電子制御ダンパーならではの追加アップデートで走りが変わる
熱心なスバルファンには、BH/BE型レガシィのグレードGT-B E-tuneなどから懐かしい響きでもある「e-Tune」。現在、その意味するところは、スバル初となる電子制御ダンパーのアップデートサービスとなっている。対象車は、現行型レヴォーグの1.8Lターボ「STIスポーツ」と2.4Lターボ「STIスポーツR」。取材時はA型とB型のみを対象としたが、最新仕様となるC型も今夏より対応予定となる。
同メニューでは、ZF製電子制御ダンパーを用いて乗り味や走りを変化させる「ドライブモードセレクト」のサスペンション設定の「コンフォート」と「スポーツ」の減衰力特性を変更。「コンフォート」では、路面変化による突き上げ感を限界まで抑えることで、乗員全員がより快適な移動を楽しめるように。そして、「スポーツ」では、よりロールを抑えたシャープなコーナリングを実現し、走りの刺激を強めている。
その開発は、レヴォーグ開発チームが担当。現行STIスポーツに関しては、スバルとSTIの共同開発体制であるため、同開発にも、STIが携わっている。つまり、STIチューンともいえるのだ。
開発メンバーである藤井さんによれば、レヴォーグに続き、WRX S4と、電制ダンパーの開発を進めていく過程で、更なるチューニングの可能性を感じたという。もちろん、レヴォーグのキャラクターを鑑みて、標準セッティングがベストという考えに変化はなく、よりモードに特化した味付けに取り組んだ。その狙いは、現行レヴォーグSTIスポーツ購入者の期待に応えること。先代から乗り換えた人からは、よりスポーツ性を求められた一方で、他社モデルから乗り換えた人からは、「コンフォート」でも乗り味の硬さを指摘されたという。その対極にある要望を叶えるものなのだ。
施工を行うのは、全国のスバル特約店で、ソフトウェアの書き換えなどで作業時間は30分ほど。何よりも工賃込みで4万円ほどの価格も嬉しいところ。これは新車購入後に、STIパーツなどを中心に、カスタマイズを楽しむユーザーが多いことから、手頃な価格も重視したという。また施工後は、車両側でe-Tuneをオフには出来ないが、施工車両にはライセンスが付帯し、工賃負担のみで標準に戻すだけでなく、再アップデートも可能なのだ。
ワインディングを中心に、STIスポーツRの標準車と「e-Tune」装着車を比較したが、その違いは歴然たるもの。まず「コンフォート」では、標準車の方が乗り心地の硬さを感じるほど。しかし、誤解してはいけないのは、決してソフトな足に仕上げたのではなく、より路面からの入力をダンパーで受け止める力を高めることで、よりしなやかな走りを実現している。だから、持ち味の安定感ある走りの良さは、スポイルされることなく、「コンフォート」でも、走りの良さは健在。より荷重移動や姿勢変化が感じられるので、丁寧な運転にも繋がりやすい。「スポーツ」では、より足のしっかり感が増し、姿勢変化が抑えられるため、コーナリングで、より鋭い進入とワンテンポ早い脱出が可能となり、走りの鋭さが増している。その違いを理解するには、「インディビジュアル」モードで、サスペンションだけを変更すると分かりやすい。走り込んでいくと、個人的には「e-Tune」装着車の方が好みだったが、同時に、如何なるモードでも、走る歓びを体現した標準仕様の良さも再認識できた。
純正品だけに、ネガティブな要素は皆無。運転の愉しさや乗員の感じる安心な走りという面では、ドライバーの運転向上を狙ったSTIフレキシブルパーツとも重なるスバルらしい提案だと思う。まずは試乗車で、違いを体感して欲しい。きっと内容の濃さに唸ってしまうはずだ。
【e-TuneのPOINT】
● サスペンション交換をせずに乗り味の幅が増える
● 価格は工賃込みで4万円以内(施工時間約30分)
● 作業は最寄りのディーラーでOK
● 制御画面などの見た目は変わらない
● 専用立体エンブレム付属
▷いまどきフットワークチューン まとめはこち
STYLE WAGON(スタイルワゴン)2023年8月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]