、商用バンも設定しているクルマが多かった。
商用バンはコスト面に厳しく、過酷な使用も想定した頑丈さが求められる。それは乗用ユースにとってネガな部分ともなり得る。エルグランドは商用バンを用意しなかった。100%乗用ユースとして高級ミニバン路線を採ったのは慧眼といえる。
初代エルグランドは高価なモデルだったにもかかわらず、ときには月販1万台を超えるなど圧倒的人気でミニバンブームを牽引した。大型高級ミニバンの元祖と呼べるモデルだった。
機能から見る高級化! 日本ならではのセンス!?
グランビアは1999年のマイナーチェンジを機に、兄弟車「グランドハイエース」が登場。同年、そんな両車に設定されたのがモデリスタの手による豪華装備仕様「ハイルーフラウンジ」だ。ベース車よりも215mm高いハイルーフ版で、ルーフの内側に贅沢なウッドパネルを装備する。前方にエアコンの吹き出し口を設け、天井部分には細かく大量に敷き詰められたLED照明に加え、4カ所のハロゲンスポットランプが備わり、まさしくラウンジのような車内空間を演出できる。キャンピングカーとして8ナンバー登録が可能だった。ハイルーフ+ウッドパネル+室内照明のA仕様と、ハイルーフのみとなるB仕様を設定した。オプションでドアトリムやローダウンキットなども用意されていた。
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]