「これが神作というやつか・・・」エンジン半分が室内に入り込んだ超改造シルビアの全て

魅せるドリ車を追及して480馬力のSR20DETを超ミッドマウント!

フォーミュラDジャパンを中心に、幅広い活躍を見せる“ウエルド”。その名をチューニング業界に知らしめた処女作が、2003年のオートサロンで発表されたこのS14シルビアだ。ボルト一本まで魅せることに拘ったメイキングは、当時のチューナー達に大きな衝撃を与えたのだ。(2003年3月号より抜粋)

ウエルドが本気で仕上げたドリフトスペックのS14シルビア

バルクヘッド貫通で搭載されたエンジン、ラジエターのリヤマウント化、室内を貫通するエキゾースト、そしてチルトカウル…。チューニングカーともドレスアップカーとも異なる、超独創的なメイキングのオンパレードだ。

このS14シルビアは、ウエルドが製作したドリフト仕様。「ショーカーだと思ったらドリフトできるのかよ!と思わせたくてさ」とウエルド伊藤代表が語るように、全てのカスタムが緻密な計算の上で構築されているのだ。細部を見ていこう。

まずは、衝撃的なエンジン搭載位置から。前後重量配分を50:50に近づけるべく、バルクヘッドを作り直して、SR20DETを約410mm後方に押し込んでいる。ストラットタワーとの位置関係を見てもられば、その凄まじさが理解できるだろう。

しかし、ここまで搭載位置を動かすと、エンジンは必然的にフロントウインドウの内側、つまり室内まで入ってくることになる。それでは作業性が著しく低下するため、開閉式のアクリルウインドウを製作。ルーフ側はヒンジ、バルクヘッド側はビス留めとしている。使われたアクリルは走行風や熱に耐えられる5mm厚の特注品だ。

なお、超フロントミッド化されたエンジンは、低中速域のレスポンスが重要なドリフト仕様ということで、ポート研磨や燃焼室加工などが施された上、Z32用88φピストンを流用して2.1L化。そこにTD06-20Gタービンを組み合わせて約480psを発揮する。

エンジン搭載位置変更の弊害として、排気パイプをフロア下に通そうとすると角度がきつく理想的な排気効率が狙えなくなってしまった。その対策として、室内にマフラーとウエストゲートパイプを通してサイド出しレイアウトを構築。熱や騒音に関しては、断熱材を敷き詰めたボックスをセットして対策済みだ。

アルミ2層ラジエターはトランクルームに設置。冷却エアはフロア下から導入。電動ファンによってリヤバンパーに設けたダクトからエアを強制排出する。

ボディ同色でペイントされた20点式ロールケージは、オクヤマのスペシャル品。2mm厚のガゼットプレートでボディと接合するというレーシングスペックだ。

ミッション搭載位置の変更に伴い、ペダル位置も全面変更。それに合わせてシートもオフセットさせている。また、ライトやパワーウインドウ等は、センターコンソールのスイッチで作動させる。ここまでのハードチューンマシンでありながら、ストリートでの快適性を損なわないようにと、細かい工夫が散りばめられている。

ミッション位置の関係でシフトレバーが後方に大きくズレてしまうため、リンケージで前方に移設して操作しやすいように加工。リンクの調整次第でクイックシフトやロングストロークにすることも可能だ。サイドブレーキもワンオフしている。

軽量化よりもビジュアル面を意識し、ボディワークは全て鉄板溶接で行なっている。ボンネットダクトも鉄板という拘りっぷりだ。そのボンネットを支える油圧ダンパーは、耐久性やサイズなどを数多く試した結果JZX81用のものを採用。ホイールは前後ともに19インチでフロントが9.0Jプラス12、リヤが10Jプラス17のワークマイスターを装着。

このS14シルビアの登場後、ドレスアップとチューニングを融合させた仕様が急増。ウエルドの技術力をフル投入して製作されたスーパーチューンドが、業界に与えた影響は非常に大きかったのである。

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●取材協力:ウエルド 神奈川県横浜市都筑区早渕1-31-18 TEL:045-595-0855

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