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箱型トールスタイル、そして高級化という二分化
1990年代前半、日本で「ミニバン」という言葉・概念はまったく浸透していなかった。それを一変させたのが、1994年に登場したホンダの放ったオデッセイで、たちまち大ベストセラーカーに上り詰めた。
当然、他メーカーも黙ってはおらず、次々とオデッセイのライバルとなるクルマを開発して市場に投入する。1996年トヨタはイプサムを登場させた。日産は1998年にプレサージュを市場投入。オデッセイに味をしめたホンダも、2000年に5ナンバーサイズの弟分、ストリームを登場させ、トヨタも同様のモデルを2003年に投入しウィッシュと名付けた。マツダや三菱も参入し、まさしくミニバンブームと呼ぶにふさわしい状況となった。
そしてもうひとつの流れがある。1980年代に隆盛を極めたワンボックスは1990年代に入ると、衝突安全性確保のため、クラッシャブルゾーンとなる短いノーズを設けたモデルへと変容していった。中身は従来どおりのキャブオーバー型のFRだった。だがホンダはワンボックスを作ったことがなかったこともあり、FF車ベースに1996年、ステップワゴンを登場させる。ワンボックスとは一線を画すハンドリングや、FFベースゆえの低床で広大な室内などで大ヒット車となる。
こちらも他メーカーが追従。日産は1999年にモデルチェンジでFF車ベースのセレナを投入。トヨタも2001年、ワンボックスベースのライトエースノア/タウンエースノアのフルモデルチェンジで、FFのノア/ヴォクシーを登場させた。まさに百花繚乱、ミニバンブームはますます盛り上がった。
ここで一考。オデッセイとオデッセイに追従したミニバンと、ステップワゴンとステップワゴンに追従したミニバンとでは、明確な違いがある。オデッセイタイプは、走行面は普通の乗用車に負けないくらいの性能を確保しているが、室内はそれほど広くない、という特徴をもつ。
一方、ステップワゴンタイプは、走行面は重心も高めでそれほど高性能ではないものの、高い全高を活かした広大な室内スペースが最大の長所だ。
ミニバンブームもひと息ついた2010年代に入ると、両車の差は決定的になってくる。オデッセイタイプは勢いを失い、次第にスペース重視のステップワゴンタイプに人気が集約していった。実際、オデッセイタイプは次々と姿を消していった。
ブームの熱が冷めたなど、理由はさまざまあろう。そもそもミニバンの魅力とは本来何か? という点からすると、それはマルチユース性だ。どんな使い方にも対応できるということ。であれば、3列目シートまで大人が実用可能な広さを確保し、シートをたためば広大な荷室になり、底床かつスライドドアで子供やお年寄りでもラクに乗降できるなど、よりマルチに使えるのは断然ステップワゴンタイプのほうだ。ゆえに生き残ったのも必然なのかもしれない。
輸入車も含めて他のジャンルは個性で勝負
上記5台以外にもミニバンはあって、やはり「ニッチ」なところで人気を博している。たとえば三菱のデリカD:5は2007年に登場したミニバンだが、SUVのアウトランダーをベースにしたモデルとなる。当初は2WDも用意したが現在は4WDのみとなり、185mmもの最低地上高でSUVに負けないような悪路走破性が特徴。いわばSUVとミニバンとのクロスオーバーで世界的にも稀有な存在だ。存在感がある個性的なデザインも人気となっている。輸入車のミニバンも人気があって、VWのゴルフトゥーランのように、乗用車の延長線にあるモデルが主流。オデッセイタイプで日本にもマッチする。モデル数自体は少なくなったが、広いユーザーニーズに応える内容となっているのが、現在のミニバン市場だ。
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]