目次
これが第三世代GT-Rの最終進化系なのか!?
前モデルと比べて約10%のハイダウンフォース化を達成
2023年1月13日10時30分、発表・発売に先駆けて「東京オートサロン2023」で公の場に姿を表した日産GT-R2024モデル。
詳細はすでに様々なメディアでアップされている。ハンドリングの向上、NISMOのフロントに機械式LSDの装着、新しいレカロシートの採用など、各部のアップデートが図られているが、大きな改善点は「空力性能向上」「車外騒音規制をクリアした」ことの2つ。
後者については出力を落とさずに規制をクリアしているので、実質的にはパフォーマンスアップに相当するが、規制がなければ手を入れる必要がなかったため、出力向上が目的ではないと推測される。
GT-Rの2024モデルのパフォーマンス面のアップデートは「出力を上げることなく、クルマを速くするためには何ができるか、何をすべきか」をテーマに、空力が磨き上げられたことはスタイリングから容易に想像できる。
冷却性能を落とさずに、空気抵抗とダウンフォースを高次元でバランスさせる考えは不変だが、現行モデルとは大きく考え方を変え、情緒的ではなく、機械的に刷新。カッコ良い、カッコ悪いではなく、速く走らせるために必要なもの以外は全て排除し、戦うためのマシンとして性能を突き詰めている。メカメカしいスタイリングについては賛否があるだろうが、これは日産開発陣も承知の上だろう。
では、基準車から見ていこう。今回エクステリアで変更されたのはフロントバンパー/リヤバンパー/リヤウイング/リヤディフューザーの4点で、全体に水平垂直を意識したデザインとなっているのが特徴だ。
フロントバンパーはこれまでの上下グリルに一体感を持たせた台形から、R34GT-Rのような上下がセパレートされた長方形となり、ロアグリルとアッパーグリルの間にはバンパーサイドまで水平のラインを通している。そのラインはエアスプリッターの役割があり、エッジ部分の上と下で風の流れを完全に分離。両サイドのエッジを立て、空気の流れを縦方向で切っていた現行モデルとの違いは明らかだ。
アッパーグリルは特徴的なVモーショングリルを廃止し、空気抵抗を減らすため、上下方向を短縮し、手前は空気を導くように前側は少しお辞儀させている。開口部が狭くなると流入量が減ってしまうが、グリル形状をひし形から強度に優れるハニカムとして、桟を肉薄化。これによって同面積での空気の通過率をアップ。
さらに、両端の角のようなデザインはエアスプリッターの役割をしており、内側にはしっかりと空気をグリル内(幅はラジエータに合わせている)に取り込み、外側は横に流すことで、空力性能を向上させながら冷却性は前モデルと同等以上をキープしているのだ。
次にロアグリル(エッジから下)。下面は基本デザインこそ現行モデルを踏襲しているが、より前に突き出しているように見えるデザインに変更。先端部の形状を見直すことで、グリル内へしっかり空気を導き、ボディ下面の空気の流れに乱れが生じないように最適化。
そして、グリルの外側(オイルクーラーに導くダクトより外側)は強制的に前からサイドまで水平な空気の流れを作り、ボディ側面へと導き、さらに両端のカナード形状を見直し、縦渦を発生させることでホイールアーチ内の空気を抜くなど徹底している。
リヤセクションは、16年の歴史で初めてウイング形状を刷新した。ウイング上面の縦、横ともに拡大し、翌端版も位置を可能な限り後方に移動することで、ボディに影響が少ない位置まで風を流している。
マフラーを囲むガイドも可能な限り、後方へ出っ張らさせて、空気を引き抜くデザインにとし、バンパー左右はリアのホイールハウス内の圧を積極的に抜く形状を盛り込んでいる。さらにディフューザー形状も見直すなど、今まで以上に空気の流れを積極的に使うことで抵抗を増やさず、ダウンフォースを得るという難しい課題に取り組んでいる。
また、リヤバンパーにもフロントと同じくエッジが1本通っている。これはデザインの共通性もあるが、切ることで陰影が生まれ、視覚的に軽そうなイメージを与えているのもデザインのポイントのひとつ。これらトータルで現行モデルよりも約10%ダウンフォース量がアップ。鍛え上げられた空力に合わせて足回り、タイヤの特性などのリセッティングが行われ、トータルで速さを引き上げているのだ。
次回はさらにエアロダイナミクスが突き詰められたNISMOのデザインについて話したい。
PHOTO&TEXT:山崎真一