「若きチューナーの野心作」E36型M3にアメリカンV8を搭載した禁断スペックに迫る!

欧米好きが悶絶必至のジャジャ馬、ここに爆誕!

アメリカンな雰囲気も漂うバーンナウト対応仕様

1990年にデビューした、E36(イーサンロク)こと3代目のBMW 3シリーズ。日本車だとS13型後期〜S14型のシルビアやFD3S型RX-7などと同世代だ。中でも3.0L/3.2Lの直列6気筒を搭載したM3は、モータースポーツ直系のイメージリーダーとして知られている。

ワイルド・スピードをきっかけにアメリカのクルマ作りに心酔し、21歳の時から毎年ラスベガスのSEMAに通い続けているという田口代表。25歳で独立し、群馬県伊勢崎市にムーンテックを開業。以後、精力的にカスタムカーの開発を続けている。

中古の価格帯やサイズ感が手頃で、しかも輸入車のFRということで、E36はここに来てにわかに人気が高まっているそうだ。それを証明するように、群馬県伊勢崎市にあるムーンテックの代表、田口日央(たぐちひかる)氏の元には、多くのE36乗りが集まってくる。

田口代表自身もBMWやポルシェなどを愛好し、数多くの車両を所有してきたドイツ車好き。ただ、最新の愛車であり、ショップのデモカーでもある北米仕様のE36型M3は、好きが過ぎたのか、少しばかり中身が強烈だ。

本来、直6が収まるはずのエンジンルームには、LS1型V8エンジンが鎮座。実は60年代以降に排ガス規制が厳しくなっていったアメリカでは、輸入車のパワーがデチューンされているケースがあり、E36型M3もその例に漏れない。欧州仕様や日本仕様が前期の3.0Lで286ps、後期の3.2Lで321psとなるのに対して、北米仕様は3.0Lと3.2Lともに243psと、目に見えてパワーが劣るのだ。

「じゃあYou、V8にしちゃいなよ!」というのがアメリカの常識(?)で、E36にLS型V8を換装するためのスワップキットは複数のメーカーからリリースされている。もちろんLS自体をチューニングするパーツも選び放題だ。

そんな恵まれた環境を知った田口代表は、アメリカ国内で見つけたM3の車体にV8換装を済ませた状態で輸入するという方法をチョイス。その時点でハイカムや強化プッシュロッドを組んだポート加工済みのチューニングヘッドも載せられていた。

M3が手元に届くと、今度はショーカーとして魅せるための施工を自ら実施。EXマニをはじめ、エアフロセンサーやハーネス類など多くのパーツはスワップキットに含まれているが、車高を下げた時のクリアランスを確保できるようワンオフのエキゾーストを製作。可変バルブ付きで音と抜けを調整できるようにした。

ビレットのプーリーキットはLSXイノベーション、ラジエターはミシモトとアメリカ臭もぷんぷん漂う。

「現時点でパワーは480psくらい出ていますが、トルクがあり余る感じで、イメージするよりは乗りやすいですよ。これからハルテックのフルコンに入れ替えて、エンジンの制御はもっと緻密にセットアップする予定です。ショーに出展するのが一番の目的ではありますけど、ナンバーもちゃんと取って、普段から乗れるクルマにするつもりです。まだまだやることはたくさんありますね(笑)」とのこと。

ホイールはACシュニッツァーのタイプ1という3ピースホイール。リヤのみリム交換で幅を広げ、エアサスで全下げした時にタイヤがフェンダー内にするりと収まるセッティングを追求している。

タイヤはトーヨーのプロクセスTR1。T1Rの間違いでは?と指摘されそうだが、海外市場に展開されているスポーツラジアルで、攻めた非対称パターンが印象的な銘柄だ。

トランク床下にシステムを備えるエアサスは、国産ブランドのPloomエアサスペンション。エアリフトの3Pマネージメントでコントロールする。

ACシュニッツァーのフロントスポイラー、ハーマンのリヤウイングでGT感を強めたエクステリアは、BMW純正色のオックスフォードグリーンメタリックでペイント。

2本出しのマフラーエンドをリヤスポイラーのラインに合わせて角度を変えるなど、ディテールにも拘った。その他、傷みやすいモールやエンブレム類、フロントウインドウは新品に交換済みだ。

インテリアは、グリーンの外装と美しいコントラストを描くオレンジのフルレザー仕様を実現。ブリッドのGIASやレナウンのステアリングホイールも張り替えられ、アメリカのオートパワー製ロールケージまでもレザー巻きで仕上げてある。

センターコンソールにはエアサスコントローラーとスタックの水温計を違和感なく装着した。トランクにはフォーカルのオーディオシステムをインストール。ドア内張りがアルミパネルに置き換えられているが、E36のフロントスピーカーは足元の奥に備わり、もちろんフォーカル製に交換済みだ。

エンジン、エアサス、オーディオなどで重量は増していると思われるが、ベースが1515kg前後のボディなので、480psもあれば首ごと持っていかれそうなカッ飛びマシンになるのは必然。スタンス系を中心に増殖が続くE36乗りにとって、全方位完全制覇の田口M3は、一つの到達点と言えるだろう。

Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI
●取材協力:MOONTECH 群馬県伊勢崎市境下武士1516−1 TEL:0270-61-7495

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