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伝統モデルの意地、AE111を再考する。
シビックを上回るコーナリング性能を秘める!
「リッターあたり100ps」を最初に達成したホンダB16A。その実力は確かに認めざるを得ないところだが、そもそもテンロクパワーウォーズのきっかけとなった元祖スポーツエンジンがトヨタの4A-Gだったということを忘れてはならない。
4A-GのデビューはB16Aの6年前となる1983年。AE86レビン/トレノのために開発されたもので、大衆車への直打式4バルブDOHCの搭載は当時としては画期的。AW11で横置き化されて以降は、進化を重ねながらFFスポーツモデルの主力エンジンとなっていった。
そして名機4A-Gの最終進化形と言えるのが、ここで紹介するレビン/トレノの最終モデルAE111に搭載されている通称“黒ヘッド”だ。先代101ではスーパーチャージャー付きの4A-GZ搭載車もラインナップしていたが、AE111ではNAのみでシビックとガチンコ勝負。吸気3、排気2の5バルブヘッドは燃焼室形状の平滑化とポートの拡大の他、4連スロットル径の拡大やDジェトロ式制御への変更により、最高出力はわずかに劣るが、最大トルクはB16A超えを実現したのだ。
また、AE111ならではの魅力の一つが、90年代トヨタ車の流れを汲んだ美しいノッチバッククーペのスタイリング。パット見はそうは思えないが、シャシーやボディの見直しにより、AE101から最大で70kgもの軽量化が図られているのも注目すべきポイントだ。
そんなAE111を得意としている茨城県の“モータース河村”が厳選した1台が、この後期型レビンBZ-G。試乗させてもらったが、想像以上の完成度の高さに感心。オーバーホールとLINKフルコン化のお陰もあって街乗りでは極めて扱い易いし、いざアクセルを踏み込むと5000rpmから回転上昇がシャープなスポーツエンジンに性格がガラリと変わるのが実に面白い。
なお、基本的には丈夫なエンジンだが、VVTとデスビのOリング劣化によるオイル漏れに注意。モータース河村では樹脂製パワステタンクの劣化対策用にアルミ製を用意している。
サーキットを走るならオイルクーラーはマスト。モータース河村では効率を考慮して、オリジナルステーを製作してコアを運転席側に横置きマウントしている。
後期BZ-Gグレードのフロントサスはストラットタイプで、撮影車はTRD純正形状ダンパーとダウンサスを装着。ハードに走る場合はハブベアリングのガタに注意だが、ABS装備車のリヤ用は純正が廃版となった。
スーパーストラットフロントサスは前期BZ-Vが標準、BZ-Gで選択可、後期はBZ-Rに標準設定となっていた。2~3万km毎にアーム部のボールジョイントが劣化し、交換には工賃を含め約10万円必要だという。
さすがトヨタ車という質感のインテリアにはブリッツの油温、油圧、水温計を追加。ミッションは前期が5速、後期が6速だが純正パーツの供給は6速の方が切実な状況。
シートは運転席がブリッドのジータIV、助手席のレカロSR-3は純正オプション品だ。
ちなみに、レビンとトレノの相違点は灯火類のみで、4灯式の後期ヘッドライトは内部が黒いのがトレノ用、銀色がレビン用だがボルトオンで変更できるので外観でベースがどちらかを判別するのはオーナでさえ難しいらしい。
オーナーの渡邉さんはサーキット走行も楽しんでいるが、「実は111はコーナリングマシン。ストレートではかないませんが、トルクを活かしてコーナーの立ち上がりで勝負できるのが対シビックでの強みなんです」とのこと。ついでに言うと、ベース車の格安さもAE111レビン/トレノの大きな魅力として付け加えておきたい。
REPORT:川崎英俊
取材協力:モータース河村 茨城県つくばみらい市小張4125-1