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NAチューンに拘った実測220馬力の5.5A-G搭載
ハチロクチューンのノウハウを凝縮させた仕様!
筑波サーキットのタイムアタックシーンで、AE86のランキング上位マシンを製作するショップとして知られている“クリスタルボディ横浜(以下:CBY)”。
元々、鈑金塗装を専門として立ち上がったショップだが、代表である小田さんのサーキット走行好きが高じて、エンジンチューンやサーキット仕様のボディ製作まで着手。最終的には、4A-G用のハイカムや5A-Gクランクといったオリジナルパーツの開発まで行うようになった生粋のAE86専門店だ。
取材車両のAE86トレノはそんな小田さんの愛車で、筑波サーキット58秒6(アドバンA050使用)の記録を持つ。現在の姿からは想像しづらいが、排気系と足回りの交換くらいの仕様の時から約30年の歳月を費やして少しずつ進化してきたナンバー付きのサーキット仕様である。
筑波サーキットを速く走らせるための拘りが、高機能エアロパーツでしっかりとダウンフォースを発生させることと、サスペンション前後バランスの調整。この2つの要素を突き詰めることで、コーナリングの平均速度を高めているわけだ。
細部を見ていく。フロントセクションは、CBYオリジナルのN2バンパーとドライカーボンアンダーパネルで武装。ハイダウンフォースを生み出す事を最優先に開発された本気の空力パーツだ。
スポイラー一体型のFRPリヤゲートもCBYオリジナルの製品。空力の前後バランスを整えるために、リベレー製の大型GTウイングを組み合わせている。
オーバーフェンダーでフロントを片側50mm、リヤを片側65mmのワイド化。トレッド調整は、フロントはロワアームを延長してホイールのオフセットで対応し、リヤは30mmワイドトレッドスペーサーとホイールのオフセットで対応している。
サスペンションはダンパーがサスペンションプラス製の車高調で、リヤはダンパーとスプリングが一体となったコイルオーバー仕様としている。スプリングはフロント9kg/mm、リヤ7kg/mmのスプリングプラス製だ。
リヤサスをしなやかに動かしつつ、セッティング幅を広げるために等長リンク化も実行。
ホイールはフロントが9.5Jマイナス19×15インチ、リヤが10Jマイナス25×15インチのRSワタナベ製フォージングR。このAE86を装着モデルとしてデビューを飾ったニューホイールだ。
心臓部はAE86用4A-Gブロックをベースに、OS技研の83φ鍛造ピストン、キャリロ製コンロッド、83mmストロークのCBYオリジナルクランクを組み込んだいわゆる5.5A-G仕様だ。ヘッドはAE92後期を使用し、CBYのハイカム(IN300度/12.2mmリフト EX296度/12mmリフト)を投入する。
この作用角とリフト量が絶妙で、5.5A-Gが必要とする作用角とリフト量の両立を計った上で、最大限に吸入空気が入るよう設計。かつて流行したIN304度&EX288度といった作用角から、さらに追い込んだ作り込みを行なっているのだ。
スロットルはスズキGSX1300R隼の純正を加工し、インマニを4A-Gに合わせて製作したスペシャル。46φのバルブ径でポート形状が良く、5バルブ4A-Gの4連スロットルよりも約1kg軽いというメリットがあるそうだ。最高出力は、補正係数ゼロで220ps/21kgmを絞り出している。
カーボンカバーに隠れて目視はできないが、点火系は日産VQエンジン用のダイレクトイグニッションを流用して強化済み。また、リフト量の高いハイカムを使っているためヴィッツのシム一体型のリフターを使用しているのもポイントだ。
冷却系は、ラジエターとオイルクーラーが一体となったDRL製のZ34用を装備して強化。走行風がしっかり当たり、ボンネットからスムーズに抜けるようダクトが設計されている。
燃調や点火時期は、フルコンのLINKモンスーンXで綿密に制御。ちなみに、パワーバンドは6500~8500rpm。インジェクターは400cc×4本を使用している。
トランスミッションはオリジナルのハウジングを使ってアルテッツァ用6速(J160)を流用。ギヤ比を最適化するために、内部は1速と2速を3速側に近づけたクロスミッション仕様となっている。クラッチ&フライホイールは、超軽量が売りのTVV製ツインプレートだ。
LSDはATS製の機械式2ウェイを装着。ホーシングは一度V字にカットして斜めに詰めてから再溶接し、1.3度のネガティブキャンバーが付くように加工されている。
コクピット周りは一新され、メインメーターはフルコンLINKの情報をモニターに表示させる最新システムを採用する。エアコンを始めとする快適装備は軽量化のために全て撤去済みだ。
ドライバーズ&ナビシートはブリッドとRSワタナベのコラボレーションモデルをインストール。サイドバー付きのロールケージが本気仕様を物語る。
吟味されたパーツのみを与えながら、素材の持つ魅力を最大限に引き出した至宝のAE86。サーキット派のハチロク乗りにとっては、お手本的な仕様と言えるだろう。
⚫︎取材協力:クリスタルボディ横浜 神奈川県横浜市旭区南本宿町121-10 TEL:045-352-3397
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クリスタルボディ横浜
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