ホンダは、Honda 0シリーズで一人ひとりに最適化した移動体験を提供するため、ホンダ独自のSDVの実現に取り組んでいる。Honda 0シリーズのE&Eアーキテクチャーは、クルマのシステムを制御する役割を持つ複数のECUをコアECUに集約するセントラルアーキテクチャー型が採用される。SDVの中心となるコアECUは、AD/ADASといった運転支援やパワートレイン制御、快適装備など、車両のさまざまなシステムを一元的に管理する。そのため、コアECUにはより高性能なSoCが必要となるが、そこにおいては、従来に比べて高い処理能力と同時に、それに伴う消費電力の高まりを抑制することが求められる。
ルネサスは、自動車OEMが取り組むSDVの実現に向け、車載用半導体の開発に力を入れている。ルネサスはマルチダイチップレット技術※3を活用して、SoCにAIアクセラレータ※4を追加することにより、AI性能の向上とカスタマイズを可能にした。
今回、ホンダの目指すSDVを実現するため、両社はコアECU向け高性能SoCの開発契約の締結に至った。この高性能SoCは、TSMCの自動車向け最先端プロセスである3nmテクノロジーを使用することで、消費電力を大幅に削減することが可能。マルチダイチップレット技術により、ルネサスの汎用車載半導体である第5世代「R-Car X5シリーズ」SoCに、ホンダ独自のAIソフトウェアに最適化されたAIアクセラレータを組み合わせたシステムが実現される。この組み合わせにより、自動運転など知能化に必要な高いAI処理性能を省電力で実現することができるとともに、チップレット技術を活用することにより、将来においても必要な機能と性能に合わせて柔軟にカスタマイズでき、機能拡張も可能。
【注釈】
※1 2025年1月 ルネサス調べ
※2 TOPSはTera Operations Per Secondの略。整数演算を1秒あたり何兆回できるかを示す数値でAI処理の性能を表す単位。本ターゲット数値は、sparse(疎)AIモデルを実行した値
※3 異なる機能を持つチップ(ダイ)を複数組み合わせて1つのシステムを構築する技術
※4 AI(人工知能)の計算処理を高速・高効率に行うために設計されたハードウェア