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その戦闘力はすでにレーシングカーすらも凌駕!?
911GT3ではなく、あえてケイマンで挑む最速の称号
毎年、熾烈な争いが繰り広げられている筑波サーキットでのタイムアタック。中でもNA勢の躍進が近年は激しく、現在の最速マシンはASLAN TONのEG6シビックで、ベストタイムは54秒930。2位のGRN★RISEUP★APJ EK9とシビック勢が続き、今季55秒280をマークして3番手に躍り出たのがここで紹介する『M’s Cayman GT3[987]』だ。
マシンメイクは、F1やスーパーGTシリーズ、スーパー耐久シリーズ、GIA-GTシリーズなど、国内外主要カテゴリーにパーツ供給を行い、レース参戦経験も豊富な“エムズマシンワークス”が担当。そしてドライバーは、スーパーGTやスーパー耐久、ポルシェカレラカップで活躍する村上優太選手という強力なタッグでAttack筑波に参戦中だ。
室内空間を残してリヤ周りはバッサリとカットしてパイプフレーム化。サスペンション形式はダブルウィッシュボーンだが、レーシングカーさながらのインボード式へと大改造している。ちなみに製作イメージはル・マンを走った911GT1とのこと。
エンジンは、911GT3R(996)に搭載されている3.6Lエンジン(M97/78)をベースに4.0Lまで排気量を拡大し、モーテックm800で綿密に制御することで、NAながら最高出力500ps、最大トルク45kgmという大パワーを絞り出す。エキゾーストシステムは、上流から下流までエムズマシンワークスオリジナルで武装する。
今シーズンの大幅な変更点が、フロントサスペンションだ。レーシングカーさながらのプッシュロッド式へと大改造し、オーリンズ製ダンパー+HALスプリングを組み合わせる。
このモディファイに関して村上選手は「まだシェイクダウンに近い状態だけど、セッティングの幅も広がり、NA最速の座も見えた!」と、かなりの手応えを感じていた様子。
ハブは何とセンターロック式を採用。これはスーパーGT300用のボルクレーシングホイール(センターロック)を装着するために、自社で製作したスペシャルというから恐れ入る。
ブレーキは、フロントがポルシェ997GT3用キャリパーでリヤがAPレーシング製キャリパー。ローターは前後にエンドレスの2ピーススリットを組む。
ホイールはボルクレーシングで、サイズはフロント11J、リヤ12Jをチョイス。組み合わせるタイヤは、前後とも295/35R18のアドバンA050だ。
溶接留めロールケージが覆い尽くすコクピットは超スパルタン仕様だ。ドライバーズポジションはエムズマシンワークス製のステアリングとレカロRMSで最適化している。
なお、ミッションにはヒューランドNLTセット。モーテックM800との連携によってパドルシフト化も実現している点も見逃せない。
エアクリーナーにフレッシュエアを導入するエアスクープもミッドシップレイアウトらしいポイント。エアクリーナーはグループM製を使用し、ルーフからダイレクトに空気を導いている。
エクステリアの作り込みも徹底的。997ポルシェのヘッドライトが移植され、ボンネット以外の外装パネルは全てオリジナルのボディキットに変更されている。リヤフェンダーも大胆に拡大されており、車幅は1950mmに到達。GT3Rも真っ青の迫力を見せるこのエアロキットは、ストリートバージョンがすでに市販化済みだ。
シビック勢が上位を占めるNA勢の中で、虎視眈々と最速の座を狙って進化を続けてきたM’sケイマンGT3だが、その差はコンマ3秒を切り、完全にロックオン状態。来シーズンのアタックが待ち遠しい限りだ。
●取材協力:エムズマシンワークス 埼玉県川口市新堀794 TEL:048-290-2222
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