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商用ターゲットからホビーユースへ!
「軽バン」への注目度が上がっている。とくに車中泊ブームと軽バンは相性がよかったことが、その背景にあるだろう。軽自動車のなかで、もっとも荷室スペースが広いといえるのが荷物を運ぶために特化したボディを持つ軽バンであり、そのパッケージングはレジャーシーンにおいても優位性がある。
あらためて整理すると軽バンというのは、軽商用車の1種。荷台がむき出しなのが軽トラックで、荷台がボディと一体化しているのが軽バンだ。そして軽バンは「キャブオーバーバン」と「ボンネットバン」に分類される。キャブオーバーバンはエンジンの上にキャビンが乗った形状を指している。具体的には、スズキ・エブリイやダイハツ・ハイゼットカーゴ/アトレーとそれらのOEMモデルがキャブオーバーバンとなる。これらはFRベースなのも特徴だ。ちなみに、三菱のミニキャブバンのエンジン車はスズキからのOEMだが、BEV仕様となるミニキャブEVは三菱の独自設計ボディとなっている。なお、統計ではいずれもキャブオーバーバンに分類される。一方、ボンネットの中にに独立したエンジンスペースを持つのがボンネットバンで、ホンダN-VANやスズキ・スペーシアベースといったFFベースモデルが分類される。
さて、ここでメインテーマとしたいのは、ホンダから登場した軽バンBEVの「N-VAN e:」だ。ボディフォルムはエンジン車のN-VANと同じだが、内装デザインの変更など、より使い勝手の良いラゲッジスペースを実現している。つまり、ボンネットバンとしては最新の知見で設計された1台になっているといえる。
そんなN-VAN e:を、同じホンダNシリーズとしてアーキテクチャーの共通点も多い軽乗用車N-BOXと比べることで、とくに個人ユースにおける軽バンを選ぶメリットが見えてくるはずだ。
結論からいえば、ホビーユースとしての自由度は軽バンのN-VAN e:に圧倒的アドバンテージがある。左ページで紹介しているよう軽バンという規格においては後席スペースがラゲッジより小さくなければならないため、軽乗用車のN-BOXと比較するとシートは貧弱で、フルフラットシートのようなアレンジも持たない。しかし、後席はもちろん助手席まで格納できるN-VAN独自の設計による2mを超えるフラットなスペースは車中泊のみならず、あらゆるホビーシーンでの可能性を感じさせてくれる。マットを敷いて寝床をつくったり、ボックスを設置して趣味の道具を収めたりと、ユーザーによるアレンジや工夫しがいのあるラゲッジスペースなのだ。
ただし、シートアレンジだけで車中泊をするならば、クッション性に優れたシートで横になれるN-BOXに優位性があるのも事実で、身長170cmの大人であれば十分寝転ぶこともできる。軽バンをホビーユースで使いこなすには、ユーザー自身のパッションとアイデアが欠かせない要素であることも覚えておきたい。

軽自動車人気No.1の「N-BOX」と違いを比較


お、N-BOXがオフセット配置になっているのはエンジンの冷却性を確保するため。







VAN e:は“真っ平”なラゲッジルームを生み出すことができる。助手席もダイブダウン格納でき、後端からインパネまでのフラットフロアは、軽バンの中でもN-VANだけの特徴だ。
車検期間は軽商用車が2年、軽乗用車は3年
軽乗用車は新車でナンバーをつけてからの初回車検までの期間は3年であるが、軽商用車は2年に短縮される。ただし、それ以降が2年ごとなのは共通。登録車の商用車は毎年車検で手間がかかるのに対し、軽商用車は2年ごとの車検となるのも個人ユースで好まれる理由だ。
1年間の税金が安くコスパ抜群! 軽商用車は5000円、軽乗用車は1万800円
毎年4月1日時点の所有者に課される軽自動車税、軽商用車は軽乗用車の半額以下となっているためランニングコスト低減には効いてくる。さらにN-VAN e:の場合はグリーン化特例により初回のみ75%軽減となるため、最初に収める軽自動車税は1300円で済むのだ。
ホンダ「N-VAN e:」は仕事、遊び車の理想系!?
レジャーユースの素材としても軽バンが優れていることは、いまさら主張する必要もないだろうが、それでもBEVの軽バンを選ぶ必然性については疑問符が浮かんでいる人も少なくないかもしれない。
ホビーユース向けの「FUN」グレードで比較すると、エンジン車のN-VANはターボのFF車でも188万3200円で、N-VAN e:の291万9400円は最大55万円の補助金を考慮しても割高に見える。
しかし、一度でもN-VAN e:を運転すれば、価格差以上の満足度があることに気付くだろう。いかにターボであってもエンジンが唸るようなきつい登り坂というのは軽自動車に乗っていると出会うことはある。そんなきつい坂こそBEVの得意とするシチュエーション。微妙な速度コントロールは容易にできるし、坂道発進をするハメになってもアクセルを軽く踏み込むだけ。こうした日常的な余裕はストレスの軽減に直結する。
パワートレイン由来の振動やノイズも小さく、快適性のレベルは高い。そうした部分に価値を見出すのであれば、車両価格差は十分に「もとが取れる」といえるだろう。
またBEVの特徴として駆動用バッテリーから電力を取り出して家電などを動かすことができるというのはメリットだ。アウトドアレジャーの可能性を広げてくれるという点でも積極的にBEVの軽バンを選ぶ意味はある。









グレード名 e: FUN
全長×全幅×全高(mm) 3395×1475×1960
荷室内側寸法(長さ左/右×幅×高mm) 1495/1335×1230×1370
最低地上高(mm) 165
ホイールベース(mm) 2520
車両重量(kg) 1140
最小回転半径(m) 4.6
WLTCモード 一充電走行距離(km) 245
WLTCモード 交流電力量消費率(Wh/L) 127
最高出力[kW(ps)] 47(64)
最大トルク[Nm(kgf・m)] 162(16.5)
乗車定員(名) 4
タイヤサイズ 145/80R13 82/80N LT
価格 291万9400円(2WD)
自動車誌MOOK 最新軽自動車カタログ 2025より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]