ハイブリッド、EVを設定するコンパクトSUV
ステランティスは、フィアットをはじめ、プジョーやジープなどの多彩なブランドを展開している。車体やパワートレーンなどを共有できるのが強みで、コンパクトSUVの新型アルファロメオ・ジュニアは、フィアット600と中身は同じといっていい。筆者は先に日本に上陸したフィアット600のマイルドハイブリッドにも試乗し、内外装だけでなく、走りも各ブランドにふさわしい味付けがされているのを確認できた。
外観は、同じプラットフォームを使っているとは思えないほどアルファらしいこだわりが詰まっている。顔つきで目を惹くのは、「トライローブ」と呼ぶ三つ葉形状のフロントグリルで、同ブランドの伝統を踏襲。一方で新鮮味にあふれているのが「コ」の字型の3眼ヘッドライトまわりで、ヘッドライト下側のガーニッシュもグリルに向かって大きな「コ」の字を描く。グリルは2タイプあり、導入限定車の「スペチアーレ」とEVの「エレットリカ」は、同ブランドの象徴である「スクデット(盾グリル)」を切り抜いた「プログレッソ」と呼ぶ意匠になる。マイルドハイブリッドの「イブリダ コア」と「イブリダ プレミアム」は、グリル内にアルファロメオのブランドロゴを配した「レジェンダ」になる。足元に5ホールデザインのアルミホイールを設定したり、リアウインドウと一体化したドアハンドルを採用するなど、細部へのこだわりもアルファらしさに満ちている。
黒を基調としたインテリアも同ブランドらしい仕立てになっている。テレスコープ(望遠鏡)デザインのメータークラスターやステアリングに配されたブランドエンブレムなどは、レース活動や数多くのスポーツモデルを送り出してきた115年という長い伝統を感じさせる。限定車の「スペチアーレ」は、レザー&アルカンターラステアリングやアルカンターラ張りのトリムになり、スポーティかつハイクオリティな室内空間を実現。
走りの良さを予感させるドライバーオリエンテッドなコクピットに収まると、都市型SUVらしい少し高めの視界が広がる。少し気になるのが、左足が押されるように感じること。フットレストは備わるものの、前方に伸びるセンタートンネルが運転席側に向かって若干斜めになっていて、左足まわりが狭く感じられるのだ。助手席側の右足側は広く、右ハンドル化のネガを若干抱かせる。
試乗したのはマイルドハイブリッド仕様で、軽めの操舵フィールが印象的なパワステは、遊びも少なくクイックなハンドリングになっている。そのため、多様なコーナーが連続する首都高速でもミズスマシのようにスイスイとクリアしていく。今回は、より高速域での操縦安定性などを試す機会は少なかったが、軽快なフットワークという点では十分に応えてくれる。なお、マイルドハイブリッドでありながらもモーター発進が可能なパワートレーンは、速度が高まると街中の速度域でもターボエンジンが主役になり、ダイレクト感のある変速フィールが際立つ6速デュアルクラッチトランスミッションと相まってスポーティ。多くの日本製ハイブリッド車のようなスムーズさとはいい意味で一線を画している。同じ車体を使うフィアット600は、明るい内外装と室内の開放感という美点があったが、ジュニアはレーシーさにあふれている。










LINE UP
▶ジュニア イブリダ コア(マイルドハイブリッド) 420万円
▶ジュニア イブリダ プレミアム(マイルドハイブリッド) 468万円
▶ジュニア イブリダ スペチアーレ(マイルドハイブリッド) 533万円
▶ジュニア エレットリカ プレミアム(電気自動車) 556万円
ジュニア イブリダ プレミアム/スペチアーレ
●全長×全幅×全高:4195×1780×1585mm●ホイールベース:2560mm●車両重量:1330kg●エンジン:1199cc・直列3気筒ガソリンターボ●エンジン最高出力:100kW(136PS)/5500rpm●エンジン最大トルク:230Nm/1750rpm●モーター最高出力:16kW(22PS)/4264rpm●モーター最大トルク:51Nm/750-2499rpm●駆動方式:前輪駆動●サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/トーションビーム●ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ディスク●タイヤ:215/55R18
STYLE WAGON(スタイルワゴン) 2025年8月号 No.356より



