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半世紀もの時間を超えて。
240ZGモチーフで完成したクルウチ500ZG!
歴代各モデルにコアなファンを持つフェアレディZ。中でも、「Zと言えば?」という問いに対して多くのクルマ好きが頭に思い浮かべ、実際に人気も集めているのが初代S30だ。とりわけ、240ZGはさらに一目置かれた存在。それをモチーフに誕生したのが“クルウチ”の500ZGなのである。
「本音を言えば、オリジナルの240ZGを乗り回したいんですよ。でも、何かと気を遣うし、自分ももう若くはないから、さすがに普段乗りに…という気にはならない。だったら、現行のRZ34で240ZGを作ったら良いんじゃないかと思ったんです」と、500ZGを手掛けることになったきっかけを話してくれたクルウチ自動車代表の久留内さん。
東京オートサロンの出展ブースで一番目立つところに展示されていたことからも分かるように、500ZGはクルウチ渾身の一作だ。それだけに来場者の注目度も非常に高かった。
開発に際して最も注力したのは、「240ZGのイメージをどうやってRZ34で表現するか」ということ。それは、決してオリジナルの240ZGを再現するのではなく、その姿を目にしたクルマ好きが、「あぁ、アレね」と瞬時に思い浮かべるよう、RZ34に240ZGの雰囲気を纏わせることだった。
久留内さんが言う。「旧いクルマを作りたかったわけではありません。“カッコ良い”とか“欲しい”とか、そう思ってもらえる1台にしたかったんです」。
難易度に関して言えば、単純に240ZGのスタイリングをそのまま落とし込むレプリカを製作する方が、考えることは少なくて済む。しかし、そもそもRZ34と240ZGとでは、ディメンションやデザインが余りにも違いすぎる。だとすれば、レプリカを作ったところで“らしさ”を上手く表現できないどころか、違和感しか残らないことは容易に想像がつくだろう。
そこで、今回はモチーフとなったオリジナルの240ZGと並べてみることにした。
500ZGで最も特徴的なのは、言うまでもなくスタイリングに伸びやかさをプラスするGノーズだ。大きなポイントとなるのは、ボンネットのラインを受けて前方へと延びるバンパー上面よりも、むしろノーズ先端から下方へと向かう部分の造形だ。
240ZGのそれを単にトレースするのではなく、その幅や高さ、曲面のラウンド具合などに幾度となく検討が重ねられ、RZ34のスタイリングの延長線上に収まるよう、この形状へと辿り着いた。
また、前後オーバーフェンダーも240ZGのアイデンティティだが、500ZGではリヤに片側30mmワイドとなるクルウチオリジナルをビス留めするのに対して、フロントはZ34バージョンニスモ純正品の装着に留めている。これは視覚的にフロントが重く見えてしまうのを避けるためだ。
サイドステップは純正をベースとしながら、後端にリヤオーバーフェンダーへと繋がるキャラクターラインを追加。ボディサイドの一体感を高めつつ、スピード感も醸し出す。
ボディサイドで240ZGらしさを見せるのが、サイドウインドウを囲むようにあしらわれたメッキ調のカッティングシート。
「RZ34はリヤクォーターウインドウが小さすぎる」と判断した久留内さんは、そこをブラックアウトすることでフロントサイドウインドウ後端パネル部との一体感を高めつつ、縦にも2本のメッキラインを追加。パネル部もリヤクォーターウインドウとして見せることで視覚的な前後バランスを適正化している。奥の240ZGと見比べるとそれが理解できるはず。
ホイールは19~21インチを試した上で、サイドビューのバランスが取れる20インチのアドバンレーシングGTビヨンドに決定。フロント10.5Jオフセット+24、リヤ11Jオフセット+5を履く。「FR車だからリヤの力強さを強調したい」という久留内さんの意向によって、フロントのコンケイブ4に対してリヤはセンターへの落ち込みがより大きいコンケイブ5をチョイスする。タイヤはフロント275/35、リヤ295/35サイズのアドバンネオバAD09だ。
リヤスポイラーは240ZG用を参考にしながらRZ34のスタイリングに合わせて角度や形状を見直したものを装着。また、ワンテールを実現するのがオリジナルの一体式パネル。リヤゲートオープナーが使えるよう、ナンバープレートは可倒式とされる。マフラーはデュアルテールフィニッシャー採用の5ZIGEN SP500。テールエンドに覗く“Z”のプレートは久留内さんが加えた遊び心だ。
目の前に並んだ2台をあらゆる角度で眺めながら思ったこと。それは、重箱の隅を突くように細部を見ていくと当然のごとく別物ではあるものの、全体像としては限りなく似通っているということだ。
50年以上前に誕生した240ZGのエッセンスを最新型のRZ34に注ぎ込む作業は困難を極めたはず。それを考えると、感覚的にしか受け取れない“雰囲気”という実に曖昧なものを、よくぞこのレベルで纏め上げたと感心せずにはいられない。
まさに現代に蘇ったこの500ZGは先行して4台、最終的には20台のコンプリートカー販売を予定。900万円台前半という価格は、RZ34ニスモを睨んでのことだ。その後、反響を見ながらエアロキットとしての展開も検討していくという。Zファンはもちろん、クルマ好きなら気になる1台。500ZGのインパクトは絶大で、期待は高まるばかりだ。
●問い合わせ:クルウチ 三重県多気郡明和町佐田906-12 TEL:0596-53-0070
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