「新型ZにVR38DETTをスワップ!?」アメリカのZマイスターが駆るドリ専RZ34が凄まじすぎる!!

Z33/34のシャシーを熟知したドリフターがRZ34をチューン!

目指すは4度目のフォーミュラ・ドリフトチャンピオン

日本発祥のD1GPを模範に、2004年からアメリカでスタートしたフォーミュラ・ドリフト(通称FD)。20年を数えるその歴史で最多タイとなる3度のチャンピオン経験を誇るのが、クリス・フォースバーグである。

2009年は350Z(Z33)、2014年と2016年は370Z(Z34)と、常にZで栄冠を獲得してきたクリス。近年は1200〜1300psが指標ともなるFDのパワーウォーズに追随するため、使用するエンジンは目まぐるしく変えてきた。

最初はLS型のV8に始まり、日産のSUV&トラック用エンジンである5.6LのVK56DE型V8自然吸気、さらにはVQ35HR型V6ツインターボへとスイッチ。そして2020年には初めてZ34にR35型GT-RのVR38DETT型V6ツインターボを載せている。

自らマシンを製作するクリスは、愚直に同じシャシーを使い続けることでノウハウを蓄積。そんな長年の頑張りが報われたのが、2022年シーズンの開幕直前だった。日産が北米向けのRZ34型を正式発表したのが2021年8月。発売は2022年春頃とアナウンスされたが、それはまさにFDの開幕とも一致する。

いち早くモータースポーツの実戦でRZ34が走る姿を世界に示すのがプロモーション的にも得策ということで、クリスは水面下でRZ34を供与され、マシン作りをスタートさせていたのだ。

すでにZ34にVR38DETTを搭載するマシンメイクは経験済みだったため、作業は急ピッチで進められた。VR38DETT本体はテキサス州にあるエンジンビルダーのBoost Logicが強化パーツで組み上げ、ドライサンプ化も実現。

CJモータースポーツ製の大型インテークマニホールドやPWR製インタークーラーを備え、エンジン前方に向かって伸びるワンオフのEXマニにギャレットG30-770をマウント。

カーボンボンネットを突き抜けるダンプチューブにターボスマート製ウエストゲートを備え、車両後方に向けてマグナフロー製のエキゾーストパイプも這わせる。制御はモーテックM150で行ない、最高出力は1300psを実現。

ホイールは日本でも人気の高いロティフォームの鍛造モデル“WGR-M”の18インチ。タイヤはスポンサーでもあるGTラジアルのSX2-RSを組み合わせる。

車高調はBCレーシングのZRコイルオーバーで、ブレーキはウィルウッドの前6ポット、後4ポットキャリパーとドリルド2ピースローターを採用。

リヤのスタビライザーは先端にスプラインを切った極太のシャフトに、テーパー形状の極厚アームを取り付けるNASCARスタイルを採用。その極厚アームとスタビリンクの間には、回転させられる板状のリンクも装備。

平たい面を上に向けると定規のように良くしなるので、あまりスタビに力が伝わらないが、逆に細い面が上を向くようにするとスタビが良く効いてアンチロール効果を発揮。状況に応じてスタビの効きを調整できるようにしてある。

ロールケージとレカロシートが備わるレーシーな室内。純正のメータークラスターには3Dプリンターで作ったマウントを介してAEMのCD-7ダッシュメーターを装着する。センターパネルにモーテックPDM15のスイッチパネルを備え、ペダルはチルトンのオルガン式アッセンブリーを使用。油圧サイドのレバーは、クリスがデザインした削り出しスペシャルメイドだ。

トランスミッションはGForce製の4速シーケンシャルを使用し、カーボン製のプロペラシャフトを介してウィンタースの強化デフに接続。OS技研のLSDと強化クラッチも使用されている。

ドライサンプ用のオイルタンクは助手席足元にマウントする一方、前後の重量配分を考慮してラジエターとバッテリーはラゲッジルームに搭載。同じくNOSシステムのタンクも装備し、追走時のモアパワーに対応する。

この車体を土台に3Dデータを取得したストリートハンター・デザインのワイドボディキットとリヤスポイラーを装備。ホカホカの新車を3Dスキャン→3Dアーティストのジョン・シーバルがPC上でフェンダーをデザイン→CADで型を起こして具現化、という一連の流れが電光石火のスピードで実現された。

ボンネット、ドア、ハッチゲートはセイボンのカーボン製が使用されている。それでもまだ重量が重いそうで、目下の課題は軽量化。将来的にはルーフもカーボンにするなど、完全体を目指してアップデートしていく予定だ。

そんなこんなで完成したRZ34は、日本のスーパーGTでRZ34が登場するよりも早くコンペティションデビューを果たし、テストも練習もすっ飛ばしたぶっつけ本番で開幕戦のトップ8入りを実現! 続く第2戦アトランタでは2位に食い込み、いきなりポディウムをゲットしてみせた。

まさに勝利は1日にして成らず。知性と野生味を併せ持つクリス・フォースバーグという男が目指すのは、もちろん歴代単独トップとなる4度目のFDチャンピオンだ。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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