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SUVへの注目度が増した、初期のヒット作たち
1990年代の日本。SUVという用語はまったく浸透していなかった。ところが今からみるとSUVだった、というクルマが多数登場していた。
それには理由がある。1980年代後半から三菱パジェロなどが大人気となった「四駆ブーム」が巻き起こっていた。さらに1990年頃からレガシィなどの「ワゴンブーム」も発生。これらをひっくるめて「レクリエーショナル・ビークル」などとも呼ばれ、略して「RVブーム」として人気を博した。
なんの変哲もない普通車もRVっぽく仕上げて発売されることもあった。今となってみれば、クロスオーバーSUVの先駆けともいえる。日本は独自の道を歩んでいたのだ。
SUVならぬ「四駆ブーム」が1980年代後半から巻き怒った日本だが、1990年代半ばには次第にそのブームも終焉していくことになる。
理由はいくつかある。ひとつはバブル崩壊で、豪華なクロカン車は価格が高すぎた。また、ユーザーにとってオーバースペックだったことも理由のひとつ。本来、道なき道を走るクロカン車は普段使いには必要ないし、大きく重いので燃費も悪かった。さらに、クロカン車は主にディーゼルエンジンを搭載していた。当時の排ガスの浄化はレベルが低く、黒い煙をモクモクと吐くディーゼル車も多かったのだ。
それが次第に毛嫌いされ、1990年、石原慎太郎都知事の「ディーゼル車NO作戦」が完全にトドメを刺した。
そのようななか、日本でスマッシュヒットとなったSUVも数は少ないが存在した。日本の交通事情でも持て余さない、日本的SUVなら日本でも人気が得られる……、を証明したのがトヨタのRAV4とホンダのCR-Vである。トラックベースというSUVの定石から外れ、ともに乗用車ベース。クロカンのような高い走破性はないが、ガソリンエンジンを搭載し燃費も良好と、まさに日本的SUVの資質を満たしていた。
クロカン勢優勢だった日本市場
今でこそSUVの範疇に入るものの、当時はまったく別ジャンルだったクロスカントリー4WD、略してクロカン。火をつけたのは三菱パジェロで、1982年登場した頃は静かだったが、翌年5ドアモデルを登場させるとジリジリと人気が上昇。毎年のように豪華仕様を登場させ、しかもよく売れた。トヨタのランドクルーザーやハイラックスサーフ、日産のサファリやテラノなども販売を伸ばして四駆ブームとも言われた。また1987年に映画『私をスキーに連れてって』が公開されると空前のスキーブームが巻き起こり、「四駆は雪道に強い」というイメージから四駆ブームに拍車をかけた。
SUVに長けたスバル
かつて、ブラットというレオーネベースのピックアップがあったが消滅。SUVはトラックベースが定石だったが、トラックをそもそも製造してなかったスバルは、大黒柱のレガシィをベースにSUV化してグランドワゴンを登場させた。クロスオーバーSUVの先駆けであり、その後アウディのオールロードなどが誕生するきっかけになったともいえる。
意外に早かったマツダ
ピックアップのプロシードをベースにしたプロシードマービーで1991年にSUV参入。2000年にフォードと共同開発のトリビュートを登場させるがヒットには至らず。路線を大幅に変更したのがCX-7とCX-9だ。2012年登場のCX-5につながるクオリティがあった。
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STYLEWAGON(スタイルワゴン)2023年6月号 より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]